番外 独断的歌舞伎感想文:通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり)
日記:2011年10月某日
国立劇場で歌舞伎を見る.
曲亭馬琴=作『開巻驚奇侠客伝』より,尾上菊五郎=監修.国立劇場文芸課=脚本.国立劇場美術係=美術.
「通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり) 五幕十場 尾上菊五郎/尾上菊之助 両宙乗りにて術譲り相勤め申し候」
発端/新田貞方討死の場,序幕(相模) 箱根賽の河原の場/底倉温泉藤白家浴館の場.
二幕目 九六媛仙境の場.
三幕目(伊勢) 上多気宿街道筋の場/同 旅籠屋の場/同 店先の場/飼坂峠の場.
四幕目(河内) 千剣破村木綿張荷二郎内の場.
大 詰(山城) 北山殿金閣の場.
出演:尾上 菊五郎,中村 時蔵,尾上 松緑,尾上 菊之助,坂東 亀三郎,坂東 亀寿,中村 梅枝,尾上 右近,中村 萬太郎,尾上 松也,河原崎 権十郎,市村 萬次郎,市川 團蔵,坂東 彦三郎,澤村 田之助.
足利将軍義満の時代に,新田の嫡流小六と楠の姫君・姑摩姫が,それぞれ艱難辛苦の末に日本国王への野望を抱く義満を討つまでの物語.
馬琴の原作の復活狂言で、脚本はほぼ新作同様ということである.
筋はいまいち納得のいかない部分が多い.
新田の仇・藤白安同の妻長総が,夫の奢りを諫めて離縁されたのに,変わり身早く若衆と逃げたあげく泥棒のおかみさんになるというのも違和感あり.
また,せっかく新田・楠の若君・姫君が松禄・菊之助で出ているのに,ロマンスの要素は殆どなし.
とは言え,役者が揃ってテンポの良い展開,舞台は楽しいものであった.
特に菊五郎,菊之助の二人宙乗りは圧巻,菊五郎が白狼にまたがって上手を飛べば,菊之助はくるくると回りながら下手を飛ぶという趣向で見応えがあった.
また大詰めの金閣寺上の立ち回りは素晴らしく,菊之助が前後に捕り手を切り伏せながらの激しいもの.
その直後に息も上がらず台詞が出てくるのはさすが菊之助と感心した次第.
脚本は未だ発展途上ながら,役者の活躍で面白かったというのが感想でした.
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