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2011年8月に作成された記事

2011/08/28

番外:独断的歌舞伎感想文:新橋演舞場8月花形歌舞伎第1部・第2部

日記:2011年8月某日
新橋演舞場へ.8月花形歌舞伎第1部を見る.Shinbashi201108b
演し物は「一、花魁草(おいらんそう)」.
出演:お蝶(福 助),幸太郎(獅 童),米之助(勘太郎),客孝吉(亀 蔵),お糸(新 悟),小料理屋女房(歌 江),五兵衛(市 蔵),お八重(高麗蔵),勘左衛門(彌十郎),お栄(扇 雀).
北条秀司の作品で,新派でも上演されている.
震災で江戸から逃げる途中連れとなったお蝶・幸太郎は,共に米之助に救われその離れで厄介になる.女郎だったお蝶と大部屋の役者だった幸太郎,同居生活の中でお互いに好きになるが,お蝶は女郎だった身を恥じて深い仲とはならない.
だるま作りで生計を立てていた幸太郎だが,江戸の芝居小屋を再建し,日光詣でに来た座元に見出され,舞台に戻らないかと誘われるが….
訳ありの,女郎上がりの女お蝶を演じる福助がぴったり.
田舎の温厚な親父を演じる勘太郎が,父に似た口跡で人情味たっぷりな芝居,そのおかみさんを演じた芝のぶが,先月の楊貴妃の姉とがらりと変わった役どころで良かった.
最後の場での舞台の構成が素晴らしい.
震災と復興を背景とした悲恋の物語で,心に残る.
「二、伊達娘恋緋鹿子 櫓のお七(やぐらのおしち)」
出演:八百屋お七(七之助).
宝剣の紛失の咎で死に瀕している恋人吉三郎のもとに剣を届けるべく,町木戸を開けるため,御法度の火の見櫓上の太鼓うちを行う八百屋お七の物語.
人形振りで七之助が舞う.七之助の硬質な美貌が人形振りに良く合っている.
途中で衣装の引き抜きもあり,霏々と降る雪の中にも華やかな舞台である.
5年前の5月に見た,「松竹梅湯島掛額」の第2幕がこの同じ「櫓のお七」で,同じ人形振りを亀治郎で見たのが強く印象に残っている.
亀治郎のは情念のお七,七之助のは可憐なお七という感じ.
続いて8月花形歌舞伎第2部を見る.
演し物は,「一、新作歌舞伎 東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)」
出演:藤川新左衛門(橋之助),関口多膳(扇 雀),左宝月(獅 童),高橋秋之丞(勘太郎),お若(七之助),宇内(巳之助),伊勢屋徳兵衛(亀 蔵),お弓(萬次郎),潮田軍蔵(彌十郎),小夜(福 助).
謹厳実直で堅物の新左衛門は,ひょんなことから初対面の花魁小夜に一目惚れ,身請けをすることになる.
小夜も,間夫だった新左衛門の同僚・多善の不実に愛想を尽かす.
ところが吉原大火の夜に多善と遭遇した小夜は,多善に斬り殺されてしまう.
新左衛門は小夜の死を受け容れず,人形師宝月が送ってきた小夜の生き人形を小夜と思いこみ,家人にも小夜として扱う様要求する.
人形を小夜として声を掛け共に寝る新左衛門,やがて人形は不思議な動きを見せる様になった….
第1部に続き再び吉原から逃げる羽目になった福助,しかし今回は斬り殺され大川に突き落とされる結果に.
その後人形として復活した福助の怪演ぶりが印象的なホラー芝居でした.
ちなみに真似琴はマネキンと読むそうです(琴は結局出てきませんね).
快テンポな展開とドタバタ芝居とホラー仕立てが程よくミックスした娯楽作品.
最終場面,花道での福助の姿が,席の関係で見えなくて残念.
橘太郎の蕎麦屋が傑作,勘太郎の尋問に大川に落っこちた後の水練ぶりを仕方話で話す場面がおかしい.芝のぶが小夜の同輩花魁・三千歳で良い芝居.
獅童は第1部のまっとうな役回りより,宝月の様な影のある怪しい役の方が,やはり合っている様だ.
「二、夏 魂まつり(なつ たままつり)」
出演:若旦那栄太郎(芝 翫),芸者お梅(福 助),芸者お駒(橋之助),太鼓持国吉(国 生),舞妓よし鶴(宜 生).
こちらは大文字焼きの夕景の前での親子3代の踊り.
花道から出たところで踊った福助の姿は見えず終い,残念.
久しぶりに見た橋之助の芸者姿が瑞々しい.芝翫丈も元気そうで何より何より.終演は5時半頃.
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2011/08/22

独断的映画感想文:クロエ~無垢な娼婦~

日記:2011年8月某日
映画「クロエ~無垢な娼婦~」を見る.Photo
監督:デニス・ベリー.
出演:マリオン・コティヤール(クロエ),アンナ・カリーナ(カティア),ジャン=クロード・アドラン(ジャン=ミシェル),ノーツァ・クーアドラ(エルザ).
TV映画であることに後から気がついた.
16歳のクロエは,ボーイフレンドに裏切られたことに落胆,口うるさい母親にも嫌気がさし家出をする.
汽車を降り立ったある街で偶然知り合ったカフェの女主人カティアに魅了されるが,つきあい始めたジャン=ミッシェルに夢中になる.
彼はジゴロだった.
愛する彼の言葉のまま,結局クロエは娼婦としてジャンに貢ぎ続ける.
それを心配するカティアの言葉にも耳を貸さないクロエ,しかしジャン=ミシェルは複数の女をそのようにして働かせるプロだった.
自分の街に帰ろうとするクロエ,しかし見るからに娼婦然とした彼女を,かっての友人も受け入れない….
マリオン・コティヤールがブレイクする直前,21歳で演じた16歳の少女の役.
しかし確かにうまいものである.
共演が前ゴダール夫人で60年代を風靡したアンナ・カリーナというのも吃驚.
但し,クロエが家出した理由ももう一つ判然としないし,カティアがジャン=ミシェルを殺してまでクロエを守ろうとした理由も良く判らない.
16歳の娘というものはこんなものかと思う反面,この映画の言いたいことは結局何なのかがぴんと来なかった.
通俗的なドラマ.しかし日本で売りやっている娘達のドラマとはずいぶん違うよね.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:GANTZ

日記:2011年8月某日
映画「GANTZ」を見る.Gantz2
2010年.監督:佐藤信介.
出演:二宮和也(玄野計),松山ケンイチ(加藤勝),吉高由里子(小島多恵),本郷奏多(西丈一郎),夏菜(岸本恵),綾野剛(謎の集団リーダー),水沢奈子(謎の集団の少女),千阪健介(加藤歩),白石隼也(桜井弘斗),伊藤歩(鮎川映莉子),田口トモロヲ(鈴木良一),山田孝之(重田正光).
死んだはずの人々が集められ,GANTZという謎の黒い球体の指示で「異星人」との闘いを強制される.
バトルスーツとガンが用意してあるが,その説明もないまま「星人」との闘いの場に「転送」されるメンバー達.ミッションに成功すれば点数が与えられ,累積100点になると解放されるか,死んでしまったメンバーの誰かを生き返らせることが出来る.
幼なじみの玄野と加藤は,地下鉄での事故に遭い,気がついたらGANTZに招集されていた.
玄野はスーパーヒーローになろうとミッションに前向きに取り組むが,弟と二人暮らしの加藤は深刻な悩みに直面する.そんな加藤を,同時に招集された恵は恋い慕うが….Gantz1
人気漫画の実写映画化.予告編の魅力に惹かれ見たが,とんでもない映画.
漫画をそのまま映画化(「原作に忠実」といえばその通りだが)したため,度肝を抜くスプラッターがふつーのマジな物語の中で突然展開される.
「異星人」のキャラがマンガそのもので,こんなもののために命がけで戦う登場人物達に何のリアルさも感じない.
最初っから2部構成にする積もりの様なので,出てたかどうか判らない人がクレジットされたりという混乱が不愉快.
この映画のヒロインはどう見ても夏菜という人だと思うけど,吉高由里子がヒロイン扱いなのは何故か.
制作側の都合がまかり通るお陰で,この映画では意味不明な映像が多すぎる(例えばGANTZの中でねんねしている裸の男は何なのか).
まあ,原作も知らずにこんな映画を見てしまった僕が馬鹿だった.
映画としては零点.予告編は★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

日記:2011年8月某日
新宿ピカデリーで映画「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」を3D字幕版で見る.203
2011年.監督: デヴィッド・イェーツ.
出演:ダニエル・ラドクリフ(ハリー・ポッター),ルパート・グリント(ロン・ウィーズリー),エマ・ワトソン(ハーマイオニー・グレンジャー),ヘレナ・ボナム=カーター(べラトリックス・レストレンジ),ロビー・コルトレーン(ルビウス・ハグリッド),レイフ・ファインズ(ヴォルデモート),マイケル・ガンボン(アルバス・ダンブルドア),ワーウィック・デイヴィス(グリップフック(小鬼)),ジェイソン・アイザックス(ルシウス・マルフォイ),ジョン・ハート(オリバンダー老人),アラン・リックマン(セブルス・スネイプ),マギー・スミス(ミネルバ・マクゴナガル),ジュリー・ウォルターズ(ウィーズリー夫人),マーク・ウィリアムズ(アーサー・ウィーズリー),トム・フェルトン(ドラコ・マルフォイ),ボニー・ライト(ジニー・ウィーズリー),ジェームズ・フェルプス(フレッド・ウィーズリー),オリヴァー・フェルプス(ジョージ・ウィーズリー),イヴァナ・リンチ(ルーナ・ラブグッド),エマ・トンプソン(シビル・トレローニー),デヴィッド・シューリス(リーマス・ルーピン),ゲイリー・オールドマン(シリウス・ブラック),ジム・ブロードベント(スラグホーン).
10年来のシリーズの最終回.202
この長い物語の終わりとして,全ての登場人物に決着をつけ全ての謎を解き明かすことが期待されるが,それは並大抵のことではない.
それに対してこの映画では,主人公の出生の秘密とデルモベートの分霊の行方という,最大の謎の解明に殆ど全ての主要登場人物を巻き込むことで,最終編に相応しい映画の構成となっている.
それにしても10年前幼いハリーが登場したあの牧歌的なファンタジーの舞台・ホグワーツがこの様な瓦礫の廃墟となるとは.
闇の帝王との闘いにその最後の一兵まで動員するホグワーツの闘いには,胸を打たれる.死を覚悟してそれぞれの配置につく魔法使いの先生と生徒達.
初期のシリーズでは少年少女の勇気がテーマだったが,今この最終回では青年戦士の勇気がテーマとなっていることが,印象的だ.201
その代表は言うまでもなく主人公ハリーであって,ハリーの決意は物語の謎そのものと絡み合い,クライマックスへの最大のステップとなる.
ホグワーツへの総攻撃の進む中,デルモベートの分霊をゲリラ的攻撃で一つずつ潰していくハリー達.この行くへに最後の対決がある.
圧倒的なCGの出来も印象的,一見の価値有り.
★★★★☆(★5個が満点)
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2011/08/01

独断的映画感想文:真幸くあらば

日記:2011年7月某日
映画「真幸くあらば」を見る.2
2009年.監督:御徒町凧.
音楽監督:森山直太朗.テーマ曲:森山直太朗『真幸くあらば』,エンディング曲:森山直太朗『僕らは死んでゆくのだけれど』.
出演:尾野真千子(川原薫),久保田将至(南木野淳),山中聡,YOU THE ROCK★,大河内浩,鶴田忍,ミッキー・カーチス,テリー伊藤,佐野史郎.
「磐代の浜松が枝を引き結び 真幸くあらば またかえり見む」
この歌は万葉集にある有間皇子の歌.中大兄皇子に謀反の疑いをかけられた皇子の辞世の歌とされる.
南木野淳は,行きずりで飛び込み盗みを働いていた家に居合わせた男女を,殺してしまう.死刑判決を受けた淳は自ら控訴を取り下げ,死刑判決は確定した.1
弁護士事務所紹介のボランティアとして淳と面会を重ねていた薫は,淳が殺した男の婚約者だった.
自分を裏切っていた婚約者を殺した淳を,最期まで見届けようと傍聴・面会を重ねていた彼女は,やがて淳を愛する様になり,淳も薫に心を寄せる様になる….
設定はともかく展開は極めてオーソドックスな恋愛劇.
しかし男が死刑囚であるということから来る緊張感と恋愛への制約が,淡々とした映画を印象的なものにしている.
尾野真千子という平凡な顔立ちの女優からこのように深い印象を得ることは驚きであった.
暗示的なラストシーンも心に残る.
音楽監督は森山直太朗が担当,テーマ曲も美しい.3
但し,科白と音楽の音量のバランスが悪く,科白が充分聞き取れなかったのが残念.
僕の再生装置の方の問題かしら?
★★★☆(★5個が満点)
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