« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

2010年10月に作成された記事

2010/10/30

独断的映画感想文:沈まぬ太陽

日記:2010年10月某日
映画「沈まぬ太陽」を見る.02
2009年.監督:若松節朗.
出演:渡辺謙(恩地元),三浦友和(行天四郎),松雪泰子(三井美樹),鈴木京香(恩地りつ子),石坂浩二(国見正之),香川照之(八木和夫),木村多江(鈴木夏子),清水美沙(小山田修子),鶴田真由(布施晴美),柏原崇(恩地克己),戸田恵梨香(恩地純子),大杉漣(和光雅継),西村雅彦(八馬忠次),柴俊夫(堂本信介),風間トオル(沢泉徹),山田辰夫(古溝安男),菅田俊(志方達郎),神山繁(桧山衛),草笛光子(恩地将江),小野武彦(道塚一郎),矢島健一(青山竹太郎),品川徹(龍崎一清),田中健(井之山啓輔),松下奈緒(樋口恭子),宇津井健(阪口清一郎),林稔侍(竹丸鉄二郎),加藤剛(利根川泰司).
山崎豊子のベストセラーの映画化.
1985年8月12日,「国民航空」のジャンボ機123便は御巣鷹山に墜落,史上空前の航空事故となる.
このとき遺族対応の係となった恩知元は,20年前は労組の委員長として激しく会社側と対立した当事者であった.07
その後「国民航空」の恩知への報復は激しく,カラチに2年,慣例の帰国を反古にしてテヘランに2年,更にナイロビに2年の海外勤務を命じ,恩知自身も家族も崩壊の縁に瀕した.
一方「国民航空」は御用組合を設立し,第1組合は圧倒的少数派へと追い込まれる.御巣鷹山の事故後も運輸天下り官僚の無責任体制と御用組合のなれ合いは変わらず,「国民航空」の腐敗は頂点に達していた….
先週見たの(「笑う警官」)と同じ角川映画だが,こちらは骨太の映画らしい映画.角川春樹が関与しないとこうも違うものか.
これは20年に亘る家族の物語である.
恩知は会社にしっぽを振らない労組活動家として苦難の道を歩み,途中で転向して第2組合の設立の黒幕となる副委員長行天(後に常務取締役)とは終生激しく対立する.
しかし終盤,御巣鷹山事故後の社内改革の企図も潰され,行天にナイロビ左遷を命じられた後の恩知の家族との語らいは,この長い物語の結末として印象的である.恩知の思いは成長した家族の皆に受け容れられるが,同時にこの映画を見ている観客の受け容れるところともなるのだ.
映画は3時間を超す長尺だが,余りにも大きな御巣鷹山事故を中心として高い緊張感が維持され,最後まで一気に見た.
俳優では渡辺謙が期待通りの好演,松雪泰子は先週見た映画でも良かったが,この映画でも説得力ある演技で印象に残った.03
宇津井健が事故で息子夫婦と孫を亡くした遺族を演じて好演,感動した.
この映画の上演に際しては日本航空からいろいろと妨害や圧力が入ったらしいが,まあ「国民航空」がこういう会社だということは全国民が知るべきことであろう.
事故を起こし瀕死の「国民航空」に,なお運輸官僚と○○党政治家がなんの責任も感じずに利権のみを漁ってたかってくる様子は,正視に耐えない.この辺も映画は良く描けていると思う.
★★★★(★5個で満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/27

独断的映画感想文:笑う警官

日記:2010年10月某日
映画「笑う警官」を見る.02
2009年.監督:角川春樹.
出演:大森南朋(佐伯宏一),松雪泰子(小島百合),宮迫博之(津久井卓),忍成修吾(新宮昌樹),螢雪次朗(植村辰男),野村祐人(町田光芳),大友康平(マスター),伊藤明賢(岩井隆),矢島健一(浅野貴彦生活安全部長),鹿賀丈史(石岡正純 刑事部長).
北海道警で実際にあった汚職事件にヒントを得た佐々木譲の原作による映画.
原作は日本人作家には珍しい乾いたハードボイルドで,構成がしっかりしておりしかも警察の現場を良く踏まえたものだ.読んだ時から映画化されるのを楽しみにしていた.
冒頭は原作通り,北海道の地方の交番で制服警官が拳銃で自殺する.
一方札幌ではがらんとしたアパートで女性警官が殺された.所轄の係官を押しのけ,道警が現場を把握した上,警察官津久井を覚醒剤常習の殺人犯とし,射殺命令が出てSWATが動員される.
津久井の同僚佐伯は,間近に迫った道議会の100条委員会への津久井の証言を阻止するため道警幹部が仕組んだ犯行と考え,密かに同志を集め真相の解明に乗り出す….
映画はこの同志7名の台詞劇が延々と続き,しかもその台詞がいっこうに冴えない.そうそうたる役者が揃っているのに,いったいこれはどういう訳か.
台詞そのものが感情を全て言葉にしてしまうような薄っぺらい寒い台詞で,さすがの役者達も引いてしまったのだろうか.03
一方物語はどんどん原作から離れていって,ラスト30分程はいったい何の物語かと思う程角川ワールドになってしまい,終盤の思いもかけない黒幕の登場には呆気に取られるばかり.
最後のシーンはもう訳の分からないどんでん返しというか納得しがたいもので,今までのことは夢でしたと言われたようなものである.原作をここまで変えた意図というものが全く理解できない.
思えば角川春樹の制作・脚本・監督というのは,およそ考えられる最悪の取り合わせであった.
中盤,突如マツケンがちょい役で出演するが,その奇怪な振る舞いを無茶振りされた宮迫・松雪の両名は立ちつくすだけ.その昔の角川映画「戦国自衛隊」では草刈正雄がちょい役で出て草を刈っていたが,こういうらちもない悪ふざけにも全く進歩がないと呆れる他ない.
他にも突っ込みたいところは山のようにあるが,ただ空しいばかりだ.
原作を読んだ人には悪夢のような映画.読んでいない人には無駄な映画.
星無し(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/24

独断的映画感想文:番外 阿佐ヶ谷ジャズストリート

日記:2010年10月某日
今日と昨日は生まれ在所の東京・阿佐ヶ谷で,第16回目の阿佐ヶ谷ジャズストリートが開催された.Dscn0510
阿佐ヶ谷生まれのジャズピアニスト,山下洋輔が今年も村の鎮守ともいうべき神明宮能舞台で演奏をするので早速見に行く.天気は快方に向かっているらしいが,昼間から黒雲に覆われた怪しげな雰囲気,無事演奏が行われるかどきどきする.
案ずるより産むが易し,演奏は6時定刻通りにスタートした.早めに並んだおかげでかぶりつきまん真ん中の席をゲット.
山下洋輔N.Y.トリオは素晴らしい出来.この日のセッションは数づくしの様で,1曲目は名前のない曲で,テーマの途中の3連打が特徴である.各パートで繰り返される3連打の強調が印象的.こういう3連打をたたみかける構成が情感をどうしてこれほど刺激するのか.終盤に向け頭に血が上ってくる.終わって思わず拍手喝采.
次は「トリプルキャット」という山下家の3匹の猫に捧げた曲,猫踏んじゃったや子猫のワルツの断片がちりばめられた楽しい曲.
3曲目はマイナーのブルースコードのワルツで(3拍子)これもまだ無名の由.
4曲目は「スパイダー」という8拍のメロディを単位に構成される曲で,各パートの完全な単独パフォーマンスがあり各員思う存分の大暴れ.
最後は変則拍子でお馴染みの「クルディッシュダンス」.
3人の実力が素晴らしい水準で聞く方もついていくのが大変.しかし山下洋輔はもう68歳だと思うが,この新作を生み続け,しかもエモーショナルな作品をライブツアーで演奏し続けるエネルギーには感動する.
終わった後は歩いて5分の聖ペテロ教会へ移動,ここでは鈴木良雄のカルテットが演奏.ここの礼拝堂は音響効果が素晴らしく,ピアノ,ベースの響きが最高.
鈴木良雄のオリジナルをピアノの野力奏一がアレンジしたナンバーが美しく素晴らしい.この他はパーカッションとフルートという構成ながら,チームワークの良い演奏で楽しかった.
この後更に街を抜け駅前に戻ってジャズバー「クラヴィーア」へ.ここのマスターは小学校の先輩である.ここでは右近茂(ts)八木隆幸(p)大表秀具(b)のトリオがスタンダードナンバーを演奏.
特にピアノの八木隆幸が素晴らしい.リリカルでかつスピーディーな演奏を素晴らしいテクニックで弾きこなす.ここでも頭に血が上って拍手喝采.
生まれ育った勝手知ったる街並みを縫って,2日間に亘ってジャズを楽しんだこのジャズストリート.仕事の都合で来られないときもあるが今年は運良く堪能できた.
期間中は夕方までは区役所前や商店街でフリーライブが,公共施設や学校では有料ライブを開催,夕方から深夜にかけては阿佐ヶ谷の各ジャズバーはもとより,飲食店や喫茶店果ては串カツ屋蕎麦屋美容室までが会場となって一斉にライブを繰り広げる.これをご覧になったあなた,来年は是非阿佐ヶ谷においであれ.毎年10月第4週の金・土曜日が阿佐ヶ谷ジャズストリートです.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/16

独断的映画感想文:悪人

日記:2010年10月某日
映画「悪人」を見る.02
2010年.監督:李相日.
出演:妻夫木聡(清水祐一),深津絵里(馬込光代),岡田将生(増尾圭吾),満島ひかり(石橋佳乃),塩見三省(佐野刑事),池内万作(久保刑事),光石研(矢島憲夫),余貴美子(清水依子),井川比佐志(清水勝治),松尾スズキ(堤下),山田キヌヲ(馬込珠代),韓英恵(谷元沙里),中村絢香(安達眞子),宮崎美子(石橋里子),永山絢斗(鶴田公紀),樹木希林(清水房江),柄本明(石橋佳男).
夜の道をぶっ飛ばす車,無表情の祐一が運転している.出会い系サイトで付き合った女とまた会いに行くのだ.
その女佳乃は同僚と飲み会をしているが,旅館の息子圭吾との付き合いを冷やかされている.
その夜,佳乃が祐一の車に乗ろうとした所にたまたま通りかかった圭吾の車,佳乃はあっさり祐一を振って圭吾の車に乗り込む.呆然とした後,猛然と圭吾の車を追う祐一.03
翌朝,祐一がいつも通り解体業の仕事に出かけた頃,佳乃の死体が発見された.
祐一は実母に捨てられ,祖父母に育てられた.今は親戚の憲夫が経営する解体工事屋に務め,祖父母の面倒を見て暮らしている.
事件から数日後,祐一のもとにかって出会い系サイトでメールのやりとりをした光代からメールが届く.光代と会って彼女を抱いた祐一は,強く彼女に惹かれていることに気付く….
思いがけぬ運命で殺人を犯した男,その男を愛した女を中心に被害者の父親,加害者の祖母ら周辺の人々が交錯するドラマ.
「誰が本当の悪人なのか」というキャッチがついていたと思うが,本当の悪人などという者はいない.いわば皆が悪人であり善人でもある.04
祐一の殺人という行為は決定的な悪ではあるが,祐一は一面で祖父母思いの善人でもある.
佳乃は美貌を武器に男から売りで稼ぎ,金持ちにはすり寄る悪人だが,被害者でありその亡霊の悲しげな顔は哀れを感じずにいられない.
被害者の父佳男・母里子は,娘をあのように育てた点では責められても仕方あるまい.祐一の祖母も同様である.
同時に悪であり善であるこれらの人々が,何故幸せになることが出来ないのか,何故運命に押し流されて不幸になっていくのか,これがこの映画のテーマであろうか.
俳優は皆熱演,妻夫木,深津,柄本,樹木は言うに及ばず,宮崎美子が良い.
岡田将生,満島ひかり両名の邪悪な演技も素晴らしい.
男女二人が最後に逃げ込んだ袋小路の灯台,その先には渺々たる海が拡がる.周りの海を「行き止まり」と考えていた祐一だが,光代の後に拡がる海は行き止まりではない海だ.
その海を見る祐一と光代の最後のシーンが印象的.06
一見の価値ある映画.★★★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


| コメント (0) | トラックバック (3)

2010/10/15

独断的映画感想文:十三人の刺客(2010)

日記:2010年10月某日
映画「十三人の刺客」を見る.20104
2010年.監督:三池崇史.
出演:役所広司(島田新左衛門(御目付七百五十石)),山田孝之(島田新六郎(新左衛門の甥)),伊勢谷友介(木賀小弥太(山の民)),沢村一樹(三橋軍次郎(御小人目付組頭)),古田新太(佐原平蔵(浪人)),高岡蒼甫(日置八十吉(御徒目付)),六角精児(大竹茂助(御徒目付)),波岡一喜(石塚利平(足軽)),石垣佑磨(樋口源内(御小人目付)),近藤公園(堀井弥八(御小人目付)),窪田正孝(小倉庄次郎(平山の門弟)),伊原剛志(平山九十郎(浪人)),松方弘樹(倉永左平太(御徒目付組頭)),吹石一恵(お艶(芸妓)/ウパシ(山の女)),谷村美月(牧野千世(采女の嫁)),斎藤工(牧野采女(靭負の息子)),阿部進之介(出口源四郎(明石藩近習)),内野聖陽(間宮図書(明石藩江戸家老)),光石研(浅川十太夫(明石藩近習頭)),岸部一徳(三州屋徳兵衛(落合宿庄屋)),平幹二朗(土井大炊頭利位(江戸幕府・老中)),松本幸四郎(牧野靭負(尾張家木曽上松陣屋詰)),稲垣吾郎(松平左兵衛督斉韶(明石藩主)),市村正親(鬼頭半兵衛(明石藩御用人千石)).20103
将軍の腹違いの弟で明石藩主松平斉韶は,好色暴虐の人物,江戸家老の間宮図書はその実情を訴え,老中土井大炊頭門前で割腹する.
ところが将軍はこれを穏便に済ますよう計らった上,次期老中に松平斉韶の名を上げる.
土井大炊頭はこれを正すべく,松平斉韶の暗殺をお目付役島田新左衛門に命令する.島田は協力者を集め木曽落合の宿に罠を設け,参勤交代途上の松平斉韶一行をこの宿に誘い込む.
かくて13人の刺客対松平斉韶一行200人の激闘が始まった….
1963年に作られた工藤栄一監督作品のリメイク版.
但し,53人だった松平斉韶一行は何と200人になった.大インフレである.
今回の作品はこの13人対200人というコンセプトがそもそも致命的であった.前回は終盤20分の死闘であったものが今回は終盤50分の激闘となった.50分間続くチャンバラというのは,既にチャンバラではない.単なる殺戮合戦であり見るに堪えない.20101
またその分前半の人物描写は時間が限られるから,登場人物の説明は不十分と思える.
城内の描写や参勤交代の遠景など,時代劇の基本的映像はきっちりしているが,とにかくこの大殺戮は受け容れがたい.他にも三池監督のグロテスクな映像にはついて行けなかった.
映画はヒットしているからこれは単なる僕の個人的感覚なのだろうが,この映画は楽しめない.
俳優では山田孝之が好演,稲垣吾郎が怪演,役所広司は期待通り.
★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (2)

2010/10/11

独断的映画感想文:21グラム

日記:2010年10月某日
映画「21グラム」を見る.21g14
2003年.監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ.
出演:ショーン・ペン(ポール),ナオミ・ワッツ(クリスティーナ),ベニチオ・デル・トロ(ジャック),メアリー(シャルロット・ゲンズブール),クローディア(クレア・デュヴァル),マリアンヌ(メリッサ・レオ).
21グラムとはある説による人の魂の重さ.人は死ぬ瞬間に21グラム軽くなるのだという.
この映画は3つの家族のある事件による交錯を描く.
大学で数学を教える教授,ポールは妻と別居していたが,病気のため余命1ヶ月との宣告を受け心臓移植のドナーを待つ身.妻のメアリーは彼の元に帰り,彼の子どもを授かりたいと医師に申し出る.
若いときから無頼の生活を送っていたジャックは,刑務所で出会った信仰に今はのめり込み,神の言葉を文字通り受け容れて懸命に働いているが,昔入れたタトゥーのため職を失う.
かっては仲間と酒とドラッグに溺れた日を送っていたクリスティーナは,今は結婚し2人の娘を得て幸せに暮らしていた.21g15
ある事件がその3つの家族を結びつけ,悲劇の渦に巻き込んでいく.
次々に現れるシーンは時間的順番が入り乱れており,観客は何が起こっているか容易には判らない.しかし全体として進行していく抗いがたい運命の様相は,観客を掴んで離さないだろう.
俳優ではショーン・ペン,ナオミ・ワッツ,ベニチオ・デル・トロがいずれも素晴らしい.
特にナオミ・ワッツは不幸な女を演じたらこれほどうまい女優はいないのではないかと思わせる.ベニチオ・デル・トロの存在感も圧倒的.ショーン・ペンは最も複雑で難しい役を演じて説得性あり.
物語は思いがけない事実が明るみに出て,一筋の希望を覗かせて終わる.一見の価値ある映画.21g16
★★★★(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

独断的映画感想文:THE 4TH KIND フォース・カインド

日記:2010年10月某日
映画「THE 4TH KIND フォース・カインド」を見る.The_4th_kind1
2009年.監督:オラントゥンデ・オスサンミ.
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ(アビゲイル・タイラー),ウィル・パットン(オーガスト保安官),イライアス・コティーズ(アベル・カンポス).
アラスカ北部の街ノームに住む心理学者,アビゲイル・タイラー博士.不眠に悩む患者のカウンセリングをすると,不思議なフクロウを目撃したという話が出てくる.
その患者に催眠療法を施すと,口では言えない恐ろしいものを見たという発言が相次ぐ.その患者の一人が銃を乱射し家族全員を射殺して自殺するという事件が起こる.
保安官はタイラー博士の催眠療法が事件の原因だとして彼女を逮捕しようとする.タイラー博士自身も,深夜突然訪れた何者かに夫を刺殺された恐ろしい経験があった.
博士は保安官の疑惑をかわしつつ,事件の真相をあくまで追及しようとする….
この映画は実話に基づくものと言う.ボーナスビデオでミラ・ジョヴォヴィッチ自身がそう断言している.
しかしそこがまさにポイントなのであって,これが事実を告発する映画ならその結末はあまりに救いがない.The_4th_kind2
見た観客は以後ただ恐怖に怯えて暮らすしかない.
一方これがそうでないなら,つまり事実に基づかないエンタテインメントであったとしたら,ボーナスビデオまで使って観客を騙そうという根性が気に入らない.
まあどちらにしろ気に入らない訳であるが,エンタテインメントなら,最後にうまく騙されたという観客への挨拶が(例えば何らかの形のハッピーエンドなど)あって然るべきだ.
あくまで事実に基づくと主張するなら,こんな救いのない恐ろしい映画で金を取るとは怪しからんと言う気分になる.
映画としては緊張感の維持された悪くない出来だと思うが,物語の救いのなさと上記のどちらつかずの展開が,後味の悪い結果となっている.
「本当の」テイラー博士として出てくる女性はもし俳優なら素晴らしい演技,その不気味で狂気を覗かせる表情が何とも言えない.俳優でないならこの人は普通じゃない.
★★☆(★5個が満点)
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/01

独断的映画感想文:トイレット

日記:2010年9月某日
映画「トイレット」を見る.5_2
2010年.監督:荻上直子.
脚本:荻上直子.フードスタイリスト:飯島奈美.
出演:アレックス・ハウス(次男レイ),タチアナ・マズラニー(長女リサ),デヴィッド・レンドル(長男モーリー),サチ・パーカー(謎の女性),もたいまさこ(ばーちゃん).
映画は葬儀のシーンから始まる.3人兄妹の母が死んだのだ.
後にはこぢんまりとした家と,猫のセンセーと,母の母である日本人のばーちゃんが残された.
ばーちゃんは英語を全く話さない.一日中部屋に籠もって窓から外を眺めて暮らしている.
ばーちゃんは朝必ずトイレを使うが,出てくると必ず深い深い溜め息をつくのが,レイには気がかりである.
母に家族の後事を託されたレイは,研究所で働くガンダムお宅.兄のモーリーは4年前からパニック障害となり,家を一歩も出ていない.妹のリサは女子大生だが,まだ本当の自分を見つけていない.
住んでいたアパートがぼやを出したため,レイも兄と妹が暮らす家に舞い戻ってきて,4人と1匹の奇妙な生活が始まるが….3
ばーちゃんとのコミュニケーションが全く成り立たない冒頭は,耐え難い緊張感がスクリーンにみなぎっている.リサがせっかくばーちゃんのためにとレイに買ってこさせたスシも,ばーちゃんの口には合わない様だ.
しかし少しずつ少しずつばーちゃんと兄妹達とのコミュニケーションが成り立ってくる.
そのきっかけを作ったのは,家族のためにと気を張って頑張っているレイではなく,奇天烈な発想とばーちゃんの力添えでパニック障害を克服し始めたモーリーだった.
リサも餃子という「お袋の味」に惹かれて,ばーちゃんと心を通わせ始める.
レイは当初はばーちゃんが果たして本当の血縁者かとまで疑っていたのだが….4_2
コミュニケーションとは何か,人と人の付き合いとは何か,家族とは何か,
この映画を見ているとそれらの問いに良い答えが出せそうな気分になってくる.この映画はそういう映画.
題名の意味とばーちゃんの溜め息の謎は,映画の最後で明らかになる.
ここに日本の生きる道があるといったら,大げさだろうか?原発を輸出したり,隣国とつばぜり合いをするよりも,こういう静かで穏やかな生き方と技術を世界に差し出すことは出来ないものか.この映画はそういう気分を醸し出す映画.全くの無言(台詞は映画の終盤にたった二言のみ)と能面の様な無表情なのに,もたいまさこの演技が見応え有り.
一見の価値有る映画.★★★★(★5個が満点)2
蛇足:当地のバス停前のベンチで,もたいまさこと当地の普通のバーチャンが並んで座っているシーンが好き.もたいまさこの脚は完全に宙に浮いている.当地のベンチはかくも巨大なベンチなのか.恐るべし.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ

| コメント (0) | トラックバック (1)

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »