独断的映画感想文:わが心の歌舞伎座
日記:2011年2月某日
映画「わが心の歌舞伎座」を見る.
2010年.監督:十河壯吉.音楽:土井淳.
出演:市川團十郎,尾上菊五郎,片岡仁左衛門,坂田藤十郎,中村勘三郎,中村吉右衛門,中村芝翫,中村富十郎,中村梅玉,坂東玉三郎,松本幸四郎,市川猿之助(舞台映像),中村雀右衛門(舞台映像).
歌舞伎座さよなら公演1年の記録を中心に,楽屋や舞台裏の状況,裏方さんの紹介はじめ,歌舞伎を育んできた歌舞伎座という劇場を様々な面から描いたドキュメント.
画面にまず登場するのは,中村芝翫.藤娘等の名場面を見せる.
続いて中村吉右衛門が熊谷陣屋等を演じる.
ベテランの名演が,僅かなシーンの中でこちらの胸を熱くさせるのは驚くべきことだ.吉右衛門が花道で,「16年は一昔」と嗚咽と共にふり絞るように語ると,反射的に涙が出る.
続いて團十郎,玉三郎,富十郎,勘三郎がそれぞれインタビューを交えて得意の場面を演じ,その合間に裏方さんの活躍が描かれて,前半の終了.
ここで休憩が入る.
後半は幸四郎,梅玉,仁左衛門,藤十郎,菊五郎がまたインタビューと名場面を重ねるほか,猿之助,雀右衛門や歌右衛門,延若,初代吉右衛門,5代目・6代目菊五郎等が映像で紹介される.
現代を代表する歌舞伎役者達のそれぞれの魅力が,最も得意とする芝居の名シーンで語られることの心地よさが何とも言えない.
という訳で長尺167分の映画だが,全ての俳優が如何に歌舞伎座を愛してきたか,また歌舞伎座という劇場がそのスタッフも含め,如何に俳優を育ててきたかが,その映像から良く判るのが良い.土井淳の音楽も素晴らしい.
長年馴染んできた歌舞伎座という劇場自身の魅力も改めて印象づけられ,感慨深いものがあった.そういえば,遂に歌舞伎座の1階席には行かず仕舞いだったっけ.
一見の価値ある映画.★★★★(★5個が満点)
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