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2011年10月に作成された記事

2011/10/23

独断的映画感想文:トゥルー・グリッド

日記:2011年10月某日
映画「トゥルー・グリッド」を見る.3_2
2010年.監督:ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン.
出演:ジェフ・ブリッジス(ルースター・コグバーン),マット・デイモン(ラビーフ),ジョシュ・ブローリン(チェイニー),バリー・ペッパー(ラッキー・ネッド・ペッパー),ヘイリー・スタインフェルド(マティ・ロス).
14才の少女マティは,父が射殺されたとの知らせを受け只一人街にやって来る.
犯人は司法の手の及ばない居留地に逃げ込んでいた.
マティは遺骸を受取り,父の商売の清算をタフな交渉で成功させると,そのお金をで酒飲みだが腕は確かな連邦保安官コグバーンを雇う.2_2
コグバーンは同じ犯人を追ってきたテキサス・レンジャーのラビーフと共にマティを置いて出発するが,マティは承知せず厳寒の川を馬もろとも渡って彼等に追いついた.
コグバーンは彼女を連れて犯人チェイニーを追うことにするが,ラビーフとは確執があって別個に行動することになった.僅かな手がかりを追って過酷な追跡劇が始まる….
マティの奮闘努力が印象的で最期まで一気に見た.
ジェフ・ブリッジス演じるコグバーンは,さすがの貫禄で存在感あり.マット・デイモンは全くマットデイモンらしくなく(途中までマット・デイモンとは気がつかなかった),存在感なし.
悪党チェイニーがあまり悪党らしくなく(ネッドの前では全くけちなチンピラである)いささかがっかり.
そして何といってもコーエン兄弟の映画らしさがあまり感じられない.
映画としては面白く見たが,期待値に対する手応えはちょっと違う結果となった感じ.
★★★☆(★5個が満点)4
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独断的映画感想文:完全なる報復

日記:2011年10月某日
映画「完全なる報復」を見る.1
2009年.監督:F・ゲイリー・グレイ.
出演:ジェイミー・フォックス(ニック・ライス),ジェラルド・バトラー(クライド),レスリー・ビブ(サラ),ブルース・マッギル(ジョナス).
ある日突然自宅を襲った2人組の強盗に妻と娘を惨殺されたクライド,自身も重傷を負う.
ところが犯人は捕まったが,警察の証拠採取時の不手際により証拠採用が否認され,担当検事ニックは有罪を勝ち取るため主犯のダービーと司法取引を行い,その証言によって従犯エイムズの死刑を引き出す.ダービーは禁固5年の刑となった.
この結果にクライドは激しく反発する.
10年後,エイムズの死刑が執行されるが,通常無痛のその執行は,薬剤のすり替えにより凄惨な結果となった.
更にクライドの所有する廃工場でダービーのばらばら死体が発見される.
ニックは犯行はクライドの仕業によるものと信じクライドを逮捕,クライドは自白と引き替えに様々な条件をだすが,一方クライド逮捕後にも司法関係者の殺戮が続き,ついにはニックの上司,部下を含む検察関係者までが犠牲となる….2
アメリカの裁判における司法取引制度を巡るクライドとニックの戦いを,拘禁中のクライドによる連続大量殺人事件という謎を絡めて描くミステリ,という映画.
ところでこのミステリの面では,謎は意外と単純でがっくり来てしまう様なところがある.
一方のクライドとニックの葛藤は,方やニックはこれだけ上司と部下を犠牲にしながら一人出世を果たし家族とは仲良くハッピーエンドとなり,こなたは自身の妻と娘を亡くしながら容赦なく無差別殺人に走り,いずれの側にも感情移入はし難い.
という訳で途中まではともかく,後半は何だかなーの結末であった.
論点整理がうまくいかなかった映画,という気がする.思いついたミステリ・プロットもいまいち,という感じであります.
★★★(★5個が満点)3
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2011/10/22

独断的映画感想文:マザーウォーター

日記:2011年10月某日
映画「マザーウォーター」を見る.2
2010年.監督:松本佳奈.
音楽:金子隆博.音楽プロデューサー:石井和之,平川智司.エンディングテーマ:大貫妙子.
出演:小林聡美(セツコ),小泉今日子(タカコ),加瀬亮(ヤマノハ),市川実日子(ハツミ),永山絢斗(ジン),光石研(オトメ),もたいまさこ(マコト),田熊直太郎(ポプラ)、伽奈(ある人).
「『かもめ食堂』『めがね』『プール』を手掛けた製作チームが、今度は京都を舞台に描く癒しのスローライフ・ムービー」だそうである(映画データベースallcinemaより).
京都のある街に住む男女7人と赤ん坊1人の物語.4
と言って特にストーリーがある訳ではない.街をすたすた歩いているのが仕事としか思えないバーさんマコト,風呂屋のオトメは1歳半の息子ポプラを育てている,ウィスキーしか出さないバーのママセツコ,喫茶店のママ・タカコ,豆腐屋のハツミ,風呂屋のバイト・ジン,家具職人のヤマノハ.
彼等は互いの店を訪れてはとりとめもない話を交わし,街を徘徊する.
ジンは何かしなければならないことがあってオトメの助言を受けやがて街を去ってゆくし,ヤマノハは友人と決着を付けねばならないことがあってセツコに助言されたりするが,その具体的な内容は判らない.
この川のある街でゆったりと過ごす人々を描く映画.
眠くなると言う訳ではないが夢中になって見るという映画でもない.まあこういう映画もありでしょうかね.
会話も論争になるという程の会話でもないが,どうもセツコ,タカコ,マコトの3人がほぼ一方的に相手に説教をするというあたりが気になる.
だいたい風呂屋がオトメでバーさんがマコトだっていうのに気付くまでだいぶかかって(当初は逆だと思っていた),最初は話のつじつまがどうも理解できなかった.1
また,この街は彼等以外には住民が殆ど居ない様であるのも不思議.良く店が保っているよね.
最後のシーンはまったく意味不明.まあそんなことはどうでも良い映画なんですが.
俳優は皆さすがに良い演技.と言ってもご想像の通り,すべての演技はポプラ役の田熊直太郎君に喰われています.
映像は綺麗,また音楽は大貫妙子のエンディングテーマ含め素晴らしい.
★★★(★5つが満点)
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2011/10/16

独断的映画感想文:エンディングノート

日記:2011年10月某日
映画「エンディングノート」を見る3_2
監督:砂田麻美.
製作:是枝裕和.プロデューサー:是枝裕和.音楽:ハナレグミ.主題歌:ハナレグミ『天国さん』.
監督の砂田麻美が,父君のガン闘病の最期の日々を,何とも言えないユーモアをまぶして描く,ドキュメンタリー.
67才で役員として退職するまで営業畑一筋に邁進してきた会社イノチの砂田知昭さん.退職直後に進行ガンが発見され,既に手術は不能と宣告される.
何事も段取り大事で生きてきた砂田さんは,直ちに自分の死までの段取りをエンディング・ノートとして作成し始めた….
この映画成功の鍵は,砂田知昭・麻美父子を中心とした砂田一家のキャラクターが大きいだろう.
映画では「ガン告知5分後の父」という写真映像が一瞬挿入される.さすがにこの時は凹んでいる様に見受けられるが,これ以降砂田さんは着々と段取りを進め,元気に明るく暮らしていく.
医師にも現況を質して納得するまで譲らず,最期の日まで冷静に自分に課した任務を果たして行く.まさに段取り男の面目躍如というところか.2
また監督の麻美さんも,その父と対して冷静沈着,しかもユーモアを忘れずに撮り進めていく姿勢が印象的.劇場はしばしば,爆笑とまではいかないが,暖かい笑い声に満たされた.
砂田さんが「カメラを止めて」と言って自身の個人的考えを話し始めたのに,カメラが撮り続けているのに気付いて目を剥いたときの表情,危篤の床から知人に電話していろいろ挨拶したあげくつい切り際に「何かあったらまた携帯に電話下さい」と言ってしまったとき等々.
一方で一人山や海を眺める砂田さんの姿も映画は捉えている.「わたしは上手に死ねるでしょうか」という独白も印象に残る.
自身の死という最も深刻な事態に立ち向かう砂田さんとその家族の日々を描いて,映画として完成度高し.
一見の価値あり.1
ハナレグミのエンディングテーマは素敵.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:小さな村の小さなダンサー

日記:2011年10月某日
映画「小さな村の小さなダンサー」を見る.5
2009年.監督:ブルース・ベレスフォード.
出演:ツァオ・チー(リー・ツンシン),ジョアン・チェン(リーの母親),ブルース・グリーンウッド(ベン),アマンダ・シュル(エリザベス),カイル・マクラクラン(フォスター弁護士),グオ・チャンウ(青年時代のリー),ホアン・ウェンビン(少年時代のリー),ジャック・トンプソン(判事ウッドロウ).
実在のバレー・ダンサー,リー・ツンシンの自伝をもとにした映画.
1961年,山東省の山村に生まれたリーは,1971年,毛沢東の文化政策により始められたバレー団育成にスカウトされ,北京舞踏学校に入学する.
リーは次第に頭角を現し,やがて北京舞踏学校を訪問したヒューストン・バレー団との交流で,1981年,3ヶ月間の研究生として訪米することになった.
ヒューストンでバレーの勉強を始めたリーは,初めて見る「資本主義社会」に瞠目する….
毛沢東とその文化大革命,その後の後継争いの政治闘争が吹き荒れる時代を背景に描く,バレーダンサーの数奇な運命である.6
この映画の印象は,誠実でまっとうな作り方と言えるだろう.
リーの生まれ故郷の両親の描写,北京舞踏学校での英才教育の様子,ぎごちなくも次第にアメリカ社会に慣れ親しんでいくリーの姿が過不足なく描かれる.
また,中国出身で現在英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍する主演のツァオ・チーのバレーシーンは実に素晴らしい.
バレーには門外漢の僕だが,舞台芸術の迫力というものを目の当たりにした感がある.
特に大詰めで,両親が見守る中での現代バレーのシーンには心を打たれた.
エリザベスとの微妙な関係等,敢えて踏み込んで描かない部分もあるが,映画の感動には影響しない.3
一見の価値あり.
但し,邦題には営業的偏りが感じられる.原題は「毛沢東最期のダンサー」といったところか.
★★★★(★5個が満点)
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2011/10/15

番外:独断的歌舞伎感想文:新橋演舞場十月花形歌舞伎 當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)

日記:2011年10月某日.
新橋演舞場で芸術祭十月花形歌舞伎を見る.Shinbashi2011102
夜の部は,「猿之助四十八撰の内通し狂言 當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん) 市川亀治郎/市川笑也 天馬にて宙乗り相勤め申し候」
序幕 鶴ヶ岡八幡/大膳館.
ニ幕 浪七住家/幕外/堅田浦浜辺.
大詰 宝光院門前/万福長者内風呂/奥座敷/湯の峯 道行/華厳の滝.
配役:小栗判官兼氏/浪七/娘お駒(亀治郎),照手姫(笑也),鬼瓦の胴八(右近),横山次郎/膳所の四郎蔵(猿弥),後家お槙(笑三郎),浪七女房お藤(春猿),横山郡司(寿猿),横山三郎(薪車),局 藤浪(竹三郎),矢橋の橋蔵/上杉安房守(獅童),遊行上人(愛之助),横山大膳(段四郎).
都合で「ニ幕 浪七住家」から見たこの芝居,亀治郎の早変わりと宙乗りの魅力が何といっても大きいが,獅童の矢橋の橋蔵が大いに笑いをとり,笑也,笑三郎,春猿のそれぞれの女形が良く,充実した舞台だった.
亀治郎はエネルギーにあふれている.Shinbashi2011101
浪七の台詞では,劇場を揺るがす程の大音声で見得を切り,その次の宝光院門前では,お駒の消え入らんばかりの高い声と小栗判官の鋭い若い声を使い分けるのには,感心した.
二幕の浪七最期に至る展開と,大詰めのテンポアップした展開が,多少バランスが悪いようにも思ったが,最期の宙乗りですべて吹っ飛び,終われば大満足の芝居だった.
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番外 独断的歌舞伎感想文:通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり)

日記:2011年10月某日
国立劇場で歌舞伎を見る.Kokuritsu111010
曲亭馬琴=作『開巻驚奇侠客伝』より,尾上菊五郎=監修.国立劇場文芸課=脚本.国立劇場美術係=美術.
「通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり) 五幕十場 尾上菊五郎/尾上菊之助 両宙乗りにて術譲り相勤め申し候」 
発端/新田貞方討死の場,序幕(相模) 箱根賽の河原の場/底倉温泉藤白家浴館の場.
二幕目 九六媛仙境の場.
三幕目(伊勢) 上多気宿街道筋の場/同 旅籠屋の場/同 店先の場/飼坂峠の場.
四幕目(河内) 千剣破村木綿張荷二郎内の場.
大  詰(山城) 北山殿金閣の場.
出演:尾上 菊五郎,中村 時蔵,尾上 松緑,尾上 菊之助,坂東 亀三郎,坂東 亀寿,中村 梅枝,尾上 右近,中村 萬太郎,尾上 松也,河原崎 権十郎,市村 萬次郎,市川 團蔵,坂東 彦三郎,澤村 田之助.
足利将軍義満の時代に,新田の嫡流小六と楠の姫君・姑摩姫が,それぞれ艱難辛苦の末に日本国王への野望を抱く義満を討つまでの物語.
馬琴の原作の復活狂言で、脚本はほぼ新作同様ということである.
筋はいまいち納得のいかない部分が多い.
新田の仇・藤白安同の妻長総が,夫の奢りを諫めて離縁されたのに,変わり身早く若衆と逃げたあげく泥棒のおかみさんになるというのも違和感あり.
また,せっかく新田・楠の若君・姫君が松禄・菊之助で出ているのに,ロマンスの要素は殆どなし.
とは言え,役者が揃ってテンポの良い展開,舞台は楽しいものであった.
特に菊五郎,菊之助の二人宙乗りは圧巻,菊五郎が白狼にまたがって上手を飛べば,菊之助はくるくると回りながら下手を飛ぶという趣向で見応えがあった.
また大詰めの金閣寺上の立ち回りは素晴らしく,菊之助が前後に捕り手を切り伏せながらの激しいもの.
その直後に息も上がらず台詞が出てくるのはさすが菊之助と感心した次第.
脚本は未だ発展途上ながら,役者の活躍で面白かったというのが感想でした.
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