独断的映画感想文:マイレージ、マイライフ
日記:2010年9月某日
映画「マイレージ、マイライフ」を見る.
2009年.監督:ジェイソン・ライトマン.
出演:ジョージ・クルーニー(ライアン・ビンガム),ヴェラ・ファーミガ(アレックス・ゴーラン),アナ・ケンドリック(ナタリー・キーナー),ジェイソン・ベイトマン(クレイグ・グレゴリー),ダニー・マクブライド(ジム・ミラー),メラニー・リンスキー(ジュリー・ビンガム),エイミー・モートン(カーラ・ビンガム),サム・エリオット(フィンチ機長),J・K・シモンズ(ボブ).
ライアンの仕事はリストラ告知人.自分でクビを言い渡すのを恐れる経営者に代わって,トラブルなく犠牲者に引導を渡し,人生の再出発に向かう様促す.
講演もライアンの仕事だ.「バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない」という持論を企業の従業員に語る.
ライアンは年間の出張が322日にも及ぶ仕事をこなし,家族や同僚との付き合いも薄く,飛行機とホテルを我が宿として企業お抱えの生活をむしろ楽しんでいる.
その夢は何時か1000万マイルのマイレージを獲得することだ.
ところが新入社員のナタリーが,リストラ告知をTV会議システムでやるというアイディアを打ち出し,ライアンの出張生活はピンチに.面接による従来のやり方を主張するライアンは,ナタリーのOJTを担当する羽目になる.
ナタリーを連れて出張を重ねる一方で,ライアンは自分同様の生活を送っているアレックスと出会いセックスフレンドになるが,彼女とは妙に気があって,妹の結婚式にアレックスを同伴することになった….
2人の女性との関わりで変わっていく,ライアンの人生を描くコメディだが,僕にはどうもこの映画はブラックコメディに見える.
ライアンという男,ハンサムだし人柄は悪くはなさそうだし,ひょっとして優しいのかも知れないが,人間性というものが全く薄っぺらい.
言い方を変えると,人間性を発揮し分かち合える様な場を全く持っていないのだ.
ライアンは,人間は皆そんなもので,その中で自分は最もスマートかつ合理的に生きている,と思っていた節がある.ところが最も自分に近いと思っていたアレックスは,そうではなかった.
彼女は仕事とは別の場所をきちんと守っていたのである.
2人の女性が去っていった後に残ったライアンは,ようやく自分には何もなかったことに気付くのだ.
映画の最終シーンは事実ではなく,せめて自分もこういう人間になれたらいいのに,という彼の願望に過ぎなかったのではないか.現実の彼は今まで同様に,企業の論理の迷路の中を,テクニックを駆使して渡り続けているのではあるまいか.
ブラックで苦いという印象の映画,でも映画として悪くはありません.
★★★☆
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