独断的映画感想文:エンディングノート
日記:2011年10月某日
映画「エンディングノート」を見る.
監督:砂田麻美.
製作:是枝裕和.プロデューサー:是枝裕和.音楽:ハナレグミ.主題歌:ハナレグミ『天国さん』.
監督の砂田麻美が,父君のガン闘病の最期の日々を,何とも言えないユーモアをまぶして描く,ドキュメンタリー.
67才で役員として退職するまで営業畑一筋に邁進してきた会社イノチの砂田知昭さん.退職直後に進行ガンが発見され,既に手術は不能と宣告される.
何事も段取り大事で生きてきた砂田さんは,直ちに自分の死までの段取りをエンディング・ノートとして作成し始めた….
この映画成功の鍵は,砂田知昭・麻美父子を中心とした砂田一家のキャラクターが大きいだろう.
映画では「ガン告知5分後の父」という写真映像が一瞬挿入される.さすがにこの時は凹んでいる様に見受けられるが,これ以降砂田さんは着々と段取りを進め,元気に明るく暮らしていく.
医師にも現況を質して納得するまで譲らず,最期の日まで冷静に自分に課した任務を果たして行く.まさに段取り男の面目躍如というところか.
また監督の麻美さんも,その父と対して冷静沈着,しかもユーモアを忘れずに撮り進めていく姿勢が印象的.劇場はしばしば,爆笑とまではいかないが,暖かい笑い声に満たされた.
砂田さんが「カメラを止めて」と言って自身の個人的考えを話し始めたのに,カメラが撮り続けているのに気付いて目を剥いたときの表情,危篤の床から知人に電話していろいろ挨拶したあげくつい切り際に「何かあったらまた携帯に電話下さい」と言ってしまったとき等々.
一方で一人山や海を眺める砂田さんの姿も映画は捉えている.「わたしは上手に死ねるでしょうか」という独白も印象に残る.
自身の死という最も深刻な事態に立ち向かう砂田さんとその家族の日々を描いて,映画として完成度高し.
一見の価値あり.
ハナレグミのエンディングテーマは素敵.
★★★★(★5個が満点)
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