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2011/12/28

独断的映画感想文:アンチクライスト

日記:2011年12月某日
映画「アンチクライスト」を見る.3
2009年.監督:ラース・フォン・トリアー.
出演:シャルロット・ゲンズブール(彼女),ウィレム・デフォー(彼).
映画の冒頭,激しいセックスシーンがモノクロのスロースピードで流れる.
ベビーベッドから抜け出し机によじ登る,彼等の幼い息子.机の上には「苦痛」「絶望」「悲嘆」と刻印された三体の人形.
やがて子供は窓から転落死する.
子を失ったショックに心を病んで入院する彼女.セラピストでもある夫は彼女を退院させ,かって彼女が論文を書こうと息子と滞在した,森の中の山荘に彼女を連れて行く.
理詰めの説得で彼女の治療に当たる彼,やがて彼女は快方に向かうかと思われたが….
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ドッグヴィル」を監督したラース・フォン・トリアーの作品.4
寓話に満ちたストーリー,象徴的な映像が繰り広げる極めて映画的な映画である.
アンチクライストとは何か?この概念そのものが自分の様な日本人にとってはそもそも難解である.
彼らは治療のために森に赴くが,森そのものは「死」の世界として描かれている様だ.
山荘の屋根に落ちる夥しいドングリ,しかし樹として育つのは1000年に1本であり,その他のドングリはただ死んでいくのだと彼女は言う.
しかしその死の世界の方が,彼の語る正論の「生」の世界より遙かに豊穣に見えるのは何故だろう?
一方で彼女は,以前この山荘で論文に取り組んでいた時から既に精神に異常を来していたらしいことが描かれる.息子は彼女に虐待されていたらしいことを示唆する描写も.
ある夜突然に繰り広げられる惨劇は,思いもかけぬ結末に観客を投げ込む.
基本的に日本人たる自分の自然観・宗教観とは全く異質な世界の物語である.判らぬまま翻弄されたに等しい.
しかし俳優の迫力は並大抵ではない.1
「最後の誘惑」でキリストを演じたウィレム・デフォーが,またそれとは別のキリスト像を好演.シャーロット・ゲンズブールの体を張った熱演は,真の狂気を感じさせて極めて印象的.
見て楽しい映画ではないが,生と死,絶望と狂気,苦悩と悲哀を突きつけられ心に残る映画.
欧米人であれば,あるいはキリスト教徒であれば,もう少しこの寓意は読み取れただろうか?
★★★☆(★5個が満点)
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