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2012年1月に作成された記事

2012/01/31

独断的映画感想文:岳 -ガク-

日記:2012年1月某日
映画「岳 -ガク-」を見る.7
2010年.監督:片山修.
出演:小栗旬(島崎三歩),長澤まさみ(椎名久美),佐々木蔵之介(野田正人),石田卓也(阿久津敏夫),矢柴俊博(座間洋平),やべきょうすけ(安藤俊一),浜田学(関勇),鈴之助(守屋鉄志),尾上寛之(遭難する青年),波岡一喜(三歩の親友),森廉(青木誠),ベンガル(遭難者の父),宇梶剛士(横井修治),小林海人(横井ナオタ),光石研(梶一郎),中越典子(梶陽子),石黒賢(椎名恭三),市毛良枝(谷村文子),渡部篤郎(牧英紀).
島崎三歩は北アルプスの山小屋を根城にする「山バカ」,北部警察署山岳救助隊のボランティアとしてその素晴らしい力量を発揮する.
一方,北部警察署山岳救助隊に新たに配属された椎名久美は,人一倍の遭難救助への心を持ちながらなかなか結果に繋がらない.3
久美は三歩に現場の実際を教えられながら,次第に救助隊に溶けこんでいく….
と書くと新人失敗物語に聞こえるが,この映画はなかなかにシビアな遭難と山岳救助の実態を描く.
救助隊員の背中で遭難者が息を引き取る瞬間や,死者と生存者の峻烈な仕分け等印象深い場面が続く.
ところで僕はこの映画は殆ど予備知識無しで見た.この島崎三歩という素っ頓狂な山バカを演じているのは,ネプチューンのほりけんだと思ったし,椎名久美は長澤まさみに似ている演技派の女優が演じているのだと思って見ていた.
アイドル系の小栗旬と長澤まさみが主演だとは,嬉しい驚きである.
物語は上に述べた様にかなりシビアな山岳救助の物語である.山岳映画としての水準は高く,撮影は相当困難だったことがうかがえる.
もっとも物語は主人公三歩の現実離れした不死身ぶりと言い,主人公二人が凍傷も負わずに無事生還するところと言い,どうも漫画チックで隙がある(と思ったら原作は本当に漫画なんですってね.ものを知らないで申し訳ない).6
とは言え,映画の面白さ,映像の美しさに引っ張られ最後まで一気に見た.音楽もなかなか良い.
見て損はない映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/01/28

独断的映画感想文:パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉

日記:2012年1月某日
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」を見る.4
2011年.監督:ロブ・マーシャル.
出演:ジョニー・デップ(ジャック・スパロウ),ペネロペ・クルス(アンジェリカ),ジェフリー・ラッシュ(バルボッサ),イアン・マクシェーン(黒ひげ),サム・クラフリン(フィリップ),アストリッド・ベルジュ=フリスベ(シレーナ),ケヴィン・R・マクナリー(ギブス),キース・リチャーズ(ティーグ・スパロウ),スティーヴン・グレアム(スクラム),グレッグ・エリス(グローブス),リチャード・グリフィス(ジョージ王),ジュディ・デンチ(上流階級の婦人),ジェマ・ウォード(人魚(1)),クリストファー・フェアバンク(エゼキエル).
相棒ギブスが捕まりロンドンで裁判にかけられるというので,ジャックは判事に変装,ギブス救出に奔走するが,ジャックも結局捕まって国王ジョージと会う.9_2
ジャックが船員を募集して「生命の泉」探索の旅に出るという噂があるらしく,今や国王の臣下となった仇敵バルボッサが現れて「生命の泉」の有りかを問い質す.
ジャックは辛くも脱出,彼の名をかたって船員を募集している人物を突き止めると,何とそれはかっての恋人女海賊のアンジェリカであった.
彼女は父である悪名高い海賊「黒ヒゲ」の命を救うべく,生命の泉を見つけようとジャックを拉致する.一方バルボッサ率いる英国船,スペイン艦隊も共に生命の泉を目指すが,生命の泉で生命を救うには,泉の水の他に伝説の海賊船ポン・セデ・レオン号にある聖杯,ホワイトキャップ湾に住む人魚の涙が必要なのだ.
黒ヒゲとバルボッサは共にホワイトキャップ湾を目指し船を進めるが….
シリーズ4作目は,今までのややこしい人間関係や経緯が単純明解にされ,ジャックが本来のアホかしこのキャラクターを取り戻して大活躍,痛快なエンタテインメントとなった.
シリーズものの弊害はとにかく話が複雑になって登場人物がやたら増えること,今回思い切って今までのキャラクターの大半を捨て去った英断は評価されるべきであろう.1_2
お陰でおじさんも安心して最後までアハアハと笑って映画を見ることが出来たのは,実にめでたい.
今回は黒ヒゲとその娘アンジェリカ対ジャックのあの手この手を尽くした闘いに加え,英国海軍を従えたバルボッサ,更にいざとなると出現して事態を単純に悪化させるスペイン軍という構成が,活劇をスリリングにしてなかなかに楽しい.
今回惜しかったのは海賊船同士の闘いのシーンが無かった点であるが,ラストでジャックがブラックパール号を再度ものにしそうな気配があり,次回が楽しみである.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:アレクサンドリア

日記:2012年1月某日
映画「アレクサンドリア」を見る.1
2009年.監督:アレハンドロ・アメナーバル.
出演:レイチェル・ワイズ(ヒュパティア),マックス・ミンゲラ(ダオス),オスカー・アイザック(オレステス),マイケル・ロンズデール(テオン),サミ・サミール(キュリロス),アシュラフ・バルフム(アンモニオス).ルパート・エヴァンス(シュネシオス),ホマユン・エルシャディ(アスパシウス),オシュリ・コーエン(メドルス).
4世紀のアレクサンドリア,図書館長の一人娘ヒュパティアは,学生に自然哲学を講義する美貌の学者である.
異なる宗教を信じる学生達を分け隔てなく扱い,自分の奴隷のダオスにも講義への参加を許す彼女は,ひたすら学問に打ち込み男性からの求婚も断っていた.
折しもアレクサンドリアではキリスト教徒が勢いを増し,ユダヤ教徒と連合した彼らは,図書館に依る古代神を信奉する学者・上流階級と衝突,遂に図書館は彼らに奪われ集積された書籍はことごとく灰燼に帰した.
その後ヒュパティアは自邸で研究を重ね,教え子達は形式的にキリスト教徒に改宗して政府の要職に就いていた.
勢力の伸張を狙うキリスト教徒はユダヤ教徒を殺戮,更に政府の実権を握ろうと,司令官オレステスの師であるヒュパティアに魔手を伸ばす….
ヒュパティアは実在の学者で,キリスト教徒に惨殺された.
この映画で描かれるキリスト教はまさに邪教で,彼らのために人類の科学は1200年停滞したとまで映画は述べている(映画では,ケプラーの惑星公転周期に関する法則を,ヒュパティアが見いだしかけていたことが示唆されている).3
アメナーバル監督はよくまあここまでキリスト教を悪し様に描いたものである.
日本で特定の宗教を題材にこういう映画を撮ること自体考えられないであろう.
悲運の女性ヒュパティアを演じるレイチェル・ワイズが美しく魅力的.また,彼女の学生で彼女に求婚もしたオレステスの人物像も魅力がある.
ヒュパティアに憧れ,彼女に解放された後,キリスト教徒に転じる奴隷のダオスの運命も印象に残る.
映画は,宇宙から俯瞰した地球,更にその地中海南岸のアレクサンドリアの映像をしばしば挿入し,天文学に没頭するヒュパティアと併せて,宗教を巡って古都アレクサンドリアで殺し合う人間達と対比させている.今に繋がる人間の愚かさとして無常感を感じざるを得ない.2
もっと若い時に見たら別な感想を持ったかも知れないが,今見るこの映画には.むなしさを痛感する次第.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 義経千本桜 鳥居前/身替座禅/雪暮夜入谷畦道

日記:2012年1月某日
歌舞伎:平成中村座を見る.201111222234519ad_2
昼の部は,「一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前」.出演:佐藤忠信実は源九郎狐(獅童),静御前(梅枝),源九郎判官義経(萬太郎),武蔵坊弁慶(亀蔵).
「二、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)」.出演:山蔭右京(勘三郎),太郎冠者(獅童),奥方玉の井(彌十郎).
「三、雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)」.出演:片岡直次郎(橋之助),三千歳(七之助),按摩丈賀(亀蔵).
「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前」はおっとりした義経,美しい静御前が魅力的.
獅童はもっと暴れて欲しかった.亀蔵は弁慶で坊主頭,後の「入谷」でも按摩の丈賀でハゲづらということで,こういう配役どうなんでしょうね.
「身替座禅」では久しぶりにコメディの勘三郎が見られて感激,
痩せているしみなぎるエネルギーには未だ欠けるものがあるが,軽妙洒脱なそのそぶりが懐かしい.
彌十郞の玉の井は,もう少し太ったら松子・デラックスである.
「入谷」は橋之助を見るのが楽しい.
七之助の三千歳が部屋の入り口に立ちすくみ,直次郎と互いに見交わすところが好きである.
今回も桜席,寒いが役者の動きがよく見れて楽しい.
ところで終演後テントの外に出たら,そば屋のおじさんが器を引いて帰るところだった.その器は,劇中で使われた蕎麦のものだったろうか?
このテントの外に蕎麦屋の屋台が出ていたら良いのにと,同行皆で言い合ったことでした.
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2012/01/16

番外:独断的歌舞伎感想文:2012年新春・矢の根/連獅子/め組の喧嘩

日記:2012年1月某日
新橋演舞場で歌舞伎を見る.Shinbashi201201b
演目は「一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)」
出演:曽我五郎(三津五郎),大薩摩主膳太夫(歌六),馬士畑右衛門(秀調),曽我十郎(田之助).
「二、連獅子(れんじし)-五世中村富十郎一周忌追善狂言」
出演:狂言師右近後に親獅子の精(吉右衛門),狂言師左近後に仔獅子の精(鷹之資),僧蓮念(錦之助),僧遍念(又五郎).
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ) め組の喧嘩 品川島崎楼より 神明末社裏まで」
出演:め組辰五郎(菊五郎),お仲(時蔵),尾花屋女房おくら(芝雀),九竜山浪右衛門(又五郎),柴井町藤松(菊之助),伊皿子の安三(松江),背高の竹(亀三郎),三ツ星半次(亀寿),おもちゃの文次(松也),御成門の鶴吉(光),山門の仙太(男寅),倅又八(藤間大河),芝浦の銀蔵(桂三),神路山花五郎(由次郎),宇田川町長次郎(権十郎),島崎楼女将おなみ(萬次郎),露月町亀右衛門(團蔵),江戸座喜太郎(彦三郎),四ツ車大八(左團次),焚出し喜三郎(梅玉).
「矢の根」は曽我もの.まあ荒事の代表みたいなお芝居で,訳の分からないことをわーわーと騒いで訳の分からないことを大仰にやっているうちに終わってしまう,と言うと実もふたもないが,まあそういうことである.
しかし歌舞伎の美的要素は全てそのうちに取り込まれているので,お客は拍手喝采.
三津五郎もこういう荒事をやるのかと改めて感心.
「連獅子」は冨十郎の遺児鷹之資くんと吉右衛門が踊る.吉右衛門も鷹之資もがんばれと言いたくなる50を越える年齢差の連獅子.
両方に暖かいかけ声が飛ぶ.
最後の「め組の喧嘩」は題名通りの芝居.それ以上でもそれ以下でもない.Renjishi_201201
料理屋で間の障子が外れたという些細なことから,相撲取り四ツ車の一門と火消しめ組が総力をかけて喧嘩をするというそれだけの物語.
呆れたことに間に立つ人がいて二度まで喧嘩を止めたのに,当事者の仲間内では止めようとかよそうとか言う人が一人として無く,辰五郎の女房までがけしかける始末で,「意気といなせとかっこよさ」自慢以外には何の取り柄もないぱっぱらぱーの男達が,舞台狭しと暴れ回る.
ところがその男達が一斉にときの声を上げて勇み立つと,見ているこちらもかっと頭に血が上るのが不思議.
男って本当に馬鹿だよね.戦争の時もこうだったのではないか.誠に芝居は浮き世の反映であるな.
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独断的映画感想文:嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん

日記:2012年1月某日
映画「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」を見る.1
2010年.監督:瀬田なつき.
出演:大政絢(まーちゃん(御園マユ)),染谷将太(みーくん),三浦誠己(藤田:刑事),山田キヌヲ(10年前の誘拐犯の妻),鈴木卓爾(10年前の誘拐犯),宇治清高(菅原道真),田畑智子(上杜奈月),鈴木京香(坂下恋日).
まーちゃんは一人暮らしの女子高生,10年前の誘拐事件のトラウマのため壊れている.
そんなまーちゃんのところに,誘拐事件の時もまーちゃんを助けたみーくんがやってくる.まーちゃんは大喜び,
子供の様にみーくんに甘えるが,まーちゃんの家には何故か誘拐されてきた姉弟が縛られて物置に監禁されていた.しかも折しも周辺では連続殺人事件が発生しているという….2
ふわふわした現実味のない映画の展開は,凄惨な過去の事件と現在のまーちゃんの状態を描くための方便か.
こういうライト・ノベルの表現にはなじめない.
染谷将太と大政絢にはそれなりに魅了があったが,まーちゃんの壊れた程度とか,みーくんは何処で何をしていたのかなど(そんなことは知る必要はないのかも知れないが)気にかかるところ.
何となく消化不良のまま映画は終わってしまった.僕も古い人間になってしまったのでしょうね.3
★★★(★5個が満点)
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2012/01/08

独断的映画感想文:ハンナ

日記:2012年1月某日
映画「ハンナ」を見る.3_3
2011年.監督:ジョー・ライト.
出演:シアーシャ・ローナン(ハンナ),エリック・バナ(エリック),ケイト・ブランシェット(マリッサ),トム・ホランダー(アイザック),オリヴィア・ウィリアムズ(レイチェル).
ハンナは父と二人フィンランドの北極圏の森で暮らす.
日夜父と格闘技,銃撃,狩猟,世界各国語の学習,百科事典の暗記等の訓練をひたすら繰り返す.
外の世界に出たいと懇願するハンナに父親は無線機のスイッチをわたし,世界に出たければそのスイッチを押す様言う.そのスイッチを押すとマリッサという女が来るが,彼女を殺してベルリンで落ち合おうというのだ.
ハンナはそのスイッチを押し,父親は一足先に森を脱出,ハンナは侵入してきた特殊部隊員に連れられ,マリッサが担当する米国CIAのモロッコ基地に拘束される….
人を殺すことを何とも思わない,殺人マシン・ハンナのある種ファンタジックな物語.
父とマリッサの確執の経緯や,ハンナが何故その渦中に巻き込まれなければならないのかは,極めてあいまいで,良く分からず終い.4_3
また,フィンランドの森の中で拘束されたハンナが基地を脱出すると,そこはモロッコの砂漠の真ん中という設定もシュールに過ぎる.
それよりはこの映画は,俳優の魅力で見る映画だ.
特に「ラブリー・ボーン」で主演した透明感ある美少女:シアーシャ・ローナンの魅力ある「純真無垢」な殺人マシンぶりは特筆に値する.
一方で電気もテレビも知らず,「音楽」はその定義を百科事典で知っているだけのハンナが,スペインで初めて見聞きするフラメンコに魅了されていくシーンは,大方の観客の共感を呼ぶだろう.他方,拘束された基地で一瞬の間に数名のエージェントを殺し脱出するその早業,追跡をかわしつつ独力で父との集合地点にたどり着くその能力には(まあ突っ込みたいところもあるが)圧倒されよう.2_2
エリック・バナ,ケイト・ブランシェットも期待通りの味を出している.ケミカルブラザースの音楽も悪くない.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-

日記:2012年1月某日
映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」を見る.4_2
長い題名だが,「連合艦隊司令長官 山本五十六」という三船敏郎主演の映画が別にあるのである.
監督:成島出.監修:半藤一利.
出演:役所広司(山本五十六),玉木宏(真藤利一),柄本明(米内光政),柳葉敏郎(井上成美),阿部寛(山口多聞),吉田栄作(三宅義勇),椎名桔平(黒島亀人),益岡徹(草野嗣郎),袴田吉彦(秋山裕作),五十嵐隼士(牧野幸一),河原健二(有馬慶二),碓井将大(佐伯隆),坂東三津五郎(堀悌吉),原田美枝子(山本禮子),瀬戸朝香(谷口志津),田中麗奈(神崎芳江),中原丈雄(南雲忠一),中村育二(宇垣纏),伊武雅刀(永野修身),宮本信子(高橋嘉寿子),香川照之(宗像景清).
1939年,日独伊三国同盟締結の機運が朝野を上げて盛り上がる中,海軍大臣米内光政,次官山本五十六,軍務局長井上成美の3名はあくまで反対論を譲らず,一旦は日独伊三国同盟は棚上げとなる.
しかしその後山本は聯合艦隊司令長官に転出,日独伊三国同盟は締結され,日米開戦は避けがたいものとなっていった.3_2
山本はあくまで開戦を避けようと願いながら,一方で真珠湾奇襲作戦を準備することとなる….
山本五十六の人間像を通して太平洋戦争の勃発と,講和が何故出来なかったかを描く.
映画で強調されていることの一つは,世論が(大新聞の煽りがあったにせよ)戦争を支持し,戦争を避けようとした勢力に悪口雑言を投げつけたことである(戦争を支持する理由は景気が悪いことだった).この世論を背景に,軍を含めた官僚達が雪崩を打って開戦への圧力を強めていく.
誠に政官軍にとって戦争は巨大な利権であった.それは今,政官産にとって原子力が巨大な利権であることと全く同じである.
また大新聞が戦争を煽り,事実を隠して大本営発表を国民に押しつけた構造は,今マスメディアが原子力について行っていることと全く同じである.
この映画はそういう意味では誠に現代的な映画であろう.1
個人的には聯合艦隊と山本五十六のファンである僕にとっては誠に辛い映画で,特にミッドウェイ海戦の敗北は見るに忍びない.映画はこの作戦の失敗を南雲中将に負わせているが,その辺りはいささか類型的な感じがする.山本自身にも幾つかの誤りはあったであろう.
そこを踏み込まないことや,最期は小椋佳の叙情的な歌で終わるのも,如何にも日本映画的.
★★★☆(★5個が満点)
ところで映画の最終局面,山本五十六を乗せた一式陸攻機は密林に突っ込み爆発炎上するが,記録に依れば機体は破損したものの爆発はしておらず,山本五十六の遺骸は発見され回収されたとのこと.
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独断的映画感想文:ソーシャル・ネットワーク

日記:2012年1月某日
映画「ソーシャル・ネットワーク」を見る.2
2010年.監督:デヴィッド・フィンチャー.
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ),アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン),ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー),アーミー・ハマー(キェメロン&タイラー・ウィンクルボス),マックス・ミンゲラ(ディビヤ・ナレンドラ),ブレンダ・ソング(クリスティ・リン),ルーニー・マーラ(エリカ),ジョセフ・マッゼロ(ダスティン・モスコヴィッツ),ジョン・ゲッツ(サイ),ラシダ・ジョーンズ(マリリン・デルピー).
ハーバード大学の学生マークは,ある日恋人のエリカと話しをしてて言い合いになる.
上から目線で一方的なマークの言いぶりにエリカは絶交を宣言,頭に来た上酔っていたマークは,エリカの悪口・中傷をブログに載せただけでなく,女子学生の品定めプログラムを開発して,各学生寮の女学生の個人情報と写真をハッキング,これを公開して男子学生が自由に女子学生を品定めできる様にした.
たちまちオンラインのアクセス数は急上昇,ハーバードのサーバーはパンクする.
これで名を売ったマークは,学生クラブの実力者・双子のウィンクルボス兄弟の依頼で,学生交流用のネットワーク作りを引き受ける.
資金担当に唯一の親友エドゥアルトを誘ったマークは,斬新なアイディアを次々に打ち出しそのネットワークは人気を得てアカウント登録はうなぎ登りとなる.3
マークはナップスターで有名なショーンの知遇を得て,Facebookと名付けたネットワークの開発に奔走するが….
Facebookの創設者の物語,映画は途中からFacebookを巡るマーク,ウィンクルボス兄弟,エドゥアルトの訴訟を前提とした調停の場をメインとしながらその後の経過を追っていく.
如何にもという感じの,アメリカの才能に恵まれた学生の起業とそれを巡る学生同士の争いを描いて面白い.
マークの様な人がアメリカ社会の成功者なのだろうか?映画は必ずしもそう主張している訳ではない.
結果としてはマークは和解金を払って事態を解決するが,マークが正義であった訳ではない.
唯一の友エドゥアルトを失い,エリカは忘れられないままだ(エリカに自分が何をしたか,マークは正しく認識しているのだろうか?).
という訳で,映画は普通の成功者の裏面を描いた実録ものという感じである.
俳優の台詞が概してとんでもない早口なのが鬱陶しい.
起業で成功するにはこんなスピードでの会話と攻撃的な態度が必要なのかと,反発を感じてしまう.
映像的にはウィンクルボス兄弟を一人が演じていたというのが傑作,何でそんな手間をかけたんだろう?(双子という設定をやめる,本当の双子に演じさせると,他の手段もあったと思うのだが).
アカデミー賞総なめという迫力は感じませんでした.4
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:国立劇場初春歌舞伎公演「通し狂言 三人吉三巴白浪」「奴凧廓春風」

日記:2012年1月某日
歌舞伎「国立劇場開場45周年記念歌舞伎」を見る.Sanninkitisa20120103
演目は1.河竹黙阿弥=作「通し狂言 三人吉三巴白浪 (さんにんきちさともえのしらなみ)  四幕七場」.序幕:大川端庚申塚の場.二幕目:第一場 割下水土左衛門伝吉内の場,第二場 本所お竹蔵の場.三幕目:第一場 巣鴨在吉祥院本堂の場,第二場 同 裏手墓地の場,第三場 同 元の本堂の場.大詰:本郷火の見櫓の場.
2.河竹黙阿弥=作・鈴木英一・国立劇場文芸課=補綴.「奴凧廓春風 (やっこだこさとのはるかぜ)」.
出演:松本幸四郎,中村福助,市川高麗蔵,大谷廣太郎,大谷廣松,松本金太郎,市川寿猿,中村歌江,松本錦吾,市川染五郎,大谷友右衛門.
1.は河竹黙阿弥の傑作.
100両の金と庚申丸という名刀が次々と人手に渡りながら悲劇を巻き起こしていく,お坊・和尚・お嬢の三人吉三の物語.
冒頭,いきなり庚申丸のやり取りがあるのだが,この辺の事情が判然としないままいきなりお嬢吉三が夜鷹から100両を奪い川に放り込む.
この出だしの経緯は後から説明があるものの,如何にも唐突である.
しかしその後の展開は名場面,名台詞の連なりに誘われ気持ちよく見た(途中開幕前に振る舞われた升酒が効いて気持ちよく寝たところもあったが).
特に第3幕吉祥院本堂の場での,お坊とお嬢の悪党二人のやり取りが切なくて宜しい(この二人は未だ20歳前後という設定である).
またそれに続く,裏手墓地の凄惨な殺し,本堂に戻っての謎解きでドラマが展開して,本郷火の見櫓の大詰めに至る辺りは,見応えあり.
役者は皆それぞれに良く,高麗蔵と友右衛門のカップルも素敵でした.Kokuritu1201032
2.も黙阿弥の作品,曽我もので始まった郭前の場から舞台はどんどん変転し,その郭の亭主幸四郎とせがれ金太郎が揚げた奴凧が,染五郎となって宙吊り(舞台の上空で舞い踊ります)後更にくるくると回転.
染五郎は空中で回転する振り付けが好きなのかしら.
最期は奴凧を突っかけて暴れるイノシシを染五郎が退治しておしまい.
お正月らしい楽しい舞台であった.終了は16:15.
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