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2011/11/05

独断的映画感想文:雷桜

日記:2011年11月某日
映画「雷桜」を見る.4
2010年.監督: 廣木隆一.
出演:岡田将生(清水斉道),蒼井優(雷/遊),小出恵介(瀬田助次郎),柄本明(榎戸角之進),時任三郎(田中理右衛門),宮崎美子(たえ),和田聰宏(瀬田助太郎),須藤理彩(お初),若葉竜也(榊原秀之助),忍成修吾(今泉鉄之助),村上淳(鹿内六郎太),高良健吾(友蔵),柄本佑(茂次),大杉漣(高山仙之介),ベンガル(早坂門之助),池畑慎之介(田所文之進),坂東三津五郎(徳川家斉(特別出演)).
将軍の子でありながら母を気の病で早くに失った斉道は,癇癖の若者に育つ.
行く末を案じた用人の榎田は,斉道を家臣瀬田の実家で静養させるが,その山で斉道は天狗と呼ばれる謎の少女と邂逅する.3_2
少女は20年前の雷雨の夜に拐かされた瀬田の妹,遊であった….
レビューでは評判の悪いこの映画だが,良いところ悪いところのはっきりした映画ではある.
悪いところはどうも時代劇らしさが希薄で安っちいところか.
登場人物の台詞や所作,動作が板についていず違和感がある.
例えば助次郎の兄で庄屋の助太郎が,助次郎の主君斉道に向かって「殿」と呼びかけるシーンがあるが,斉道は助太郎の主君ではないのだからあり得ない呼びかけである.
斉道のお供の侍が主君を追いかけて走る姿もヨーロピアンスタイルの全力疾走で,大小を手ばさんだ袴姿の武士の走り方ではない.2_2
脚本もいまいちで,だいたい130分を超える長尺なのは,余計な話が整理できないままくっついているからである.
その余計な話の最たるものが遊をかどわかし育てた田中理右衛門の話で,この男の行動や考え方はおよそ理解不能である.何故殺せなかった遊を返さず自分で育てたのか,あげくに斉道暗殺に走った理由は何なのか,訳がわからない.
その他にも突っ込みたいところは山程ある.しかしそんなことはまあどうでも宜しい.
この映画の良いところは蒼井優と岡田将生の好演に尽きる.特に蒼井優は山で育った野生の娘の純情を演じて誠に納得がいく演技.この二人のロマンスという点で映画としての骨格は揺るがない.
俳優では柄本明,宮崎美子も宜しい.1_2
そして題名にもなっている雷桜という,落雷した銀杏の古木に桜が芽吹いて成長した不思議な木の姿も印象的である.この映像は美術とCGの合作なのか,原作が描写した象徴的な姿を表現し得ている.
あと一つ不満を言えば,遊と斉道が巡り会う村の祭りの群舞シーンで,群衆が量的にもエネルギー的にも貧弱なのが残念であった.
★★★(★5個が満点)
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