独断的映画感想文:コレラの時代の愛
日記:2010年4月某日
映画「コレラの時代の愛」を見る.
2007年.監督:マイク・ニューウェル.
出演:ハビエル・バルデム(フロレンティーノ・アリーサ),ジョヴァンナ・メッツォジョルノ(フェルミーナ・ダーサ),ベンジャミン・ブラット(フベナル・ウルビーノ医師),カタリーナ・サンディノ・モレノ(イルデブランダ),ヘクター・エリゾンド(ドン・レオ),リーヴ・シュレイバー(ロタリオ・トゥグット),アナ・クラウディア・タランコン(オリンピア・スレータ),フェルナンダ・モンテネグロ(トランシト・アリーサ),マルセラ・マール(アメリカ・ヴィクーニャ),ウナクス・ウガルデ(フロレンティーノ・アリーサ(10代)),ローラ・ハリング(サラ・ノリエガ),ジョン・レグイザモ(ロレンソ・ダーサ).
冒頭,一人の老人が不慮の死を遂げる.
弔いの鐘を聞き,もう一人の老人が葬儀の夜に現れ,未亡人に言う.「私は今日を待ちかねた.51年待ったのだ」と.未亡人は激しく彼を拒絶する….
老人フロレンティーノが電報会社に勤める配達員だった頃,ラバ商人の娘フェルミーナを見初めた.密かに手紙を送り続けるフロレンティーノ,最初は無視していたフェルミーナも遂に彼の求愛を受け容れる.
ところが野心家の父親は一人娘を配達員に嫁がせるはずもなく,フェルミーナを遙か山の彼方の兄弟の家に預けてしまう.やがて戻ったフェルミーナだが,その愛は冷め,街で会ったフロレンティーノに恋の終わりを告げる.
その後フェルミーナは医師のウルビーノと結婚,長い新婚旅行の後,身ごもって帰ってくる.フロレンティーノは何時か結婚できるまで何時までも彼女を待つと誓うのだった….
ガルシア・マルケスの原作による映画.
フェルミーナを見つめるフロレンティーノの50年以上に亘る運命を描く,寓話に満ちた物語.
といってこの物語は只の純愛を描いたものでは決してない.
フロレンティーノ自身,心ではフェルミーナに操を誓いながら,体では622人の女性と「ベッドを共にする人」だ.その幾たりもとの愛情生活の活写を,観客は印象深く見るだろう.
また彼は「書く人」でもある.
かって手紙だけでフェルミーナを籠絡したそのペンの力で,彼は代書屋として無筆の恋人達の恋文を書く.時には自分の書いた手紙に自分で返事を書く.叔父の船会社に就職した彼が書くビジネスレターは,愛の告白の様な手紙ばかり.
叔父は叔父で船会社の社長でありながら,葬儀で朗々と歌うことを何よりも自慢にする「歌う人」である.
これらの物語は,コレラの蔓延と内戦による不意の死が横行する中,コロンビアのカタルヘナを舞台に展開される.
常に画面の半分以上が空である,雄大な河筋の光あふれる景色のカタルヘナ.
この奇妙な男の生涯を通して,観客は何と豊穣な人生のエピソードを見ることだろう.原作の豊かさを充分うかがえる映画である.
俳優はハビエル・バルデムが何時にもまして怪演.ジョヴァンナ・メッツォジョルノは10代から72歳を演じてお見事(その両方でベッドシーンを演じているのには吃驚).
フロレンティーノの母役フェルナンダ・モンテネグロは味のある名演.「そして,一粒のひかり」のカタリーナ・サンディノ・モレノの美しさは目を見張る.
見て良かったと言える映画.
★★★★(★5個が満点)
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