独断的映画感想文:ゼロの焦点
日記:2010年8月某日
映画「ゼロの焦点」を見る.
2009年.監督:犬童一心.
出演:広末涼子(鵜原禎子),中谷美紀(室田佐知子),木村多江(田沼久子),杉本哲太(鵜原宗太郎),崎本大海(鳴海亨),野間口徹(本多良雄),黒田福美(上条保子),市毛良枝(板根絹江),本田博太郎(青木),西島秀俊(鵜原憲一),鹿賀丈史(室田儀作).
松本清張の往年の大ベストセラーを映画化.
昭和30年代始めの物語だが,SLの引く列車,自動車,町並み等,当時の風景の再現映像がそれなりに見事.
会社員の鵜原憲一と見合い結婚した大学英文科卒の禎子,新婚1週間で夫は前任地金沢へ仕事の引き継ぎに行き,そのまま失踪.禎子は金沢を訪れ,夫の足取りを探る.
折しも金沢は市長選の最中,初めての女性候補が出馬し,その後ろ盾を勤める会社社長夫人室田佐知子が夫婦揃って夫と懇意だったと知り,禎子は室田の会社を訪れる.
その受付にいた田沼久子のブロークンな英語に注意を引かれるが….
ミステリー仕立てではあるが,この映画はミステリーとは言えない.
夫の足取りを追って禎子が動き,様々な事実が明らかになるが,ある時点からは禎子の語りで一方的に事件の謎が明らかにされ,何故それが明らかになったかは判然としない.
警察が事実を知るに至った経過も不明である.
映画の主眼はそこにはなく,戦争直後の混乱期に孕まれた人間関係の芽が,10年を経て悲劇に至ったその社会的状況を浮き彫りにすることにあるようだ.
俳優では何と言っても中谷美紀の存在感が大きい.配役の位置と言い演技力と言い美貌と言い,他を圧倒.
これに比べると木村多江は,演技力では負けていないが,配役の立ち位置が元来「室田佐知子」の陰にある上,普通この位置にあれば脱ぐでしょ,と思われる期待には応えていない点で今ひとつ.
広末涼子については可もなく不可もなし.
原作は読んだことがないが,映画では室田儀作は何をしたので逮捕されたのか,鵜原宗太郎は何故必要のない嘘までつく人物として描かれたのか等,気にかかる点が多かった.
見ていて波に乗りきれない映画.大金かけた火曜サスペンス劇場と言えば,少し意地悪かしら.
★★★(★5個が満点)
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