« 独断的映画感想文:パリより愛をこめて | トップページ | 独断的映画感想文:パーフェクト・ゲッタウェイ »

2011/02/06

独断的著作感想文:パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

日記:2011年2月某日
黒岩久子の著作「パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い」を読了.
日本の社会主義運動の先頭に立った堺利彦の,特に1910年から1919年までの「冬の時代」における売文社の戦いとその周辺の人々を描く.
堺は幸徳秋水,大杉栄等と同じ社会主義運動の最前線を歩みながら,幸運にも大逆事件や関東大震災での甘粕大尉による惨殺をくぐり抜け,労農派として東京市会議員への当選も果たす.
それは何と言っても堺の明るく楽天的な性格と,文筆家としての優れた才能が市民にも愛されていたためであろう.
文筆家としてはジャック・ロンドンの「野生の呼び声」をベストセラーとして持ち,漱石,荷風等とも親交があった.特に有島武郎とは生涯の友であった.幸徳秋水が購入し,堺が所持して有島武郎に贈呈した「資本論」が,その遺品として日本近代文学館にあるそうな.
また売文社という現代の編集プロダクションの草分けともいうべきビジネスを立派に成立させていたのも,堺独特の力ということが出来る.
これらの消息を描き同時にその当時の社会を描く筆者・黒岩久子の力に脱帽,この分厚いハードカバーを一気に読んだ.
後書きを書いた4ヶ月後の昨年11月に永眠しているのは,誠に残念である.
僕は高校生の時,友人に誘われて参加した新左翼系の集会で,文中出てくる荒畑寒村の演説を聴いている.
当時,米空母エンタープライズの佐世保寄港阻止闘争の高揚で,会場は満員,熱気に溢れていた.聴衆は会場に入りきれず,舞台の上にまで詰めかけた.
荒畑寒村の演説は,大意以下のようであった.
若い共産主義者の諸君は,小麦粉に仕込まれるイースト菌がパンを作るように,大衆の中に入っていき,革命を作るべきである.
但し,腐った小麦粉(当時の日本社会党・日本共産党のことである)にイースト菌を仕込んでもそれは絶対にパンにはならないから,諸君は宜しく腐った小麦粉を排除しなければならない.
その演説は,当時の僕の心に深く印象づけられた.感動した.アジテーションというものを60年やってきた寒村氏の面目躍如と言うべきであろう.
当時僕は高校生,寒村さんは78歳頃と思われる.
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ


« 独断的映画感想文:パリより愛をこめて | トップページ | 独断的映画感想文:パーフェクト・ゲッタウェイ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/46943/50787166

この記事へのトラックバック一覧です: 独断的著作感想文:パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い:

» 『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)を読まれたし! [サーカスな日々]
みなさん今回は、まずみなさんにぜひお読みいただきたい本を案内したい。『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)だ。前作の『古書の森 逍遥/明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』(工作舎)では、彼女の「古書の森日記/古本中毒症患者の身辺雑記... [続きを読む]

受信: 2011/02/06 02:37

« 独断的映画感想文:パリより愛をこめて | トップページ | 独断的映画感想文:パーフェクト・ゲッタウェイ »