独断的映画感想文:リバー・ランズ・スルー・イット
日記:2011年5月某日
映画「リバー・ランズ・スルー・イット」を見る.
1992年.監督:ロバート・レッドフォード.
出演:ブラッド・ピット(ポール・マクリーン),クレイグ・シェイファー(ノーマン・マクリーン),トム・スケリット(マクリーン牧師),ブレンダ・ブレシン(マクリーン夫人),エミリー・ロイド(ジェシー・バーンズ),スティーヴン・シェレン(ニール・バーンズ),ニコール・バーデット(メイベル),ヴァン・グラヴェイジ(若き日のポール),ジョセフ・ゴードン=レヴィット(若き日のノーマン).
映画の冒頭,黄昏の川で一人,フライフィッシングに興じる老人.
その擬似餌を糸につける年老いた手が印象的だ.この映画の原作はシカゴ大学教授ノーマン・マクリーンの自伝的小説である.
教会牧師の父と優しい母のもと,真面目で詩の好きなノーマンと,奔放で明るいポールの兄弟は,父から教えられたフライフィッシングを愛して共に成長する.
やがて成人したノーマンは,ダートマス大学に6年遊学した後帰郷,いくつかの大学に職を求める.ポールは地元の大学を出て新聞記者となり,街に暮らす.
物語はノーマンが帰郷して就職が決まるまでの夏の日々を中心に,マクリーンの家族を描く.
この映画の魅力は,独断的に言えば3つある.
1はモンタナの美しさの描写であろう.物語の中心舞台となるその川の流れ,せせらぎの音の美しさはどうだろう.あるいは川霧に煙る山々のたたずまい,あるいは夕陽に輝く山並みにかかる雲.淡々と進む物語の主人公はまるでこのモンタナの自然の様だ.
2はフライフィッシングの妙技である.川面を自在に飛び巡る擬似餌をつけた糸,しなる竿,それはまるで擬似餌や竿を用いた故郷の川との対話の様だ.
3はそのフライフィッシングを絆として固く結ばれた兄弟.
真面目で不器用な兄がしかし挫折しながらも人生の成功を着実に勝ち取っていくのに対し,奔放な弟は,その溢れる才気,神業と思えるフライフィッシングの腕にもかかわらず,自ら運命の渦に身を投じていく,それを兄といえど止めることが出来ない.
この対比が映画の軸となっている.
俳優では,まだ20代のブラッド・ピットが,少年の面影を残したポールを好演,ノーマンを演じるクレイグ・シェイファーも安定の演技.
エピローグで再び老人として川釣りをするノーマンの映像に,観客は深い印象を覚えるであろう.
映画の虜となる至福の124分.必見の作品.
★★★★☆(★5個が満点)
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