独断的映画感想文:母なる証明
日記:2010年7月某日
映画「母なる証明」を見る.
2009年.監督:ポン・ジュノ.
出演:キム・ヘジャ(母親),ウォンビン(息子・トジュン),チン・グ(ジンテ),ユン・ジェムン(ジェムン刑事),チョン・ミソン(ミソン).
映画の冒頭,見渡す限りの枯れた草原に立つ女.やがて音楽に合わせる様に奇妙な踊りを踊り始める.
その女は漢方薬店を営む母親,息子のトジュンはいい年をして独り立ちできない半端ものだが,純な目をしたトジュンを母親は溺愛している.
トジュンは悪友ジンテと付き合っており,そのことも母親には気になってならない.
ある日近くで女子高生が惨殺される事件が起き,現場に落ちていたゴルフボールに名前が書いてあったことから,トジュンが容疑者として捕まってしまう.
警察に犯人に仕立て上げられてしまうトジュン,母親は何としてもトジュンの無実をはらそうと,まずジンテの部屋に忍び込む….
途中までは冤罪事件と必死に戦う母ものというオーソドックスな展開だが,ある瞬間から映画は思いもかけない展開をたどる.
映画は淡々とそれを描いていくので,最初は何が起こっているのかぴんと来ず呆気に取られてしまったが,それまで映画を見ていた前提が足下から覆される衝撃があった.
韓国映画恐るべし.
キム・ヘジャ,ウォンビン等の演技陣はいずれも充分な実力,エピローグで再びキム・ヘジャが,夕陽を浴びて走るバスの中,奇妙な踊りを踊るが,そのシーンも極めて印象的だ.
しかし出来の良い映画と好きな映画とは別である.
この独断的映画感想文ではいつもそうだったが,まさにこの点で僕と韓国映画は常に相性が悪い.
この映画が表現するのは結局人間の底知れない狂気と悪意である.街の片隅で生きるこの母子もその例外ではないという突きつけられた命題は,僕にとっては受け容れ難く直面し難い.
見るのではなかったという感情が後に残る,残念な結果であった.
★★★(★5個が満点)
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