独断的映画感想文:悪人
日記:2010年10月某日
映画「悪人」を見る.
2010年.監督:李相日.
出演:妻夫木聡(清水祐一),深津絵里(馬込光代),岡田将生(増尾圭吾),満島ひかり(石橋佳乃),塩見三省(佐野刑事),池内万作(久保刑事),光石研(矢島憲夫),余貴美子(清水依子),井川比佐志(清水勝治),松尾スズキ(堤下),山田キヌヲ(馬込珠代),韓英恵(谷元沙里),中村絢香(安達眞子),宮崎美子(石橋里子),永山絢斗(鶴田公紀),樹木希林(清水房江),柄本明(石橋佳男).
夜の道をぶっ飛ばす車,無表情の祐一が運転している.出会い系サイトで付き合った女とまた会いに行くのだ.
その女佳乃は同僚と飲み会をしているが,旅館の息子圭吾との付き合いを冷やかされている.
その夜,佳乃が祐一の車に乗ろうとした所にたまたま通りかかった圭吾の車,佳乃はあっさり祐一を振って圭吾の車に乗り込む.呆然とした後,猛然と圭吾の車を追う祐一.
翌朝,祐一がいつも通り解体業の仕事に出かけた頃,佳乃の死体が発見された.
祐一は実母に捨てられ,祖父母に育てられた.今は親戚の憲夫が経営する解体工事屋に務め,祖父母の面倒を見て暮らしている.
事件から数日後,祐一のもとにかって出会い系サイトでメールのやりとりをした光代からメールが届く.光代と会って彼女を抱いた祐一は,強く彼女に惹かれていることに気付く….
思いがけぬ運命で殺人を犯した男,その男を愛した女を中心に被害者の父親,加害者の祖母ら周辺の人々が交錯するドラマ.
「誰が本当の悪人なのか」というキャッチがついていたと思うが,本当の悪人などという者はいない.いわば皆が悪人であり善人でもある.
祐一の殺人という行為は決定的な悪ではあるが,祐一は一面で祖父母思いの善人でもある.
佳乃は美貌を武器に男から売りで稼ぎ,金持ちにはすり寄る悪人だが,被害者でありその亡霊の悲しげな顔は哀れを感じずにいられない.
被害者の父佳男・母里子は,娘をあのように育てた点では責められても仕方あるまい.祐一の祖母も同様である.
同時に悪であり善であるこれらの人々が,何故幸せになることが出来ないのか,何故運命に押し流されて不幸になっていくのか,これがこの映画のテーマであろうか.
俳優は皆熱演,妻夫木,深津,柄本,樹木は言うに及ばず,宮崎美子が良い.
岡田将生,満島ひかり両名の邪悪な演技も素晴らしい.
男女二人が最後に逃げ込んだ袋小路の灯台,その先には渺々たる海が拡がる.周りの海を「行き止まり」と考えていた祐一だが,光代の後に拡がる海は行き止まりではない海だ.
その海を見る祐一と光代の最後のシーンが印象的.
一見の価値ある映画.★★★★☆(★5個が満点)
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