独断的映画感想文:蜂蜜
日記:2011年12月某日
映画「蜂蜜」を見る.
2010年.監督:セミフ・カプランオール.
出演:ボラ・アルタシュ(ユスフ),エルダル・ベシクチオール(ヤクプ),トゥリン・オゼン(ゼーラ).
冒頭,深い森の中から現れる馬をつれた男.やがてとある木の側で立ち止まると,ロープを取り出し放り上げて枝にかける.
強さを試した後おもむろに木を登り始めるが,相当高く登ったところで枝が折れ,男は転落寸前になる.
トルコ映画「蜂蜜」は極めて個性的な映画である.
主な登場人物は6才くらいの少年ユスフと父ヤクプ,母ゼーラの三人.音楽は一切使われず説明的な描写も殆どない.
トルコの山岳地帯の森の中の村に住むユスフ一家,ヤクプは蜂蜜をとって暮らしを立てているが,森から蜂が姿を消す事態が起こる.
別の場所に巣箱を仕掛けようと森に出かけたヤクプは,そのまま姿を消す.
ユスフは教室では吃音に悩む生徒,父ともささやき声で話す.ユスフは蜂蜜取りに連れて行ってくれ,自分の苦手なミルクを代わりに飲んでくれる父が大好きだ.
父の帰りを母と共に待つユスフだったが….
冒頭のシーンはユスフが見た夢らしい.映画を見ている間はそのことに気付かず,後に起こる事実の描写と思っていたがそうではなく,ユスフの見た予知夢ということになる.
この映画はユスフの立場,ユスフの視点から見た映画なのである.
6才の少年の両親への甘え,同級生への妬み,女生徒へのあこがれ,喜び,悲しみがそのまま描写される.大人の視点的な説明は不充分だが,観客は子供の心を率直に受け容れることが出来るだろう.
自然の描写も限りなく美しい.トルコにもこういう日本的な山村があるのだと,新鮮な思いで見た.
長回しを多用した独特なテンポも印象的である.
最終局面,父が愛育していた鷹の飛翔を追って,暗くなっていく森を走るユスフの姿が心に残る.
一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
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