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2011年1月に作成された記事

2011/01/30

独断的映画感想文:パリより愛をこめて

日記:2011年1月某日
映画「パリより愛をこめて」を見る.6
2010年.原案:リュック・ベッソン.
監督: ピエール・モレル.
出演:ジョン・トラヴォルタ(チャーリー・ワックス),ジョナサン・リス・マイヤーズ(ジェームズ・リース),カシア・スムートニアック(キャロリン).
リースはチェスの名人にして頭の切れる駐仏米大使館補佐官で,かつCIAの見習いエージェント.恋人のキャロリンと婚約したばかりだ.1_2
CIAの上司から,エージェントのワックスが空港にいるから迎えてその指示に従うようにと連絡が来る.
落ち合ったワックスは型破りのいかれた男で,飯を食いに行った中華屋では,いきなり店員全員と撃ち合いになって大量のコカインを押収,痛めつけた店員が駆け込んだ後を追い,中国系の麻薬製造工場を全滅,更にその繋がりからパキスタン系の麻薬製造工場をまた全滅,と死体の山を築きながらパリを駆けめぐる.
常識あるマニュアル人間リースは混乱しながらワックスについていくのだが….
物語は麻薬摘発から大きく展開し,リースの私生活をも巻き込んで衝撃のラストへ.
始まりはコメディタッチのアクション映画と思いきや,ワックスとリーズのコンビが,シリアスなドラマも含みながら思いがけない事件解決へなだれ込む.
とにかく問答無用に撃ち殺すというワックスの荒技を受け容れる限りは,肩の凝らないアクション映画として楽しめる.2_2
3人の俳優がそれぞれに魅力的だが,殆ど科白なしでワックスの運転手を務めた俳優の,端正にして紳士的ながらめちゃくちゃな運転振りも,印象に残った.
ノンストップアクション映画として文句なし.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:サヨナライツカ

日記:2011年1月某日
映画「サヨナライツカ」を見る.1
2009年.監督:イ・ジェハン.
原作:辻仁成.出演:中山美穂(真中沓子),西島秀俊(東垣内豊),石田ゆり子(尋末光子),加藤雅也(桜田善次郎),マギー(木下恒久).
辻仁成の作品は読んだことがない.読まず嫌いだが,女優と結婚しては別れるというこの作家の印象は良くない.
というわけで余り期待しないで見たこの映画だが,その割には良かったという感じ.
航空会社に勤める豊は育ちの良く従順な女性光子と婚約中,彼女をおいてバンコクに赴任する.4
バンコクで優秀な業績を上げ絶好調の豊は,親友恒久の紹介で沓子と出会うが,彼女は突然豊のアパートを訪れ関係を迫った….
映画は,体だけの関係と割り切っていた筈の二人が思わぬ愛の深みにはまる前半と,25年後の思いがけぬ決着を描く後半とで構成される.
前半は良くある展開ではあるがそれなりに面白く,バンコクを舞台とした恋愛の進展と終局も楽しめる.
後半はどうも話が分かり難い上,西島秀俊以下の老けメークと老け演技が全く様になっていないので,興醒めであった.2
俳優の演技では,中山美穂のほとんど肉体を見せないが扇情的な濡れ場と,西島秀俊の肉体美を誇示するシーンの多用が,印象に残った.
スタイリッシュな恋愛映画という位置づけのようだが,見たこちらはそういうものと縁がないのでそれほどピンと来なかったいうことかも知れない.
★★★(★5こが満点)
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2011/01/23

独断的映画感想文:必死剣 鳥刺し

日記:2011年1月某日
映画「必死剣 鳥刺し」を見る.03
2010年.監督:平山秀幸.
出演:豊川悦司(兼見三左エ門),池脇千鶴(里尾),吉川晃司(帯屋隼人正),戸田菜穂(睦江),村上淳(右京太夫),関めぐみ(連子),山田キヌヲ(多恵),矢島健一(矢部孫千代),油井昌由樹(大場兵部),つまみ枝豆(福井),外波山文明(兼見清蔵),高橋和也(兼見伝一郎),福田転球(牧藤兵衛),木野花(はな),小日向文世(保科十内),岸部一徳(津田民部).
映画の冒頭は能舞台を見守る海坂藩主・右京太夫とその家中.
舞が終わると藩主を差し置いて真っ先に手を叩く側室・連子.やがて藩主が自室に下がる後に続く連子の前に,控えていた兼見三左エ門が立ちふさがり,一気にその胸を脇差しで貫く….
連子は藩主の寵愛を良いことに政治に口を出し,眷属の取り立てを藩主に強いて,藩政を重大な危機に陥れていた.01
命をかけてその根を絶った三左エ門だったが,その処分は減封の上閉門蟄居という,思いがけず軽いものだった.三左エ門の身の回りの世話を献身的に勤める亡妻の姪里尾のおかげで,三左エ門はこの苦境を乗り切る.
蟄居の解けた後三左エ門は家老津田の命により,藩主の近習頭取となって藩主の身近くに仕えることになる.
津田は三左エ門に,右京太夫と対立している別家の帯屋隼人之正が剣に訴えて藩主と対立したときは,三左エ門の秘剣「鳥刺し」を使ってこれに対抗するようにとの密命を下すのだった….
藤沢周平の名作の映画化.
この物語のポイントは3点あると思うのだが,その一つは武士社会の非情さ・不条理,2点目は義理の姪・里尾との絆であろう.
残る1点が,必死剣鳥刺しとは如何なる秘剣かということに他ならない.
この3点に亘って,映画は良く描けていると思う.豊川悦司,池脇千鶴の配役は充分期待に応えるものであった.
終盤の殺陣と秘剣の正体の描き方も腑に落ちるもの.死闘の中で兼見三左エ門が太刀を持ち替える動きも,その心理を反映しているようで興味深い.02
注文をつけるとすれば,側室連子の描き方がやや単純に邪悪すぎるのでは.
また,回想シーンと現在シーンの整理もうまくなかった.
もう一つ,兼見三左エ門と帯屋隼人正の対決の殺陣は,大男同士で仕方がないかも知れないが,ややばたばたして剣豪同士とは見えなかった.
秘剣鳥刺しのシーンは素晴らしく,驚愕する津田民部の表情も見事.
また最後の里尾の立ちつくす姿も印象深く,胸を打たれた.
原作の良さも加味して★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:オーケストラ!

日記:2011年1月某日
映画「オーケストラ!」を見る.3
2009年.監督:ラデュ・ミヘイレアニュ.
出演:アレクセイ・グシュコフ(アンドレイ・フィリポフ),メラニー・ロラン(アンヌ=マリー・ジャケ),フランソワ・ベルレアン(オリヴィエ・デュプレシス),ミュウ=ミュウ(ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエール),ドミトリー・ナザロフ(サシャ・グロスマン),ヴァレリー・バリノフ(イヴァン・ガヴリーロフ),アンナ・カメンコヴァ(イリーナ・フィリポヴナ),リオネル・アベランスキ(ジャン=ポール・カレル),アレクサンドル・コミサロフ(ヴィクトール・ヴィキッチ),ラムジー・ベディア(“トゥル・ノルマン”のオーナー).
ボリショイ・オーケストラのかっての指揮者フィリポフは,ブレジネフ政権時代に,ユダヤ人演奏者の共産党による排撃に反対したかどで指揮者をクビになり,以来30年間劇場の掃除夫をしている.
ある日劇団幹部の部屋を深夜掃除していると,パリのシャンテ劇場から演奏依頼のファクシミリが舞い込む.
これを千載一遇のチャンスと,フィリポフは旧共産党幹部でフランス語堪能のイヴァンを巻き込み出演契約をまとめてしまう.2
一方フィリポフは同じくクビになって他の職業に就いている旧演奏家を呼び集め,偽ボリショイ・オーケストラを編成し,旅券を偽造してパリに乗り込む.
ところが前金を握った団員はパリ市中に散りそれぞれの小商いに精を出す始末,リハーサルの会場に来たのはたった2名.リハーサルは流れ,フランスの新進ヴァイオリニスト・アンヌは呆気にとられるが….
前半はフィリポフの超真面目な取り組みとはアンバランスな,生活力ある旧団員達を巡るこってこてのコメディ.
後半,客演ソリストのアンヌ=マリー・ジャケの生い立ちと絡んで感動のラストへのお膳立てが始まるが,それでもリハーサルは流れるし,フィリポフは飲み過ぎて醜態を演じるし,楽団員は本番開始直前まで揃わないし(曲がりなりにも揃ったのが『奇跡』の第1歩).
30年ぶりにオケとして音を出すのがシャンテ劇場の本番で,というのはなんぼ「奇跡です」と言っても受け容れがたいものがある.1
とにかくあまりの無茶振りに,感動するところまでは行かなかった.
メラニー・ロラン(「イングロリアス・バスターズ」)の美貌は文句ないが,その演奏(の演技)は今ひとつ.音楽の良さで感動させる,というところまでの演奏シーンとは,残念ながら思えない.
★★★(★5個が満点)
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2011/01/04

独断的映画感想文:悲情城市

日記:2011年1月某日
映画「悲情城市」を見る.5
1989年.監督:ホウ・シャオシェン.
出演:リー・ティエンルー(林阿祿),チェン・ソンユン(林文雄),ジャック・カオ (林文良),トニー・レオン(林文清),チェン・シュウファン(美黛),ホアン・チンルー(阿雪),ケニー・チャン(阿嘉),シン・シューフェン(呉寛美),ウー・イーファン(呉寛榮),チャン・ホンジー(林先生),中村育代(小川静子),長谷川太郎(小川校長),雷鳴(上海ボス),林照雄(阿城).1_2
冒頭,1945年8月15日,昭和天皇の終戦の詔勅玉音放送が流れる中,台湾基隆の林文雄に長男が生まれる模様が描かれる.息子は光明と名付けられた.
この映画は,終戦後日本から中国に統治権が移動する台湾の1945年から1949年までを,基隆で船舶運送業を営む林家の3兄弟文雄,文明,文清と文清の親友,呉寛榮・寛美の兄妹を中心に描く.6
文清は聾唖者で,写真屋である.折しも台湾は,終戦後大陸から渡ってきた外省人と従来から台湾にいる本省人の対立が激化,本省人の闇タバコ摘発で死者が出た2.28事件をきっかけに,外省人政府による白色テロと呼ばれた本省人の殺害が吹き荒れる.その渦中で,林家の兄弟,呉家の兄妹はそれぞれ苛烈な運命をたどるが….3_2
物語は登場人物達の視点から離れず,歴史の流れはあくまで登場人物の見聞きしたことという形で説明され,基隆の彼らとその周辺の状況を淡々と描写していく.
テンポはゆったりとしていて長回しが多用されるが,その緊張感は高く,159分の長尺ながら退屈は感じない.2_2
この時代の悲劇的な状況の衝撃もさることながら,一方,文清を演じるトニー・レオンの演技はさすがに印象的.
最初に文清と寛美が登場するシーンの初々しい清新さや,終盤の家族写真のシーンの哀切さは,胸に応える.
堂々たる叙事詩.見て損は無し.7
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ラブリーボーン

日記:2010年12月某日
映画「ラブリーボーン」を見る.1
2009年.監督:ピータージャクソン.
出演:マーク・ウォールバーグ(ジャック・サーモン),レイチェル・ワイズ(アビゲイル・サーモン),スーザン・サランドン(リン),スタンリー・トゥッチ(ミスター・ハーヴィ),マイケル・インペリオリ(レン・フェナマン刑事),シアーシャ・ローナン(スージー・サーモン),ローズ・マクアイヴァー(リンジー・サーモン),クリスチャン・トーマス・アシュデイル(バックリー・サーモン),リース・リッチー(レイ),キャロリン・ダンド(ルース),ジェイク・アベル,ニッキー・スーフー,トーマス・マッカーシー,アンドリュー・ジェームズ・アレン.
14歳のサーモン家の長女スーザンはカメラ好きな少女,夢はカメラマン.
あこがれの男子生徒,レイと初めて待ち合わせの約束をした日,近所に住むハーヴィに地下室に誘い込まれ惨殺される.3
当初自分が殺されたことを知らぬまま街をさまよい家に帰るスーザン.しかし家族と話をすることも出来ず,さすらうままに現世と天国の中間から現世をかいま見る日々を過ごす.
警察の捜査は行き詰まり,父親は犯人探しに明け暮れ,母親はスーザンの死に直面できぬまま父親の行動について行けず遂に家を出る.その家族崩壊の状況をただ見守るスーザンだったが….
この映画は死者による復讐譚でもなければ,遺族による犯人捜査のミステリでもない.
死者スーザンは家族に何も働きかけることは出来ず,またそうしようともしない.彼女はただ家族が元に戻ること,犯人が明らかになることを願っているだけの様だ.
そしてもう一つの願いが彼女にはあって,それはレイとデートしてキスをすること.そのスーザンと現世の家族の状況を映画は併行して描いていく.
映画はある結実を迎えるが,その結果が観客にカタルシスを与えるかどうかは微妙なところ,肩すかしとも思える本筋の流れに不満を感じる人も恐らくいるだろう.2
しかしそれよりこの映画は,14歳という思春期のさなかに殺され天国への途上のスーザンを演じる,シアーシャ・ローナンの清楚な美しさを見る映画というべきか.
その美しさは写真を見ていただければおわかりの通り.
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