独断的映画感想文:赤い文化住宅の初子
日記:2010年12月某日
映画「赤い文化住宅の初子」を見る.
2007年.監督:タナダユキ.
出演:東亜優(初子),塩谷瞬(克人),佐野和真(三島),坂井真紀(田尻),桐谷美玲(山口),鈴木慶一(ラーメン屋店主),鈴木砂羽(爽子(初子の母)),諏訪太朗(藤井),江口のりこ(美咲),安藤玉恵,本多章一,伊藤幸純,佐倉萌,浅田美代子(栄子),大杉漣(初子の父).
「タカダワタル的」の監督による,貧乏純愛物語.
初子は高校中退で働く兄と共に文化住宅に住む中学生.
父は借金を残して蒸発し,母は苦労して借金を返し続けて病死した.
初子は進学校である東高を目指し,親友の秀才三島君に勉強を教わっているが,兄は彼女が中卒で働くことを望んでいる.
生活は食べることすらままならない貧しさ,担任の教師田尻は遊び好きなイケイケ女で相談には乗ってくれない.参考書も買えず次第に追い詰められる初子.
兄が職場でいざこざを起こしクビになってしまい,彼女もバイト先をクビになる.東高へは行けない,就職すると三島君に打ち明ける初子だったが,三島君は彼女の貧しさがぴんと来ないで怒ってしまう….
少女初子の極貧の生活を淡々と描く映画,起伏の少ない展開だが彼女のあり方を説得力を持って浮き彫りにする.
鈍くさいと兄からもバイト先の主人からも言われ,無表情で動きの少ない彼女だが,意志の強そうな目をしていてしっかり生きていることが伺える.
それでも兄が失職し自分の就職先もなかなか見つからない状況で,食事にも事欠くようになったとき,風俗に行くしかないのではないかという心配が彼女に迫ってくる.そういう切実さは観客にひしひしと伝わってくるだろう.
父親の最後の愚行で何もかも失った兄妹は,故郷を離れることになる.
その別れのホームで描かれるちょっぴりだけの希望.通常の貧乏映画とは,少し変わった視点でのファンタジックな希望と言えるかも知れない.
「赤毛のアン」を愛読する初子らしいエンディング.
★★★☆(★5戸が満点)
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