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2010/09/04

独断的映画感想文:キャタピラー

日記:2010年9月某日
映画「キャタピラー」を見る.1_3
2010年.監督:若松孝二.
出演:寺島しのぶ(黒川シゲ子),大西信満(黒川久蔵),吉澤健(黒川健蔵),粕谷佳五(黒川忠),増田恵美(黒川千代),河原さぶ(村長),石川真希(村長夫人),飯島大介(司令部軍人),地曵豪(軍人1),ARATA(軍人2),篠原勝之(クマ).
映画の冒頭,中国戦線での戦闘シーン,中国女性を追い詰め犯す日本軍兵士.
一転して日本の農村から今日も出征していく兵士,その送る隊列と行き違いに軍の車が黒川家に到着する.この家から出征した久蔵が,四肢を失い顔焼けただれ,聴覚を失い口もきけない状態で帰還したのだ.
親族が帰り,嫁のシゲは勲章と久蔵の戦功を讃えた額入りの新聞記事と共に久蔵とただ二人残される.
久蔵は軍神様と呼ばれ,村の国防婦人会からもシゲに軍神の世話を立派にやり遂げることが銃後の務めと念を押される.6
シゲは世間に向かってはその務めを果たしながら,食欲と性欲のみを要求する夫の世話に混乱と葛藤の日々を送ることになる….
生理的には極めて不快なシーンの続くこの映画は,しかし監督の豪腕と気迫,寺島しのぶと大西信満の渾身の演技(「赤目四十八瀧心中未遂」以来の共演.大西は若松作品には「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」にも出ている)で異様な迫力の映画となった.
監督の極めて直截な反戦メッセージの貫かれた映画である.
障害者介護の観点で現代にも通じるものがあるという見解は,戦時下という非常態勢,建前最優先の社会と現代とを比べる無理があるので採用できない(しかし一つの考え方に国民全体が雪崩を打つという点では,現代もこの当時も同じ危険性を感じるのは間違いない).4
シゲは久蔵の世話に追い詰められ,久蔵は中国戦線で行った陵辱殺人の悪夢に精神のバランスを失っていく.
この物語の行く末はどうなるのかという,観客にとっても重苦しい展開となるが,戦局の急速な悪化とある日の終戦という形で物語は結末を迎える.
エンドロールに流れる元ちとせの歌「死んだ女の子」も,観客に強い印象を与えるだろう.監督の力業に脱帽する.2_3
★★★☆(★5個が満点)
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