独断的映画感想文:ノルウェイの森
日記:2010年12月某日
映画「ノルウェイの森」を見る.
2010年.監督:トラン・アン・ユン.音楽:ジョニー・グリーンウッド.
出演:松山ケンイチ(ワタナベ),菊地凛子(直子),水原希子(緑),高良健吾(キズキ),霧島れいか(レイコ),初音映莉子(ハツミ),柄本時生(突撃隊),糸井重里(大学教授),細野晴臣(レコード店店長),高橋幸宏(阿美寮門番),玉山鉄二(永沢).
一部ネタバレがあります.
村上春樹のベストセラー小説の映画化.
原作は1年ほど前に読んだ.映画を原作と比べて議論するblogが多いが,ここではそれは(なるべく)しないつもりである.
原作と映画は別だ.映画は時間の制約もあって,小説よりかなり単純化した一つの解釈を披露せざるを得ないのは,やむを得ないことと思う.
キズキと直子,渡辺は親友として高校生活を過ごした.キズキの突然の自殺によってその関係は終わり,渡辺は一人,1969年の騒然とした東京の大学に進学する.
ある日偶然直子と再会した渡辺は,改めて直子に惹かれ,頻繁に会うようになる.
直子の20歳の誕生日に,彼女と渡辺は結ばれるが,その後直子は忽然と姿を消す.
直子は京都の郊外の療養所に入院していたのだった.
渡辺は明るく元気な緑と交際するようになるが,直子との面会の許可が下りると,京都に飛んでいき,彼女の同室患者レイ子さんとの奇妙な3人の共同生活を過ごすのだった….
昭和40年代を時代背景として,青春の愛と喪失・再生の日々を描く.
映画全体は緊張感が維持され,133分の長さを感じさせない.
何と言っても映像が美しい.風に波打つ草原を歩きながら直子が心の内を激しくぶちまける長回しのシーンは,直子の興奮の高まりと同期して観客の感情をも高めるだろう.
ジョニー・グリーンウッドの音楽(「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で素晴らしい仕事をした)が,全編に亘り良い.
風や雨の使い方も(いささか演出過剰かも知れないが) 効果的.俳優は菊地凜子が熱演,松山ケンイチが好演,水原希子は爽やかに健闘.レイ子さん役の霧島れいかは若干イメージが違ったし,直子を喪った後のレイ子さんとの一夜については,いささか違和感があった.
渡辺とレイ子さんにとって,それは直子を喪ったもの同士として,直子との決別と自らの再生を確認する静かな祝祭の一夜だったのではないかと思う.そうでなくても,この一夜に関する説明がもう少しあって然るべきだった.
しかし映画全体としては,青春時代の喪失がもたらす傷の深さを描いて,見応えがあった.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
蛇足その1:渡辺のバイト先のレコード店の壁に貼ってあった,この時代のスーパーバンドCream(E.クラプトンがギター・ヴォーカル)の解散ライブレコードのジャケットが懐かしい.
蛇足その2:レイ子さんと直子が共作して渡辺に送った毛糸ののマフラーは,この時代のガールフレンドからのプレゼントの定番.これも懐かしい.
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コメント
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投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2010/12/23 23:39
ほんやら洞さん、こんにちは^^
TB&コメントありがとうございましたm(__)m
遅くなりましたが、
新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
原作の世界観は崩さず表現されていたんですね^^
原作を読んでいないとやはりこの世界の理解は無理だったのかも(汗)
時代設定は1969年でしたか^^
何かの資料で1970年とあったんで(汗)
>毛糸ののマフラーは,この時代のガールフレンドからのプレゼントの定番.
そうでしたねぇ(笑) 身に覚えあります^^
投稿: cyaz | 2011/01/10 08:40