独断的映画感想文:トイレット
日記:2010年9月某日
映画「トイレット」を見る.
2010年.監督:荻上直子.
脚本:荻上直子.フードスタイリスト:飯島奈美.
出演:アレックス・ハウス(次男レイ),タチアナ・マズラニー(長女リサ),デヴィッド・レンドル(長男モーリー),サチ・パーカー(謎の女性),もたいまさこ(ばーちゃん).
映画は葬儀のシーンから始まる.3人兄妹の母が死んだのだ.
後にはこぢんまりとした家と,猫のセンセーと,母の母である日本人のばーちゃんが残された.
ばーちゃんは英語を全く話さない.一日中部屋に籠もって窓から外を眺めて暮らしている.
ばーちゃんは朝必ずトイレを使うが,出てくると必ず深い深い溜め息をつくのが,レイには気がかりである.
母に家族の後事を託されたレイは,研究所で働くガンダムお宅.兄のモーリーは4年前からパニック障害となり,家を一歩も出ていない.妹のリサは女子大生だが,まだ本当の自分を見つけていない.
住んでいたアパートがぼやを出したため,レイも兄と妹が暮らす家に舞い戻ってきて,4人と1匹の奇妙な生活が始まるが….
ばーちゃんとのコミュニケーションが全く成り立たない冒頭は,耐え難い緊張感がスクリーンにみなぎっている.リサがせっかくばーちゃんのためにとレイに買ってこさせたスシも,ばーちゃんの口には合わない様だ.
しかし少しずつ少しずつばーちゃんと兄妹達とのコミュニケーションが成り立ってくる.
そのきっかけを作ったのは,家族のためにと気を張って頑張っているレイではなく,奇天烈な発想とばーちゃんの力添えでパニック障害を克服し始めたモーリーだった.
リサも餃子という「お袋の味」に惹かれて,ばーちゃんと心を通わせ始める.
レイは当初はばーちゃんが果たして本当の血縁者かとまで疑っていたのだが….
コミュニケーションとは何か,人と人の付き合いとは何か,家族とは何か,
この映画を見ているとそれらの問いに良い答えが出せそうな気分になってくる.この映画はそういう映画.
題名の意味とばーちゃんの溜め息の謎は,映画の最後で明らかになる.
ここに日本の生きる道があるといったら,大げさだろうか?原発を輸出したり,隣国とつばぜり合いをするよりも,こういう静かで穏やかな生き方と技術を世界に差し出すことは出来ないものか.この映画はそういう気分を醸し出す映画.全くの無言(台詞は映画の終盤にたった二言のみ)と能面の様な無表情なのに,もたいまさこの演技が見応え有り.
一見の価値有る映画.★★★★(★5個が満点)
蛇足:当地のバス停前のベンチで,もたいまさこと当地の普通のバーチャンが並んで座っているシーンが好き.もたいまさこの脚は完全に宙に浮いている.当地のベンチはかくも巨大なベンチなのか.恐るべし.
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