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2011年7月に作成された記事

2011/07/25

独断的映画感想文:最後の忠臣蔵

日記:2011年7月某日
映画「最後の忠臣蔵」を見る.3_2
2010年.監督: 杉田成道.
出演:役所広司(瀬尾孫左衛門),佐藤浩市(寺坂吉右衛門),桜庭ななみ(可音),山本耕史(茶屋修一郎),風吹ジュン(きわ),田中邦衛(奥野将監),伊武雅刀(進藤長保),笈田ヨシ(茶屋四郎次郎),安田成美(ゆう),片岡仁左衛門(大石内蔵助(特別出演)),柴俊夫,佐川満男.
忠臣蔵の討ち入りなった後,寺坂吉右衛門は大石内蔵助に呼ばれ,義士の遺族に討ち入りの事実を伝え遺金を配れとの使命を言い渡される.
16年後にその使命を終えた吉右衛門は,京の街で旧友の姿を見かける.その男は,討ち入り前夜に忽然と姿を消した内蔵助の家士・瀬尾孫左衛門だった.
その孫左右衛門が仕えている少女可音は,大石内蔵助に育てることを命じられた内蔵助の隠し子だった….1_2
共に密命を受け名誉の切腹を遂げられなかった親友2人の忠臣蔵後日談である.
男手一つで育てた可音が嫁ぐまでの二人の絆と主従を越えた心の結びつき,可音を見初めた豪商茶屋四郎次郎の息子との縁談を慎重に進める孫左右衛門の懸命の働き,遂に嫁ぐ日の別れのシーンと思いがけない赤穂旧藩士達の行動.
映画はこういう経過を,寺坂吉右衛門との微妙な距離感のある交流を織り込みながら描いていく.
京都の四季の美しさも含め,その映像は素晴らしい.
役所広司,佐藤浩市は期待通りの演技だが,可音役の桜庭ななみが素晴らしい.
家来であるが父代わりでもある孫左右衛門に,大事に大事に育てられた姫である可音を見事に演じている.けなげで可愛らしく,かつ誇り高い可音に涙を禁じ得ない.
この映画はシルバー世代のお父さんにターゲットを絞っているに違いない.
そういえば最後のシーンは辛いシーンではあったが,これはワーナー資本の差し金で,これ無しには済まないということであろう.4
それにしても武士の世界というのは厳しいもの,大石内蔵助の指示の酷さには心が痛む(片岡仁左衛門には怨みはないが).
★★★★(★5個が満点)
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番外・独断的歌舞伎感想文:新橋演舞場7月大歌舞伎(昼の部)

日記:2011年7月某日
新橋演舞場で7月大歌舞伎(昼の部)を見る.Shinbashi201107b
「一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前」
出演:佐藤忠信実は源九郎狐(右 近),静御前(笑 也),武蔵坊弁慶(猿 弥),源義経(門之助).
初めて見る「鳥居前」,筋書きを追っているうちに終わってしまった.
弁慶や義経が,この後の勧進帳と違いすぎて今いちしっくり来なかったし,狐忠信も前月に見た河連法眼館の場のそれとは違いすぎて別の芝居の様.この一幕が持つ意味というものを,そもそも勉強しなければ.
「二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)」
出演:武蔵坊弁慶(團十郎),富樫左衛門(海老蔵),亀井六郎(友右衛門),片岡八郎(権十郎),駿河次郎(松 江),常陸坊海尊(市 蔵),源義経(梅 玉).
待ってましたと声がかかる海老蔵の富樫であるが,まだ弁慶をやる力はないのだろうか.眼力も従来の力は感じられない.
團十郎の弁慶と併せて,退屈で覇気の感じられない舞台,昏々と眠ってしまった.勧進帳で寝たのは初めてである.
「三、楊貴妃(ようきひ)」
出演:楊貴妃(福 助),高力士(海老蔵),天真の従兄のちの楊国忠(権十郎),一の姉のちの韓国夫人(笑三郎),二の姉のちの虢国夫人(春 猿),三の姉のちの秦国夫人(芝のぶ),女道士(歌 江),竜武将軍陳元礼(猿 弥),李白(東 蔵),玄宗皇帝(梅 玉).
今の海老蔵としては,宦官役のこの芝居の方がしっくり来てしまうのは何ということだろう.
大佛次郎作の新歌舞伎で台詞劇だが,これも筋を追ううちに終わってしまった.
楊貴妃の福助が末の妹で芝のぶの方が姉というのは,受け容れ難い.
まあ芝のぶはいずれにしろ楊貴妃をやらせてはもらえないか.
本日の舞台は特に感動するものは無し.夏ばての眠気が吹き飛ばないまま終わってしまった感あり,残念.
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独断的映画感想文:ロビン・フッド

日記:2011年7月某日
映画「ロビン・フッド」を見る.3
2010年.監督:リドリー・スコット.
出演:ラッセル・クロウ(ロビン・ロングストライド),ケイト・ブランシェット(マリアン),マーク・ストロング(ゴドフリー),ウィリアム・ハート(ウィリアム・マーシャル),マーク・アディ(クック修道士),オスカー・アイザック(ジョン王),ダニー・ヒューストン(獅子心王リチャード1世),アイリーン・アトキンス(アリエノール・ダキテーヌ),ケヴィン・デュランド(リトル・ジョン),スコット・グライムズ(ウィル・スカーレット),アラン・ドイル(アラン・ア・デイル),レア・セドゥー(イザベラ),マックス・フォン・シドー(サー・ウォルター・ロクスリー).
11世紀末,十字軍遠征からの帰途,獅子心王リチャード率いるイングランド軍はフランスの城塞を攻撃.ところがリチャードは狙撃を受けて落命,軍中にいた弓の名手ロビン・ロングストライドは,リトル・ジョン等の仲間と共に軍を離れ帰国を目指す.
その途上,フランス王の密命を受けたゴドフリー等に襲われ瀕死のロバート・ロクスリーを救い,彼からリチャード王の王冠とロバートの父の剣を託される.
ロバートとして王冠をリチャードの母に返したロビン等は,ノッティンガムのロバートの父ウォルター卿の領地を訪ねる.そこには盲目のウォルター卿とロバートの美しい未亡人マリアンが暮らしていた.
跡継ぎ不在で領地が没収されるのを恐れ,ウォルター卿はロビンにそのままロバートとしてその地に留まる様求める.落ち着いた生活を始めようとするロビン,しかし今は後継者ジョン王の宰相となったゴドフリーの手が,ロビンの周辺に迫っていた….2
シャーウッドの森の無法者ロビン・フッドの前史と言うべき物語(前史にしてはロビンとマリアンが年取りすぎという気もするが).
ロビンが暮らしたイギリスがどういう社会だったのか,「ノッティンガムの長官」という存在がどういうものだったのか,それなりに判ってくる.イギリス史の一般知識があればもっと楽しめたかも知れない.
この映画の見所はラッセル・クロウ,ケイト・ブランシェット,マックス・フォン・シドーの3人の演技を堪能できること.
マックス・フォン・シドーはシャッターアイランド以来だが,やはり素晴らしい存在感.
弓の名手ロビンとその仲間が大活躍する森での闘いやフランス王との戦闘シーンも,さすがに見応えがある.
ところでこの映画にはロビンの父親がどういう人だったかを巡るエピソードもあるのだが,これは全く必要を感じない.
このエピソードに関連して,ロビン達が如何に圧政に抗して自由を求めて戦っているかというテーマが演出されるが,アメリカ映画がこういうテーマを掲げるといっぺんに物語がうさんくさくなる.
くそCIAやくそFBIがスポンサーじゃあるまいし(失礼).1
これで減点となって点数は★★★☆(★5個が満点)
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2011/07/23

独断的映画感想文:鬼火(追悼:原田芳雄)

日記:2003年7月某日
映画「鬼火」を見る.(ネタバレです)3
1996年.監督:望月六郎.
原田芳雄,片岡礼子,哀川翔,北村一輝,奥田英二.
出所した殺し屋原田はム所仲間哀川の縁で奥田の運転手をする.
クラブでピアノを弾いていた片岡と付き合い始めるが,片岡はかって性の奴隷として弄ばれ,今はそれをネタにゆすられている男を殺したいと原田の協力を求める.
結局片岡はその男を殺しきれず,ネタの写真ごと男の車に火を放つが,男は弟の組長を通じて原田に復讐を仕掛けてくる.1
この動きの周りで繰り広げられるやくざ同士の争いと裏切り.
原田を利用していただけとも見えた哀川が,結局原田のために奥田と対決し,原田も片岡と哀川のために男と弟を射殺するにいたる.
最終局面,逮捕されれば二度と娑婆には戻れない殺しの直前に,原田が片岡にピアノ演奏をせがみ,二人でプールで泳ぐシーンの美しさ,哀しさ.
出会い頭に標的の兄弟をものも言わず撃ち倒す原田の迫力.
緊張に満ちたカメラと美しい音楽も印象的である.原田芳雄の存在感,片岡礼子の美しさが際だつ,望月監督の佳作.2
★★★★(★5個が満点)
(2003年7月に書いた感想です.原田芳雄氏のご冥福をお祈りいたします)
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2011/07/10

独断的映画感想文:酔いがさめたら、うちに帰ろう。

日記:2011年7月9日(土)
映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」を見る.3_2
2010年.監督:東陽一.
出演:浅野忠信(塚原安行),永作博美(園田由紀),市川実日子(湊麻美),利重剛(三笠クリニック院長),藤岡洋介(園田宏),森くれあ(園田かおる),高田聖子(衣田医師(精神科医)),柊瑠美(猪瀬看護師(アルコール病棟)),甲本雅裕(山田医師(内科医)),渡辺真起子(美人(精神科 患者)),堀部圭亮(若い男(精神科 患者)),西尾まり(石山看護師(精神科)),大久保鷹(松本(アルコール病棟 患者)),滝藤賢一(大川(アルコール病棟 患者)),志賀廣太郎(伊藤(アルコール病棟 患者)),北見敏之(坂井(アルコール病棟 患者)),螢雪次朗(吉田(アルコール病棟 患者)),光石研(鬼頭(アルコール病棟 患者)),香山美子(塚原弘子),西原理恵子.
漫画家西原理恵子の元夫君,戦場カメラマン・故鴨志田穣による同名の自伝的小説の映画化.
酒を止めようと思いつつ今夜も大量に飲み続ける塚原は,何度目かの吐血で救急搬送され入院.酒が原因で別れた妻由紀と母親の看護を受け,今回は断酒治療を決意する.
ところが通院での断酒治療が始まったその日に酒を飲んでまた倒れ,精神病棟に直行,入院治療を受けることになる.4
様々な患者と付き合ううち落ち着きを取り戻した塚原は,家族との面会を楽しみにしつつ治療に努めるが….
塚原のアルコール依存症の惨状とその治療が淡々と描かれる.
主演の二人の俳優の力量を味わいつつ子役の可愛さにほだされつつ映画を楽しんでいくと,中盤で観客は塚原と共に思いがけない現実を突きつけられ,胸を打たれる.
アルコール依存症のむごさに,改めてここで気がつくのである.
それまでの過程で塚原の立場にほぼ寄り添ってきた観客は,その現実に涙を流さずにはいられない.改めて気付く人生の美しさ,家族の大切さ.
川で水と戯れる塚原が,橋から見下ろす由紀に気付いて視線を交わすシーンは,極めて印象的である.
俳優は浅野・永作が共に良い.2
子役の二人も素敵.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:SUPER 8/スーパーエイト

日記:2011年7月某日
映画「SUPER 8/スーパーエイト」を見る.1
2011年.監督:J・J・エイブラムス.製作:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:ジョエル・コートニー(ジョー・ラム),エル・ファニング(アリス),カイル・チャンドラー(ジャクソン・ラム),ライリー・グリフィス(チャールズ),ライアン・リー(ケイリー),ガブリエル・バッソ(マーティン),ザック・ミルズ(プレストン),ロン・エルダード(ルイス),ノア・エメリッヒ(ネレク大佐),ジェシカ・タック,ジョエル・マッキノン・ミラー,グリン・ターマン(ウッドワード).
鉄工所の事故で突然母を失ったジョー,父のラムは保安官代理として多忙な日々を過ごす.
ジョーはプラモデル製作が趣味,学校の仲間と自主制作中のゾンビ映画では,メイクや血糊等の効果を担当している.5
彼らは女優にアリスを誘うが,アリスの父はジョーの父と折り合いが悪かった.しかしアリスは承諾し,深夜のロケを鉄道の駅で行うことになる.
ところがアリスの熱演で順調に進んでいた撮影のさなか,貨物列車が一台のトラックと接触して脱線転覆の大事故となる.
重傷を負ったトラックの運転手は何と高校の生物の教師ウッドワードで,彼は少年達に「今見たことを決して誰にも言ってはいけない.そうしなければ君達と、君達の親も殺される」と言い残す.
現場には何故か軍の車両が殺到し,彼らは慌てて現場を後にするが,軍はそのまま辺りを封鎖し地元保安官さえ立ち入らせない.
それ以来街では,犬の行方不明,人の行方不明,物品の紛失やコンビニの襲撃等,異常事態が続出する上,軍が街を支配する状況が続く….
この映画の舞台は1979年のオハイオ州,TVでスリーマイル島(ペンシルベニア州)原発事故の報道が流れている.
物語の遠因は1950年代に遡る軍の秘密作戦という設定である.
この映画の楽しさは,この時代のアメリカの少年達の自由な行動力による冒険物語,ということに尽きるだろう.それは製作のスピルバーグの成長した世界そのものでもある.
少年少女の勇気と友情,果敢な挑戦の中での成長,悲劇の克服とほのかな恋愛.まあ良くも悪くも如何にもスピルバーグですね.3
正直言ってこういう少年達を主人公にした大人の映画を作れるアメリカ社会は,ある意味うらやましい.日本でもこういう映画が作られないかしら.
ところでエンドロールの大半を費やして小窓で上映される,彼らの作ったゾンビ映画もなかなか素敵.こんな短編なのにちゃんとどんでん返しがあるんですね.
最後にかかるロックの名曲「マイ・シャローナ」も懐かしかった.
★★★☆(★5個が満点)
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2011/07/06

独断的映画感想文:白いリボン

日記:2011年7月某日
映画「白いリボン」を見る.1
2009年.監督:ミヒャエル・ハネケ.
出演:クリスティアン・フリーデル, レオニー・ベネシュ,ウルリッヒ・トゥクール,フィオン・ムーテルト,ミヒャエル・クランツ,ブルクハルト・クラウスナー,ライナー・ボック,スザンヌ・ロタール,ウルシーナ・ラルディ,シュテッフィ・クーネルト,ヨーゼフ・ビアビヒラー,ブランコ・サマロフスキー.
2009年のカンヌ国際映画祭ではみごと最高賞のパルム・ドールを受賞したという作品.
1913年の北ドイツ.はじまりはドクターの落馬事故だった.
小作人の転落死,男爵家の火事,荒らされたキャベツ畑,子供の失踪.それぞれの事件が,徐々に村の空気を変えていく.誰の仕業なのか,皆が不信感を募らせる.そして村人たちの素の顔が,次第に浮き彫りになっていく.
敬虔な村に潜む,悪意,暴力,欺瞞(ぎまん)の連鎖.少年の腕に巻かれた白いリボンは,「純真で無垢な心」を守れるのだろうか・・・(公式サイトより).2
村で次々に起こる事故のさなか,牧師の家では長女と長男の帰宅が遅れたことが叱責され,二人のために全員が夕食を抜き,更に翌日のむち打ちが予告される.
純真無垢な幼年時代を思い出すため白いリボンを袖に巻く二人.
しかし更に男爵家の息子が暴行され,看護婦の子供で障害のある少年も暴行を受ける.
厳しいしつけと裏腹にその村を集団で横行する少年少女達.
時代は第1次大戦勃発の前夜,何とも言えない不安と重苦しさの中,人々が次第にその本性を露わにしていく過程が恐ろしい.何が悪いのか,誰が犯人か,いずれも明示されないまま,重苦しさだけが進行していく中,サラエボでオーストリア皇太子が暗殺された知らせが伝わる.
最後のシーン,教会の賢信礼で歌われる賛美歌「神はわがやぐら」の美しさが印象的だった.5
緊張感に満ちた映画らしい映画,しかし僕は生理的にこの映画は好きになれないし,得たものは何もない.この時代のドイツ社会というものも,理解し難かった.
この監督の「ピアニスト」も優れた映画と言われたが,どうしてこれほど嫌なことが描けるのかと,僕には到底受け容れ難い映画だった.
残念ながらハネケ監督は僕との相性は悪いらしい.
今度はもっと楽しい映画を見よう.
★★★(★5個が満点)
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