独断的映画感想文:月に囚われた男
日記:2011年2月某日
映画「月に囚われた男」を見る.
2009年.イギリス.監督:ダンカン・ジョーンズ.
音楽:クリント・マンセル.
出演:サム・ロックウェル(サム・ベル),ドミニク・マケリゴット(テス・ベル),カヤ・スコデラーリオ(イヴ),声の出演:ケヴィン・スペイシー(ガーティ).
エネルギー枯渇に直面した人類は,月の裏側に新エネルギーHe3を発見,この鉱石を採掘して地球に送るルナ産業株式会社は,システムを管理する駐在員を月面基地に送ることになった.
会社と契約したサム・ベルは,たった一人で3年間,人工知能ロボットのがーティを相手に基地で業務に従事する.
月の裏側にある基地の通信アンテナは故障し,地球とはライブの通信を取ることが出来ない.サムは時折木星経由で送られてくる,妻と娘のビデオレターを見ては寂しさを紛らわせた.
その勤務があと2週間で終わるという頃,サムは採掘マシンとの作業中幻覚を見て,マシンに月面車両を激突させ意識を失う.気がつくと基地内のベッドでガーティの手当を受けていた.
やがて歩けるようになったサムは,ある夜不思議な夢を見た.目覚めたサムはガーティの止めるのも聞かず,月面車両で事故現場に向かう.
事故現場にそのまま放置してある月面車両の中には,宇宙服を着たサム自身が横たわっていた….
オーソドックスにして明快なSFミステリ.今やこういうSFは古典的と言われるのかも知れない.
しかしながら,あらゆる障害・困難と戦って地球への帰還を追及するサムの望郷の念は,観客の胸を打つ.
だが,明らかになった謎はあまりに苦く衝撃的だった.
月の表側まで出てきて,遠く地球を望みながら通信を試みるサムのシーンは,哀切きわまりない.
物語の中では,ガーティの存在が魅力的である.封印された謎にアクセスしようと試みるサムをじっと監視していたガーティが,何も言わずにマジックハンドを伸ばして,教えてはならないはずのパスワードを入力してくれるシーンは印象的.
映画全体を彩るクリント・マンセルのリリカルなピアノも素晴らしい.
SFを堪能できる,映画らしい映画.但し邦題はネタばらしに近い.原題は「Moon」
★★★★(★5個が満点)
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