独断的映画感想文:海炭市叙景
日記:2011年11月某日
映画「海炭市叙景」を見る.
2010年.監督:熊切和嘉.
出演:谷村美月(井川帆波),竹原ピストル(井川颯太),加瀬亮(目黒晴夫),三浦誠己(萩谷博),山中崇(工藤まこと),南果歩(比嘉春代),小林薫(比嘉隆三).
夭折した作家・佐藤泰志の短編集を,函館市民の協力で映画化した作品.
不況渦巻く海炭市で造船所をクビになった兄妹の迎える正月の朝.
再開発の進む郊外で,豚や羊を飼いながら一人踏ん張るトキばあさんの暮らし.
市営のプラネタリウムに勤める隆三と水商売を始めた妻との葛藤.
市内でガス屋を営む晴夫の不倫を知ったその後妻が虐待する晴夫の連れ子.
廃止される路面電車の運転手の老父とその息子の邂逅.
短編集から選ばれた5つの物語が織りなす人生の哀歓が,穏やかな語り口で描かれる.
これらの物語の登場人物は微妙に重なり合っていて,時間を相前後して織り上げられた5つの物語が集約する最後のシーンには胸を突かれる.
等身大に描かれる海炭市の風景は,自分の街でもあったかも知れないというリアルさを感じさせ,描かれる人々の暮らしは,自分であったかも知れないという切実さを思わせる.
長尺ながら程よい緊張感で最期まで見た.ジム・オルークの音楽も素敵.
★★★★(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント