番外:独断的歌舞伎感想文:新橋演舞場8月花形歌舞伎第1部・第2部
日記:2011年8月某日
新橋演舞場へ.8月花形歌舞伎第1部を見る.
演し物は「一、花魁草(おいらんそう)」.
出演:お蝶(福 助),幸太郎(獅 童),米之助(勘太郎),客孝吉(亀 蔵),お糸(新 悟),小料理屋女房(歌 江),五兵衛(市 蔵),お八重(高麗蔵),勘左衛門(彌十郎),お栄(扇 雀).
北条秀司の作品で,新派でも上演されている.
震災で江戸から逃げる途中連れとなったお蝶・幸太郎は,共に米之助に救われその離れで厄介になる.女郎だったお蝶と大部屋の役者だった幸太郎,同居生活の中でお互いに好きになるが,お蝶は女郎だった身を恥じて深い仲とはならない.
だるま作りで生計を立てていた幸太郎だが,江戸の芝居小屋を再建し,日光詣でに来た座元に見出され,舞台に戻らないかと誘われるが….
訳ありの,女郎上がりの女お蝶を演じる福助がぴったり.
田舎の温厚な親父を演じる勘太郎が,父に似た口跡で人情味たっぷりな芝居,そのおかみさんを演じた芝のぶが,先月の楊貴妃の姉とがらりと変わった役どころで良かった.
最後の場での舞台の構成が素晴らしい.
震災と復興を背景とした悲恋の物語で,心に残る.
「二、伊達娘恋緋鹿子 櫓のお七(やぐらのおしち)」
出演:八百屋お七(七之助).
宝剣の紛失の咎で死に瀕している恋人吉三郎のもとに剣を届けるべく,町木戸を開けるため,御法度の火の見櫓上の太鼓うちを行う八百屋お七の物語.
人形振りで七之助が舞う.七之助の硬質な美貌が人形振りに良く合っている.
途中で衣装の引き抜きもあり,霏々と降る雪の中にも華やかな舞台である.
5年前の5月に見た,「松竹梅湯島掛額」の第2幕がこの同じ「櫓のお七」で,同じ人形振りを亀治郎で見たのが強く印象に残っている.
亀治郎のは情念のお七,七之助のは可憐なお七という感じ.
続いて8月花形歌舞伎第2部を見る.
演し物は,「一、新作歌舞伎 東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)」
出演:藤川新左衛門(橋之助),関口多膳(扇 雀),左宝月(獅 童),高橋秋之丞(勘太郎),お若(七之助),宇内(巳之助),伊勢屋徳兵衛(亀 蔵),お弓(萬次郎),潮田軍蔵(彌十郎),小夜(福 助).
謹厳実直で堅物の新左衛門は,ひょんなことから初対面の花魁小夜に一目惚れ,身請けをすることになる.
小夜も,間夫だった新左衛門の同僚・多善の不実に愛想を尽かす.
ところが吉原大火の夜に多善と遭遇した小夜は,多善に斬り殺されてしまう.
新左衛門は小夜の死を受け容れず,人形師宝月が送ってきた小夜の生き人形を小夜と思いこみ,家人にも小夜として扱う様要求する.
人形を小夜として声を掛け共に寝る新左衛門,やがて人形は不思議な動きを見せる様になった….
第1部に続き再び吉原から逃げる羽目になった福助,しかし今回は斬り殺され大川に突き落とされる結果に.
その後人形として復活した福助の怪演ぶりが印象的なホラー芝居でした.
ちなみに真似琴はマネキンと読むそうです(琴は結局出てきませんね).
快テンポな展開とドタバタ芝居とホラー仕立てが程よくミックスした娯楽作品.
最終場面,花道での福助の姿が,席の関係で見えなくて残念.
橘太郎の蕎麦屋が傑作,勘太郎の尋問に大川に落っこちた後の水練ぶりを仕方話で話す場面がおかしい.芝のぶが小夜の同輩花魁・三千歳で良い芝居.
獅童は第1部のまっとうな役回りより,宝月の様な影のある怪しい役の方が,やはり合っている様だ.
「二、夏 魂まつり(なつ たままつり)」
出演:若旦那栄太郎(芝 翫),芸者お梅(福 助),芸者お駒(橋之助),太鼓持国吉(国 生),舞妓よし鶴(宜 生).
こちらは大文字焼きの夕景の前での親子3代の踊り.
花道から出たところで踊った福助の姿は見えず終い,残念.
久しぶりに見た橋之助の芸者姿が瑞々しい.芝翫丈も元気そうで何より何より.終演は5時半頃.
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