独断的映画感想文:インビクタス/負けざる者たち
日記:2010年8月某日
映画「インビクタス/負けざる者たち」を見る.
2009年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:モーガン・フリーマン(ネルソン・マンデラ),マット・デイモン(フランソワ・ピナール),トニー・キゴロギ,パトリック・モフォケン,マット・スターン,ジュリアン・ルイス・ジョーンズ,アッジョア・アンドー,マルグリット・ウィートリー,レレティ・クマロ,パトリック・リスター,ペニー・ダウニー.
1990年に27年服役した監獄を出たネルソン・マンデラは,1994年の選挙で南アフリカ初の黒人大統領に就任する.しかし国は長年のアパルトヘイト(人種隔離)政策のための人種対立が続き,白人は希望を失い黒人は経済格差に苦しんでいた.
マンデラ大統領は,翌年南アで開催されるラグビーのワールドカップを通じ,国民の和解と統合を実現しようと考える.
南アのラグビーチームは連戦連敗,黒人選手は1人しかおらず,当初は誰しもその考えに同調しなかった.マンデラ大統領は主将のフランソワを官邸に招待し,お茶を飲みながらワールドカップでの優勝を求める….
事実に基づく物語.
1995年の南アの優勝は,何故可能だったのか.
映画は,マンデラが諸外国に働きかけて精力的に南アへの投資を呼びかける一方,ありとあらゆる機会を捉えて人種間の融和を訴える姿を描く.
フランソワもマンデラの依頼に従い,黒人の集落に出かけてはラグビーの普及活動に時間を割く.
それらの活動の一つ一つは,オーソドックスで何の奇をてらうものでもなかったが,何としても人種の融和に向かって進みたいというマンデラの不動の信念に裏打ちされている,その状況を映画は淡々と描いていく.
そして迎えたワールドカップ,ドキュメンタリータッチで進む試合の描写,そして遂に奇跡の優勝.
この映画は直球勝負の映画である.
事実をそのまま描いていくという直球が,はじめからずばずばと投げ込まれる.マンデラ当選直後に,荷物をまとめて出て行こうとする官邸職員に対しマンデラが行う演説.大統領警護の黒人グループに,マンデラの指示で白人の警護チーム(彼らはつい先日まで黒人グループを逮捕拘留していた当の本人達だ)が合流したことへのとまどい等.
そしてワールドカップの試合描写では,まさに剛速球となった直球が矢継ぎ早に投げ込まれる.
選手達の戦いはもとより,マンデラを拍手で迎える白人観衆,南アチームに声援を送る黒人観衆,打ち振られる南ア国旗.
このたたみかける映像は,スポーツそのものの持つ感動と相まって,観客に深い印象を与えるだろう.
いつものイーストウッド映画通り,音楽の出来も素晴らしい.
1995年の南アの優勝は,何故可能だったのか.
その問いへの答えは,やるべきことを信念を持ってやった結果である,ということになるだろうか?
困難な問題への答えがそういうものであることを,ある種の希望をもって提示する映画,一見の価値有り.
★★★★(★5個が満点)
蛇足:因みに映画にも出てくるが,このワールドカップは日本にとっては,準優勝したニュージーランドを相手に145対17という,大敗記録の更新というおまけ付きで予選敗退した,悪夢のWCでした.
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