« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

2010年7月に作成された記事

2010/07/10

独断的映画感想文:母なる証明

日記:2010年7月某日
映画「母なる証明」を見る.01_3
2009年.監督:ポン・ジュノ.
出演:キム・ヘジャ(母親),ウォンビン(息子・トジュン),チン・グ(ジンテ),ユン・ジェムン(ジェムン刑事),チョン・ミソン(ミソン).
映画の冒頭,見渡す限りの枯れた草原に立つ女.やがて音楽に合わせる様に奇妙な踊りを踊り始める.
その女は漢方薬店を営む母親,息子のトジュンはいい年をして独り立ちできない半端ものだが,純な目をしたトジュンを母親は溺愛している.
トジュンは悪友ジンテと付き合っており,そのことも母親には気になってならない.
ある日近くで女子高生が惨殺される事件が起き,現場に落ちていたゴルフボールに名前が書いてあったことから,トジュンが容疑者として捕まってしまう.
警察に犯人に仕立て上げられてしまうトジュン,母親は何としてもトジュンの無実をはらそうと,まずジンテの部屋に忍び込む….02_3
途中までは冤罪事件と必死に戦う母ものというオーソドックスな展開だが,ある瞬間から映画は思いもかけない展開をたどる.
映画は淡々とそれを描いていくので,最初は何が起こっているのかぴんと来ず呆気に取られてしまったが,それまで映画を見ていた前提が足下から覆される衝撃があった.
韓国映画恐るべし.
キム・ヘジャ,ウォンビン等の演技陣はいずれも充分な実力,エピローグで再びキム・ヘジャが,夕陽を浴びて走るバスの中,奇妙な踊りを踊るが,そのシーンも極めて印象的だ.
しかし出来の良い映画と好きな映画とは別である.04_3
この独断的映画感想文ではいつもそうだったが,まさにこの点で僕と韓国映画は常に相性が悪い.
この映画が表現するのは結局人間の底知れない狂気と悪意である.街の片隅で生きるこの母子もその例外ではないという突きつけられた命題は,僕にとっては受け容れ難く直面し難い.
見るのではなかったという感情が後に残る,残念な結果であった.
★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:パブリック・エネミーズ

日記:2010年7月某日
映画「パブリック・エネミーズ」を見る.04_2
2009年.監督:マイケル・マン.
出演:ジョニー・デップ(ジョン・デリンジャー),クリスチャン・ベイル(メルヴィン・パーヴィス),マリオン・コティヤール(ビリー・フレシェット),ビリー・クラダップ(J・エドガー・フーバー),スティーヴン・ドーフ(ホーマー・ヴァン・メーター),スティーヴン・ラング(チャールズ・ウィンステッド).
1930年代に一世を風靡した(?)実在のギャング,ジョン・デリンジャーの生涯を描く.01_2
銀行の金は奪うが民衆の金は奪わない,警官隊とは銃撃を交えるが市民は殺さないというスタイルのジョンは民衆の人気を得ていた.
FBIの前身たる組織を立ち上げていたフーバーは,捜査官パーヴィスを抜擢してデリンジャー逮捕を命じる.
一方ジョンは,クラブのクローク係ビリーと,運命的な恋に落ちる….
この映画の魅力はまず,ジョンとビリーの恋.
ビリーに一目惚れしたジョンは「ギャングのジョン・デリンジャーだ.俺の女になれ」と言う.結局その言葉でビリーはクロークを離れ彼についていくのだ.1930年代ってどういう時代なんだろう?
そういえば,銀行ギャングというアメリカが発達させた犯罪もこの時代のものだ.ジョンはこの分野の一流だと自称している.ジョンは確かにこの荒っぽい犯罪で成功するスタイルを守っている.
それは規律とストイシズムだ.02_2
ジョンは,逆上して看守を射ち仲間が命を失う原因となった部下を制裁し,追放する.ジョンは薬もやらず酒に溺れず,ひたすらビリーを思い続ける.
この様に描かれるジョンの個性も,映画の魅力の一つだろう.
もう一つの魅力はメルヴィン・パーヴィスとの対決である.思いがけない手入れで逮捕され,初めてメルヴィンと会った時,お互いに撃たれた部下の死を看取った経験のある者同士としてジョンがメルヴィンにかけた言葉が印象的だ.03_2
「俺は慣れているが,おまえは大変だな」.
その言葉通りなのか,ジョンが射殺されて数年後にメルヴィンは自殺したという.
強い光を放ちながら死に向かって疾走していく者達のドラマが,強烈に描かれる.
音楽も素敵,1926年に作られたジャズ・ナンバー「バイバイ ブラックバード」の印象的な使われ方が心に残る.
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:理想の彼氏

日記:2010年6月某日
映画「理想の彼氏」を見る.02
2009年.監督:バート・フレインドリッチ.
出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(サンディ),ジャスティン・バーサ(アラム),リン・ウィットフィールド(ローラ),ケリー・グールド(セイディ),アンドリュー・チェリー(フランクJr.),ローブ・カーコヴィッチ(ミッチ),サム・ロバーズ(フランク),ケイト・ジェニングス・グラント(ダフネ),ジェイク・チェリー,アート・ガーファンクル.
サンディは2人の子持ちの40歳バツイチ.
子どもの誕生日に旦那が近所の奥さんと出来ているのを発見,夫と別れ決然とニューヨークに出てくる.
以前から望んでいたスポーツ・チャンネルへの就職も決まってアパートを探す.たまたま訪れたカフェの2階が空いていることを知ったサンディはそこに入居することになる.03
カフェで働くアラムは心優しい子ども好きの24歳,子どもの世話を頼んでいるうちにサンディとアラムは親しくなる.
アラムは大学を出たもののやりたいことが見つからず,結婚はしたもののグリーン・カード目当てだったフランス人のヨメには逃げられ,両親と同居している.
サンディは友人の紹介で男性とのデートに励み始めるが….04
展開は非常にオーソドックスなラブコメ.題名が言うほど理想的な話ではなく,どちらかと言えば日常ベタな物語.
それでも二人の恋愛が育っていくあたりは微笑ましいし,それが急展開の後,いくつかの曲折を経て大団円を迎えたときは素直に感動した.
キャサリン・ゼタ=ジョーンズはさすがに魅力がある.
サンディの二人の子ども達は「クレヨンしんちゃん」張りのエロ・トークでのやんちゃぶりが可笑しい(もう少し可愛げがあっても良かったが).
こういう要素をうまく生かした物語の展開が印象的であった.01
アラムの父親役で老ユダヤ人を演じていたのはアート・ガーファンクル,随分感じが変わったが紛れもなく本人である.
★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »