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2010年9月に作成された記事

2010/09/28

独断的映画感想文:サマーウォーズ

日記:2010年9月某日
映画「サマーウォーズ」を見る.1
2009年.監督:細田守.
声の出演:神木隆之介(小磯健二),桜庭ななみ(篠原夏希),谷村美月(池沢佳主馬),斎藤歩(陣内侘助),富司純子(陣内栄).
Web上の仮想世界OZは強固なセキュリティを誇り,世界中の人々がそこにアカウントを登録し,アバターを介してその仮想世界を楽しむ他,業務上の情報交換や取引もそのアカウントを通じて行っていた.
健二はそのOZのメンテナンスをバイトで行う高校生,本人は天才的な数学能力を持つ.
憧れの先輩夏希の誘いで信州上田の彼女の田舎に同行したが,その陣内家は90歳の夏希の曾祖母,栄の誕生日の準備でてんてこ舞い.夏希は健二を「旧家の出で東大生の彼氏」と紹介し,栄のお眼鏡にかなった健二は陣内家に迎えられる.4
その夜半,携帯に送られてきた2600桁の数字からなる暗号を,つい数学脳を刺激されて解いて返信してしまった健二,夜が明けてみるとOZのセキュリティは破られ全世界は大混乱に陥っていた….
この危機に紆余曲折を山ほど経ながら,最終的には一族一丸となって犯人に闘いを挑む陣内家と健二の奇想天外な物語.
アニメ自体の美しさという点にかけては今ひとつな本作品だが,そんなことはどうでも良いのであって,仮想空間のアバターを介した闘いの映像化は相当に魅力的.5
また,シャイな高校生健二とゲームオタクな小学生佳主馬,ばーちゃんに仕込まれた花札で敢然と闘いを挑む夏希のコンビネーションの痛快さはなかなかのもの.
OZを支配したのは,アメリカ軍が開発した「知的好奇心を持った人工知能」で,この人工知能との勝負が後半の山場.思いっきりグローバルな仮想空間を巡る闘いと,上田ローカルな甲子園長野県予選の試合が並行して進むのも面白い.3
自由闊達な発想と説得性のある映像化は,素晴らしい.最後まで一気に見た.
★★★★(★5個が満点)
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2010/09/26

独断的映画感想文:今度は愛妻家

日記:2010年9月某日
映画「今度は愛妻家」を見る.02
2009年.監督:行定勲.
出演:豊川悦司(北見俊介),薬師丸ひろ子(北見さくら),水川あさみ(吉沢蘭子),濱田岳(古田誠),城田優(西田健人),井川遥(井川ゆり),石橋蓮司(原文太).
俊介はかってはアイドルの写真集等を撮っていたが,1年ほど前からは仕事を殆どしていない写真家.
妻のさくらはそんな彼に半ばさじを投げつつ,その健康を気遣う.
ある日俊介が女優志願の蘭子を自宅に連れ込んだことを知ったさくらは,箱根に一人で出かけてしまいそのまま帰ってこない.08
俊介はせいせいしたと当初は強がりを言っていたが,なかなか帰らないさくらに落ち着かない日々を送る….
という出だしで始まる物語.当初はコメディタッチで描かれその割にテンポが悪いなどと思っていると,中盤からは蘭子が俊介の弟子の誠とつきあい始め,更におかまの文ちゃんが登場,さくらと俊介の秘密が明らかになっていく後半はインパクトあるドラマが進行する.
元々は舞台劇として作られた作品らしく,登場人物同士の容赦なく感情を切り裂くような科白が飛び交うが,すべてが明らかになった後の終盤は情感あふれる結末となる.03
役者は薬師丸ひろ子,豊川悦司,石橋蓮司が素敵.薬師丸の演ずるさくらが実に愛くるしく,健康オタク的にかいがいしく俊介の面倒を見て甘えるのが印象的.これに対する豊川悦司が,どんなにさくらに甘えられても邪険にし自分勝手に振る舞い,そのくせさくらに依存し彼女なしでは仕事をする気も消え失せてしまう駄目男を,的確に演じている.
石橋蓮司はこのドラマのキーパースンで,彼が俊介・さくらとどういう関係にあるかがまさにポイントなのだが,その文太役を楽しそうに演じている.濱田岳もこの3人を相手に健闘.01

結局この映画は駄目男俊介のある種の自立の物語なのだが,中年男にとっては身にしみるお話である.
★★★☆(★5個が満点)
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2010/09/21

独断的映画感想文:マイレージ、マイライフ

日記:2010年9月某日
映画「マイレージ、マイライフ」を見る.2
2009年.監督:ジェイソン・ライトマン.
出演:ジョージ・クルーニー(ライアン・ビンガム),ヴェラ・ファーミガ(アレックス・ゴーラン),アナ・ケンドリック(ナタリー・キーナー),ジェイソン・ベイトマン(クレイグ・グレゴリー),ダニー・マクブライド(ジム・ミラー),メラニー・リンスキー(ジュリー・ビンガム),エイミー・モートン(カーラ・ビンガム),サム・エリオット(フィンチ機長),J・K・シモンズ(ボブ).
ライアンの仕事はリストラ告知人.自分でクビを言い渡すのを恐れる経営者に代わって,トラブルなく犠牲者に引導を渡し,人生の再出発に向かう様促す.
講演もライアンの仕事だ.「バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない」という持論を企業の従業員に語る.
ライアンは年間の出張が322日にも及ぶ仕事をこなし,家族や同僚との付き合いも薄く,飛行機とホテルを我が宿として企業お抱えの生活をむしろ楽しんでいる.
その夢は何時か1000万マイルのマイレージを獲得することだ.
ところが新入社員のナタリーが,リストラ告知をTV会議システムでやるというアイディアを打ち出し,ライアンの出張生活はピンチに.面接による従来のやり方を主張するライアンは,ナタリーのOJTを担当する羽目になる.
ナタリーを連れて出張を重ねる一方で,ライアンは自分同様の生活を送っているアレックスと出会いセックスフレンドになるが,彼女とは妙に気があって,妹の結婚式にアレックスを同伴することになった….3
2人の女性との関わりで変わっていく,ライアンの人生を描くコメディだが,僕にはどうもこの映画はブラックコメディに見える.
ライアンという男,ハンサムだし人柄は悪くはなさそうだし,ひょっとして優しいのかも知れないが,人間性というものが全く薄っぺらい.
言い方を変えると,人間性を発揮し分かち合える様な場を全く持っていないのだ.
ライアンは,人間は皆そんなもので,その中で自分は最もスマートかつ合理的に生きている,と思っていた節がある.ところが最も自分に近いと思っていたアレックスは,そうではなかった.
彼女は仕事とは別の場所をきちんと守っていたのである.
2人の女性が去っていった後に残ったライアンは,ようやく自分には何もなかったことに気付くのだ.
映画の最終シーンは事実ではなく,せめて自分もこういう人間になれたらいいのに,という彼の願望に過ぎなかったのではないか.現実の彼は今まで同様に,企業の論理の迷路の中を,テクニックを駆使して渡り続けているのではあるまいか.1
ブラックで苦いという印象の映画,でも映画として悪くはありません.
★★★☆
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2010/09/20

独断的映画感想文:心中天網島

日記:2010年9月某日
映画「心中天網島」を見る.09
1969年.監督:篠田正浩.
助監督:小栗康平.原作:近松門左衛門.脚本:富岡多恵子,武満徹,篠田正浩.撮影:成島東一郎.美術:栗津潔.音楽:武満徹.
出演:岩下志麻(おさん/小春),中村吉右衛門(紙屋治兵衛),小松方正(太兵衛),滝田裕介(孫右衛門),藤原釜足(大和屋),加藤嘉(五左衛門),河原崎しづ江(おさんの母),左時枝(お杉),日高澄子(女将),浜村純(黒衣頭).10
紙屋治平は,妻子のある身でありながら曾根崎の遊女小春と起請文を交わした仲,しかし身請けの目処も立たぬままの逢瀬に,何時か二人は心中を誓い合う様になる.
これを心配した治平の兄・孫右衛門は,武士に扮して小春の客となるが,それと知らぬ小春は治平と心中を誓ったが死ぬのは怖い,治平と切れたいと相談をする.
これを立ち聞きした治平は小春の裏切りと知り,起請文を捨て,兄に誓って小春との縁を切る.しかしその小春の言葉は,治平の妻おさんから受け取った夫の命を助けてくれとの手紙への,義理立てであった….
近松の原作を,この時代の俊英の結集をもって映像化したアートシアターギルドの傑作.
印象的で簡略化された大道具や,主人公の回りにうごめく黒子達など,特異な映像が緊張感高く繰り広げられる.08
恋に身を焦がす遊女小春と,その小春の義理立てに誠実に応えようとするしっかり者の女房おさんを,岩下志麻(このとき28歳)がうまく演じ分ける.吉右衛門は同じく25歳,この紙屋治平の見事なまでの情けなさは,現在の押しも押されもせぬ貫禄からはとうてい想像できないだろう.
小松方正の悪役ぶりも殺してやりたいほど憎たらしくて宜しい.07
おさんを舅に連れ去られ,呆然としながら黒子達の導くまま,大道具の壁のどんでんを返して夜の闇に消えていく治平のシーンは,ギリシャ悲劇のような運命の力さえ感じさせる.
創意とエネルギーに満ちあふれた傑作として,必見の作品.
★★★★☆(★5個が満点)
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2010/09/11

独断的映画感想文:若草の萌える頃

日記:2010年9月某日
映画,「若草の萌える頃」を見る.01
1968年.監督:ロベール・アンリコ.
出演:ジョアンナ・シムカス,カティーナ・パクシヌー,ホセ・マリア・フロタッツ,ベルナール・フレッソン,ポール・クローシェ,シュザンヌ・フロン,ロジェ・イバニェス.
冒頭の画面はスペイン内戦のものらしい.
スペイン内戦は,ファシストのフランコ総統と共和派の市民が激しく戦った内戦,フランコをヒトラーが支援し,共和派を支援して国際義勇軍が組織された.
画面は変わって少女にピアノを教えるジタおばさん,昼のサイレンが鳴ってレッスンは終わり,少女の口にあめ玉を入れてあげて送り出す.
その後ソファでくつろごうとして倒れるジタおばさん,帰ってきた姪のアニーが抱き上げる.
ジタおばさんは脳溢血でそれも重症との医師ベルナールの診断,昏睡状態の看病が続く.
ある夜,おばさんの死の恐れに耐えられず,アニーは夜のパリへさまよい出る.
とある遊技場でミニカーを夢中で走らせるベーシストの青年との出会い,その店で,羊で賞を取ったボニーにナンパされ,クラスメートの毛沢東主義者ジェームズにも出会う(”毛”つながりか?).街で猫狩りをするスペインの出稼ぎ労働者とは,一緒に警察のやっかいになる羽目に.もらい下げに来た医師ベルナールに連れられ行ったクラブでボニー,ジェームズと再会し,彼らと別れた後また訪れた遊技場でベーシストの青年と再会する….35
大学で中国語を学ぶ少女が,肉親の危篤を境に直面する人生の様々な切り口,その中で大人になる少女.
「冒険者達」に続きロベール・アンリコがジョアンナ・シムカスを美しく描く.
十代の頃見たこの映画は,思春期の女性の美しさを僕に強烈に印象づけた.
男にくくっていた髪をほどかれるアニー,髪を波打たせた姿は,もう大人の女だ.
僕にとってジョアンナ・シムカスはまさにアイドルと言うべき存在だった.
彼女の映画は本作と「冒険者達」の2本しか見てないが,2作とも映画としてまことに見応えのある良作であり,映画ファン必見の2本.
本作はフランス映画の良いところを集めた様な映画で,カメラにスキがなく,物語の展開に(一夜のパリのさすらいというだけなのに)予断を許さぬ面白さがある.09
冒頭の画面について言うと,ジタおばさんはスペインの亡命者,その弟でアニーの父はスペイン内戦に参戦し彼女が2歳の時に最後の出撃をして帰らぬ人となった.この映画の時代は,スペイン内戦から第2次大戦にいたる戦争の影がまだ色濃く残っていた時代でもある.
深く印象に残る作品.
★★★★(★5個が満点)
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2010/09/04

独断的映画感想文:第9地区

日記:2010年9月某日
映画「第9地区」を見る.95
2009年.監督:ニール・ブロンカンプ.
出演:シャールト・コプリー(ヴィカス),デヴィッド・ジェームズ(クーバス大佐),ジェイソン・コープ(グレイ・ブラッドナム/クリストファー・ジョンソン),ヴァネッサ・ハイウッド(タニア).
ヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が現れそのまま浮かんでいる.
遂に当局が中に踏み込んでみると,中には健康を害し気力を失った無数のエイリアンがいた.
遭難し指導層に見捨てられたと考えられるエイリアン達は,宇宙船の直下に難民キャンプを作って収容されたが,20年後そこは,人口180万の巨大なスラムとなった.
治安の悪化に住民の不満が爆発,キャンプの管理を委託されている民間会社MNUは,新しいキャンプを作りそこへの隔離政策を実施に移そうとする.
傭兵に守られたMNU職員はエイリアンの同意を取り付けつつ新キャンプへの移転を進めようと作戦を開始するが….92
当初,この作戦の責任者に抜擢された真面目だが脳天気なヴィカスの説明で作戦の進行が説明され,話はコメディと思われる調子で進むが,このヴィカスが小屋の捜索中に誤って謎の液体を顔に浴びたあたりから,物語が動き始める.
この液体はヴィカスのDNAに作用して,彼のエイリアンへの変身が始まってしまう.
MNUは実は武器会社でもある.宇宙船から見つかった武器は,エイリアンのDNAを持ったものにしか反応せず使用できない.
ヴィカスの感染を知ったMNUは彼を監禁,ヴィカスは人体実験を受け,臓器をバラバラにされ研究されることとなる.
そこから脱出したヴィカス,彼を追うMNUの傭兵部隊,謎の液体を使って母国帰還を意図するエイリアンのインテリ親子,スラムを支配するナイジェリア・マフィアのオバサンジョが入り乱れて,謎の液体とヴィカスの体を奪い合うサスペンスアクションが展開,このあたりからは息をもつかせぬ展開となる.94
隔離政策の差別と憎悪,現代兵器を駆使した虐殺と企業論理による弱者圧殺等々,人類の抱える汚点をこれでもかと見せながらテンポ良く展開する圧倒的なアクションシーンが,絶妙である.
迫力ある結末と哀切なエピローグのバランスも宜しい.
一見の価値あり,但しエイリアンのスラムシーンは,生理的には見て楽しいものではない.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:キャタピラー

日記:2010年9月某日
映画「キャタピラー」を見る.1_3
2010年.監督:若松孝二.
出演:寺島しのぶ(黒川シゲ子),大西信満(黒川久蔵),吉澤健(黒川健蔵),粕谷佳五(黒川忠),増田恵美(黒川千代),河原さぶ(村長),石川真希(村長夫人),飯島大介(司令部軍人),地曵豪(軍人1),ARATA(軍人2),篠原勝之(クマ).
映画の冒頭,中国戦線での戦闘シーン,中国女性を追い詰め犯す日本軍兵士.
一転して日本の農村から今日も出征していく兵士,その送る隊列と行き違いに軍の車が黒川家に到着する.この家から出征した久蔵が,四肢を失い顔焼けただれ,聴覚を失い口もきけない状態で帰還したのだ.
親族が帰り,嫁のシゲは勲章と久蔵の戦功を讃えた額入りの新聞記事と共に久蔵とただ二人残される.
久蔵は軍神様と呼ばれ,村の国防婦人会からもシゲに軍神の世話を立派にやり遂げることが銃後の務めと念を押される.6
シゲは世間に向かってはその務めを果たしながら,食欲と性欲のみを要求する夫の世話に混乱と葛藤の日々を送ることになる….
生理的には極めて不快なシーンの続くこの映画は,しかし監督の豪腕と気迫,寺島しのぶと大西信満の渾身の演技(「赤目四十八瀧心中未遂」以来の共演.大西は若松作品には「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」にも出ている)で異様な迫力の映画となった.
監督の極めて直截な反戦メッセージの貫かれた映画である.
障害者介護の観点で現代にも通じるものがあるという見解は,戦時下という非常態勢,建前最優先の社会と現代とを比べる無理があるので採用できない(しかし一つの考え方に国民全体が雪崩を打つという点では,現代もこの当時も同じ危険性を感じるのは間違いない).4
シゲは久蔵の世話に追い詰められ,久蔵は中国戦線で行った陵辱殺人の悪夢に精神のバランスを失っていく.
この物語の行く末はどうなるのかという,観客にとっても重苦しい展開となるが,戦局の急速な悪化とある日の終戦という形で物語は結末を迎える.
エンドロールに流れる元ちとせの歌「死んだ女の子」も,観客に強い印象を与えるだろう.監督の力業に脱帽する.2_3
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:眠狂四郎 人肌蜘蛛

日記:2010年8月某日
映画「眠狂四郎 人肌蜘蛛」を見る.2_2
1968年.監督:安田公義.
出演:市川雷蔵(眠狂四郎),緑魔子(紫姫),三條魔子(須磨),川津祐介(土門家武),渡辺文雄(都田一閑),寺田農(薬師寺兵吾).
母の墓参で甲府を訪れた狂四郎,しかし墓所の周囲にはカラスが舞い,村人が鬼館と呼ぶ城館が辺りを支配していることを知る.
その主は将軍の庶子である土門家武・紫の双子の兄妹,家武は妹への恋情によりその婚約相手を次々に毒殺,切腹をしたことにして甲府に押し込められていた.
紫は周辺の若者を拉致しては慰み者にして殺すという暴虐ぶり,その魔手は墓守の老人が育てた狂四郎と同じ黒ミサの子,薬師寺兵吾にも及ぶ.3_2
狂四郎は身替わりを買って出て鬼館に乗り込むが….
剣技とお色気で魅了するシリーズ第11作.
この映画の魅力は何と言っても緑魔子である.
この手の異常なお姫様にはまさにうってつけのキャスティング.兄役の川津祐介もまことにそれらしい気味悪さで宜しい.
この兄妹の異常さ暴虐ぶりの底に,ある種の真情がほの見える点が,物語の魅力になっている.
紫に盲目的に仕える蜘蛛出の最後が哀れ.1_2
しかし狂四郎は強いですな.鬼館の手勢と対決するたびに数十人単位で切りまくっているから,最後に鬼館が滅亡してしまうのも無理はない.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:新選組始末記

日記:2010年8月某日
映画「新選組始末記」を見る.1
1963年.監督:三隅研次.
出演:市川雷蔵(山崎蒸),藤村志保(志満),松本錦四郎(沖田総司),小林勝彦(谷三十郎),成田純一郎(楠小十郎),天知茂(土方歳三),若山富三郎(近藤勇),田崎潤(芹沢鴨).
幕末の京都,斬り合いの末相打ちとなった侍を目撃した山崎蒸.3
亡くなった侍の遺品を新選組に届け,近藤勇と出会う.
その人柄に魅せられた山崎は入隊を決意するが,恋人の医師志満は,新選組は壬生浪と蔑まれる殺人集団だと激しく反発する.
山崎はその剣の腕でみるみる頭角を現すが,隊は局長の芹沢鴨派と近藤勇をたてようとする土方俊三派との激しい闘争の中にあった….
剣をもって真っ直ぐに生きようとする山崎の,新選組における苦渋の活躍を,池田屋騒動を中心に描く時代劇.ほぼ原作通りに描かれている新選組の面々がそれぞれに個性的だ.
幕末は勤王佐幕開国攘夷を問わず,あらゆる諸党派が異様なエネルギーをもって活動した特別な時代だと思うが,その中でも新選組の激しい攻撃性,異常に厳しい隊内諸法度は特筆されるべきだろう.2
山崎蒸は,その中では比較的穏やかで偏りのない考えの持ち主であったと思われる.しかしその山崎も女性の医師である志満の目から見れば殺人集団の一員に過ぎず,二人の苦悩もまさにそこにある.
市川雷蔵,藤村志保共に見応え有り.痛快時代劇ではないところがこの作品の価値である.
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