独断的映画感想文:ダウト ~あるカトリック学校で~
日記:2010年6月某日
映画「ダウト ~あるカトリック学校で~」を見る.
2008年.監督:ジョン・パトリック・シャンリー.
出演:メリル・ストリープ(シスター・アロイシアス),フィリップ・シーモア・ホフマン(フリン神父),エイミー・アダムス(シスター・ジェイムズ),ヴィオラ・デイヴィス(ミラー夫人).
ケネディ大統領暗殺の記憶が未だ覚めない1964年のニューヨーク,ブロンクス.カトリック教会の司祭フリン神父は,進歩派を自ら任じ,カトリック学校の唯一の黒人生徒ドナルドにも温かい手を差し伸べていた.
一方カトリック学校の校長シスター・アロイシアスは厳格で容赦のない教育者として,フリン神父の考えには対立している.
若い教師のシスター・ジェイムズはドナルドの不審な行動を校長に報告,シスター・アロイシアスはフリン神父によるドナルドへの性的虐待があるものと見て,追及を始める….
延々と続く科白劇とその合間に画面を席巻する嵐・台風.まるでシェークスピア劇のようだと思ったら,この映画は監督自身が劇作家として2005年に発表,トニー賞とピュリッツァー賞を獲得した人気戯曲の映画版であった.
この映画が舞台とするカトリック教会はいわば人間社会の縮図,進歩派であるフリン神父は男性で,カトリック教会の絶対的な権限を掌握し享楽的な生活も出来る.一方守旧派と目されるシスター・アロイシアスは,女性であるが故に教会の一切の権限とは無縁である.
唯一校長として生徒に絶対的権力をふるうが,一方でどこにも行き場のない老修道女を学校に任用し共に質素な生活を送っている人でもある.
性的虐待という「疑い」を巡ってのシスター・アロイシアスとフリン神父の熾烈な闘いは,如何なる結末となるか.
メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンの(なんという絶妙なキャスティングか)文句なしの名演を堪能することが出来よう.
熾烈な闘い,しかしそれを戦うどちら側にも「正義」などあり得ず,確かなものも何もないという,苦くも極めて現代的な物語.
★★★★(★5個が満点)
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