独断的映画感想文:必死剣 鳥刺し
日記:2011年1月某日
映画「必死剣 鳥刺し」を見る.
2010年.監督:平山秀幸.
出演:豊川悦司(兼見三左エ門),池脇千鶴(里尾),吉川晃司(帯屋隼人正),戸田菜穂(睦江),村上淳(右京太夫),関めぐみ(連子),山田キヌヲ(多恵),矢島健一(矢部孫千代),油井昌由樹(大場兵部),つまみ枝豆(福井),外波山文明(兼見清蔵),高橋和也(兼見伝一郎),福田転球(牧藤兵衛),木野花(はな),小日向文世(保科十内),岸部一徳(津田民部).
映画の冒頭は能舞台を見守る海坂藩主・右京太夫とその家中.
舞が終わると藩主を差し置いて真っ先に手を叩く側室・連子.やがて藩主が自室に下がる後に続く連子の前に,控えていた兼見三左エ門が立ちふさがり,一気にその胸を脇差しで貫く….
連子は藩主の寵愛を良いことに政治に口を出し,眷属の取り立てを藩主に強いて,藩政を重大な危機に陥れていた.
命をかけてその根を絶った三左エ門だったが,その処分は減封の上閉門蟄居という,思いがけず軽いものだった.三左エ門の身の回りの世話を献身的に勤める亡妻の姪里尾のおかげで,三左エ門はこの苦境を乗り切る.
蟄居の解けた後三左エ門は家老津田の命により,藩主の近習頭取となって藩主の身近くに仕えることになる.
津田は三左エ門に,右京太夫と対立している別家の帯屋隼人之正が剣に訴えて藩主と対立したときは,三左エ門の秘剣「鳥刺し」を使ってこれに対抗するようにとの密命を下すのだった….
藤沢周平の名作の映画化.
この物語のポイントは3点あると思うのだが,その一つは武士社会の非情さ・不条理,2点目は義理の姪・里尾との絆であろう.
残る1点が,必死剣鳥刺しとは如何なる秘剣かということに他ならない.
この3点に亘って,映画は良く描けていると思う.豊川悦司,池脇千鶴の配役は充分期待に応えるものであった.
終盤の殺陣と秘剣の正体の描き方も腑に落ちるもの.死闘の中で兼見三左エ門が太刀を持ち替える動きも,その心理を反映しているようで興味深い.
注文をつけるとすれば,側室連子の描き方がやや単純に邪悪すぎるのでは.
また,回想シーンと現在シーンの整理もうまくなかった.
もう一つ,兼見三左エ門と帯屋隼人正の対決の殺陣は,大男同士で仕方がないかも知れないが,ややばたばたして剣豪同士とは見えなかった.
秘剣鳥刺しのシーンは素晴らしく,驚愕する津田民部の表情も見事.
また最後の里尾の立ちつくす姿も印象深く,胸を打たれた.
原作の良さも加味して★★★★(★5個が満点)
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