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2010年3月に作成された記事

2010/03/24

独断的映画感想文:花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇

日記:2010年3月某日
映画「花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇」を見る.4
1973年.監督:加藤泰.
玉井金五郎(渡哲也),玉井マン(香山美子),玉井勝則(竹脇無我),栗田の銀五(田宮二郎),唐獅子の五郎(石坂浩二),十郎(石坂浩二),蝶々牡丹のお京(倍賞美津子),お葉(倍賞美津子),島村ギン(任田順好),娼婦光子(太地喜和子),永田杢次(笠智衆),永田ヨネ(菅井きん),大庭春吉(汐路章),平尾角助(山本麟一),清野たま(沢村貞子),友田喜造(佐藤慶),大川時次郎(坂上二郎),梶原中佐(南原宏治).
明治大正昭和に亘る九州若松を舞台とする任侠大河ドラマ.
玉井金五郎とマンの夫婦は,幼い長男勝則を抱えてごんぞと呼ばれる石炭荷役の人夫の元締め,永田杢次のもとに身を寄せる.3
ある日勝則が船に乗ったまま流されるが,それを救ったのは対立する友田組にやっかいになっていた流れ者栗田銀五だった.
玉井は暴れ者のボースン平尾と対決,平尾は友田組に寝返り玉井はボースンとなってごんぞの頭となる.やがて同業者に押され,玉井は独立して組を旗揚げした.
友田組とは全面対決となり,嵐の夜玉井は平尾,栗田らに襲撃される….
以後対決する友田組との関係,栗田との不思議な友情,刺青を彫ったお京との因縁,そして更には息子勝則と娼婦光子の物語に続く,3時間弱の大河ドラマ.6
出演者は豪華で,生きの良い若手からベテランまでの活躍がなかなか見応え有り.
俳優では田宮次郎が何といっても魅力的.遠くから玉井マンを慕う栗田の真情を,しみじみと見せる.
その相棒を演じる任田順好がまた素晴らしい.若松のどてらばあさんと呼ばれた強烈な女侠客を小気味よく演じる.
山本麟一はいつも通りのしっかりした悪役で引き締めれば,汐路章は珍しく気骨ある親分役を嬉しそうに演じている.
女優では香山美子と倍賞美津子の対決が迫力有り.菅井キンも良い味である.5
映画全体としては3時間弱の長尺はいささか長く感じた.特に息子勝則と娘お葉の時代になるといささかだれてきて,組合運動に走る勝則のために玉井が友田組と命を賭けて戦うというのは,少し無理を感じた.
感動を覚えたのはやはり田宮次郎の最期.役者の違いという感じでした.
★★★(★5個が満点)
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2010/03/17

独断的映画感想文:薄桜記

日記:2010年3月某日
映画「薄桜記」を見る.1
1959年.監督:森一生.
出演:市川雷蔵(丹下典善),勝新太郎(堀部安兵衛)、真城千都世(千春)、三田登喜子(浪乃)、大和七海路(三重)、北原義郎(長尾竜之進)、島田竜三(大高源吾)、千葉敏郎(友成造酒之助)、舟木洋一(神崎与五郎)、伊沢一郎(戸谷兵馬)、須賀不二夫(村上庄左衛門)、清水元(長尾権兵衛)、寺島雄作(嘉次平)、加茂良子(お志津).
忠臣蔵外伝というべき物語.
冒頭,高田馬場の知人の決闘に助っ人として馳せ参じる途上の中山(後に堀部)安兵衛,その駈け去る姿のたすきのかけ方の危うさに気づいた丹下典善は,公用中にも拘わらず馬上その後を追う.
決闘場の安兵衛は幸い堀部弥兵衛の与えた帯を使ってたすきがけの事なきを得,対する某道場の剣士をすべて討ち果たす.3
心配して後から駆けつけた典善は実は某道場の高弟であった.役目途中ということでその場を立ち退いたが,居合わせた道場の門人から,同門の決闘を見捨てて立ち退いたとの言いがかりを受け,道場を破門される.
更に遺恨を抱いた門人と争う羽目になり,5人の門人に傷を負わせることとなった.
一方この決闘で名を上げた安兵衛は,多方面から養子縁組の申し入れを受けるが,その中で上杉家家老千坂兵部の家人長尾某の妹千春に心を奪われる.
しかし千春は実は丹下典善との縁談が決まっていた.
結局安兵衛は堀部弥兵衛の婿となり,後日浅野内匠頭刃傷の後は,赤穂浪士として吉良上野介への復讐の機会を窺うことになる.6
典善と千春は深い愛情で結ばれるが,典善に遺恨を持つ5人による卑劣な罠が二人を襲うことになる….
雷蔵と勝新の共演という得難い映画.
物語も良く設定されていて面白い.
冒頭の勝新の豪快な二刀流の決闘シーンと,終局での雷蔵の凄惨な隻腕片足での決闘シーンは,実に見応えあり.
何といっても雷蔵の魅力は抗い難い.主人公は理が立ち腕も立ち,しかも覚悟が良い.千春との関係も,武士の一分との狭間での苦悩は哀切である.4
これを主とすれば,従たる堀部安兵衛もストーリー上の千春とのからみもよく考えられていて,見応えあり.
大映映画らしい,多少外連味のある演出も悪くない.見て損はない映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2010/03/07

独断的映画感想文:色即ジェネレーション

日記:2010年3月某日
映画「色即ジェネレーション」を見る.3_3
2008年.監督:田口トモロヲ.
出演:渡辺大知(乾純),峯田和伸(ヒゲゴジラ),岸田繁(ヒッピー),堀ちえみ(おかん),リリー・フランキー(おとん),臼田あさ美(オリーブ),石橋杏奈(足立恭子),森岡龍(池山),森田直幸(伊部),古川雄弥(須藤),大西ユカリ(ロック喫茶のママ),山本浩司(アキちゃん).
みうらじゅん原作の青春映画.
1974年の京都.乾純はおとなしめの文系高校生,クラスでは番を張っている不良達に絡まれたりするが,実はボブ・ディランを神と仰ぎギターで曲を自作したりしている.
一人っ子の彼は親に愛され,親の物わかりが良すぎて反抗もままならない複雑な状況.4_2
高校は仏教系だが(浄土宗らしい)煩悩は人一倍の彼は,友人に誘われて夏休みに隠岐の島に行くことになる.友人に依ればそこはフリーセックスの島らしい.
勇んで島に行きユースホステルに泊まると,そこには全共闘崩れのヒゲゴジラというペアレントがいて….
という次第で進行する青春物語.
べたといえばべたな映画だが,しかし青春ものは(特に音楽ものは)いいですね.
主演の渡辺大知君は演技はゼロからのスタートらしく,「他の人が喋っている時どういう顔したらいいか判らなかった」などとメイキングで言っている初々しさが良い.
その初々しい演技は観客に青春のぎごちなさを逆に想起させ,それが観客を映画に引き込むことになる.そうだ,僕だってこの頃は女の子への口の利き方も判らず,精神と体のアンバランスにとまどいながら部活に受験に翻弄されていたのではなかったか.1_2
画面の渡辺大知君は,そういう青春の居心地の悪さを見事に表現している.
そしてお約束の学園祭への彼女の招待と自分の出演.このクライマックスもなかなか宜しい.素敵な映画だった.
この映画は「アイデン&ティティ」に続く田口トモロヲ監督の作品だそうな.前作も良かったな.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:リオ・グランデの砦

日記:2010年3月某日
映画「リオ・グランデの砦」を見る.11950年.監督:ジョン・フォード.
出演:ジョン・ウェイン:カービー・ヨーク中佐,モーリン・オハラ:キャサリーン・ヨーク,ベン・ジョンソン:タイリー二等兵,クロード・ジャーマン・ジュニア:ジェフ・ヨーク二等兵,ハリー・ケリー・ジュニア:ダニエル・ブーン二等兵(サンデー),ヴィクター・マクラグレン:クインキャノン軍曹,チル・ウィルス:ウィルキンズ医師,J・キャロル・ナイシュ:フィリップ・ジェリダン将軍,グラント・ウィザース:司令官代理,ピーター・ジュリアン・オルティス:サン・ジャック大尉,ゲイロード・ペンドルトン:プレスコット大尉,キャロライン・グリムス:マーガレット・メアリー.
ネタバレあります.
ジョン・フォードの傑作西部劇,「アパッチ砦」「黄色いリボン」と並び騎兵隊三部作と称せられる.
国境の河リオ・グランデにほど近いスターク砦に駐屯する騎兵隊の指揮者,カービー・ヨーク中佐は,着任した新兵の中に,15年ぶりに会う息子ジェフがいるのに吃驚する.
中佐は訳があって妻と別居,それ以来ジェフとは会っていなかった.士官学校で数学に落第し,年齢を偽り1兵卒として入隊したジェフだったが,彼は立派な青年に成長していた.
そこに妻のキャサリンがジェフを連れ戻しにはるばるやってくる.
折しも砦は近隣を荒らしては国境の向こうに逃げ去るアパッチ族との決戦を決意,女性と子どもを別の砦に避難させようとするが,その隊列がアパッチ族に襲われる….3
典型的な騎兵隊もの西部劇だが,家族愛あり,ユーモアありのエンタテインメントになっている.
ところでこの映画にはキーワードが二つある.それは「南北戦争」と「アイルランド」である.
映画の中では余りはっきりとは語られないが,中佐と夫人が別居するに至った「事件」は南北戦争に絡んだものだ.
クインキャノン軍曹の告白に依れば,南北戦争時シェナンドー渓谷の夫人の実家の農園を,将軍の命令によりヨーク中佐の指揮のもと軍曹が焼き払ったという.
シェナンドー渓谷はバージニア州にあり無論南部連合に属する.シェナンドー渓谷にはドイツ人とアイルランド人が入植したとものの本にあり,夫人の名前からしてヨーク夫人はアイルランド人に間違いあるまい.
無論演じているモーリン・オハラはアイルランド出身で,こういう事情は日本人の僕にはよく判らなかったが,アメリカの観客は先刻ご承知のことと思われる.4
ヨーク中佐は任務のため妻の実家を焼き払わせたのである.
それ以来15年間別居していたとすれば,この物語は南北戦争から十数年経った頃と考えられるのだ.
この映画は音楽映画かと思われるほど,軍歌や民謡が次から次へと歌われる映画でもある.
ヨーク夫人を歓迎して兵卒が歌うアイルランド民謡「I'll Take You Home Again Kathleen」もその歌詞を考えると印象的だ.
また,戦闘が勝利に終わった大団円で,軍楽隊が南部連合の軍歌「デキシー」を演奏し,ヨーク夫人が微笑むシーンは,この二人の南北戦争を挟んだ確執の和解を示唆するものと考えられるだろう.
このように,僕のようなものを知らない人間には,この映画はキーワードに関するいささかの解説を必要とするかと思われる.5しかしそんなことは別として,無論この映画は充分楽しめる映画である.
俳優はそれぞれ好演,特に「子鹿物語」でジョディを演じた名子役クロード・ジャーマン・ジュニアの演じるジェフは好感が持てる.クインキャノン軍曹のヴィクター・マクラグレンも素敵.
映画の随所にちりばめられたユーモアも好ましい.ヴィクター・ヤングの音楽も映画にぴったり.
ジョン・フォードは「静かなる男」を撮りたくてこの映画で高収益を上げる約束をしたが,見事に約束を果たし,同じジョン・ウェインとモーリン・オハラで,アイルランドを舞台としたその映画を撮ることができた.監督と共演の二人がいずれもアイルランド系であることは周知の通り.
★★★★(★5個が満点)
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