番外:独断的歌舞伎感想文:2011年新橋演舞場3月大歌舞伎(夜の部)
日記:2011年3月某日(震災後)
新橋演舞場 3月大歌舞伎を見る.
「源氏物語 浮舟(うきふね) 第一幕 二条院の庭苑.第二幕 宇治の山荘.第三幕 二条院の庭苑.第四幕 宇治の山荘 浮舟の寝所.第五幕 宇治の山荘 宇治川のほとり」.
出演:匂宮(吉右衛門),薫大将(染五郎),浮舟(菊之助),侍従(尾上右近),右近(萬次郎),中の君(芝 雀),弁の尼(東 蔵),中将(魁 春),時方(菊五郎).
源氏物語は北條秀司作.原作とは随分雰囲気の違う話で,特に薫大将が浮舟の処女性を問題にしていたとするのはこの時代にそぐわない感じがする.科白が現代劇なのも宝塚みたいで取っつきにくい.匂宮はあまりに軽薄な色好みに見え,薫はあまりにも己の考えに凝り固まった石垣直角に見える.浮舟は必ずしも母・中将の好色性をひいているとまでは見えず,周囲の人が語る像と本人像が違う様だ.
役名「侍従」を右近が務め,役名「右近」を萬次郎が勤めているのがややこしい.
「水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ) 筆屋幸兵衛 浄瑠璃「風狂川辺の芽柳」」.
出演:船津幸兵衛(幸四郎),萩原妻おむら(魁 春),車夫三五郎(松 緑),差配人与兵衛(錦 吾),代言人茂栗安蔵(権十郎),巡査民尾保守(友右衛門),金貸因業金兵衛(彦三郎).
筆屋幸兵衛は貧乏たらしい長屋の描写が長すぎて気分的に落ち込むが,追い詰められいざ一家心中の決意後の,幸兵衛狂乱にいたる緊張感の増していく有様はさすが幸四郎という感じ,身投げのため赤子を抱え花道を駈け出していく姿には思わず息をのむ.大団円はとってつけた様なもので話にならないが,この芝居は狂乱の場の迫力で充分見応えあり.「京乱噂鉤爪」で無言の人形花がたみを演じた中村梅丸が盲目の娘おゆきを演じて美形だが,科白は今ひとつ(今声変わりですかね).
「六世中村歌右衛門十年祭追善狂言 吉原雀(よしわらすずめ)」.
出演:鳥売りの男(梅 玉),鳥売りの女(福 助).
最後の吉原雀は,梅玉・福助の踊りが見事で,あたかも対位法の音楽を見ている様な舞踊が素晴らしい.自分には踊りのことは何も判らないが,うっとりと最後まで楽しんだ.
人気ブログランキングへ
コメント