独断的映画感想文:若草の萌える頃
日記:2010年9月某日
映画,「若草の萌える頃」を見る.
1968年.監督:ロベール・アンリコ.
出演:ジョアンナ・シムカス,カティーナ・パクシヌー,ホセ・マリア・フロタッツ,ベルナール・フレッソン,ポール・クローシェ,シュザンヌ・フロン,ロジェ・イバニェス.
冒頭の画面はスペイン内戦のものらしい.
スペイン内戦は,ファシストのフランコ総統と共和派の市民が激しく戦った内戦,フランコをヒトラーが支援し,共和派を支援して国際義勇軍が組織された.
画面は変わって少女にピアノを教えるジタおばさん,昼のサイレンが鳴ってレッスンは終わり,少女の口にあめ玉を入れてあげて送り出す.
その後ソファでくつろごうとして倒れるジタおばさん,帰ってきた姪のアニーが抱き上げる.
ジタおばさんは脳溢血でそれも重症との医師ベルナールの診断,昏睡状態の看病が続く.
ある夜,おばさんの死の恐れに耐えられず,アニーは夜のパリへさまよい出る.
とある遊技場でミニカーを夢中で走らせるベーシストの青年との出会い,その店で,羊で賞を取ったボニーにナンパされ,クラスメートの毛沢東主義者ジェームズにも出会う(”毛”つながりか?).街で猫狩りをするスペインの出稼ぎ労働者とは,一緒に警察のやっかいになる羽目に.もらい下げに来た医師ベルナールに連れられ行ったクラブでボニー,ジェームズと再会し,彼らと別れた後また訪れた遊技場でベーシストの青年と再会する….
大学で中国語を学ぶ少女が,肉親の危篤を境に直面する人生の様々な切り口,その中で大人になる少女.
「冒険者達」に続きロベール・アンリコがジョアンナ・シムカスを美しく描く.
十代の頃見たこの映画は,思春期の女性の美しさを僕に強烈に印象づけた.
男にくくっていた髪をほどかれるアニー,髪を波打たせた姿は,もう大人の女だ.
僕にとってジョアンナ・シムカスはまさにアイドルと言うべき存在だった.
彼女の映画は本作と「冒険者達」の2本しか見てないが,2作とも映画としてまことに見応えのある良作であり,映画ファン必見の2本.
本作はフランス映画の良いところを集めた様な映画で,カメラにスキがなく,物語の展開に(一夜のパリのさすらいというだけなのに)予断を許さぬ面白さがある.
冒頭の画面について言うと,ジタおばさんはスペインの亡命者,その弟でアニーの父はスペイン内戦に参戦し彼女が2歳の時に最後の出撃をして帰らぬ人となった.この映画の時代は,スペイン内戦から第2次大戦にいたる戦争の影がまだ色濃く残っていた時代でもある.
深く印象に残る作品.
★★★★(★5個が満点)
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