独断的映画感想文:アレクサンドリア
日記:2012年1月某日
映画「アレクサンドリア」を見る.
2009年.監督:アレハンドロ・アメナーバル.
出演:レイチェル・ワイズ(ヒュパティア),マックス・ミンゲラ(ダオス),オスカー・アイザック(オレステス),マイケル・ロンズデール(テオン),サミ・サミール(キュリロス),アシュラフ・バルフム(アンモニオス).ルパート・エヴァンス(シュネシオス),ホマユン・エルシャディ(アスパシウス),オシュリ・コーエン(メドルス).
4世紀のアレクサンドリア,図書館長の一人娘ヒュパティアは,学生に自然哲学を講義する美貌の学者である.
異なる宗教を信じる学生達を分け隔てなく扱い,自分の奴隷のダオスにも講義への参加を許す彼女は,ひたすら学問に打ち込み男性からの求婚も断っていた.
折しもアレクサンドリアではキリスト教徒が勢いを増し,ユダヤ教徒と連合した彼らは,図書館に依る古代神を信奉する学者・上流階級と衝突,遂に図書館は彼らに奪われ集積された書籍はことごとく灰燼に帰した.
その後ヒュパティアは自邸で研究を重ね,教え子達は形式的にキリスト教徒に改宗して政府の要職に就いていた.
勢力の伸張を狙うキリスト教徒はユダヤ教徒を殺戮,更に政府の実権を握ろうと,司令官オレステスの師であるヒュパティアに魔手を伸ばす….
ヒュパティアは実在の学者で,キリスト教徒に惨殺された.
この映画で描かれるキリスト教はまさに邪教で,彼らのために人類の科学は1200年停滞したとまで映画は述べている(映画では,ケプラーの惑星公転周期に関する法則を,ヒュパティアが見いだしかけていたことが示唆されている).
アメナーバル監督はよくまあここまでキリスト教を悪し様に描いたものである.
日本で特定の宗教を題材にこういう映画を撮ること自体考えられないであろう.
悲運の女性ヒュパティアを演じるレイチェル・ワイズが美しく魅力的.また,彼女の学生で彼女に求婚もしたオレステスの人物像も魅力がある.
ヒュパティアに憧れ,彼女に解放された後,キリスト教徒に転じる奴隷のダオスの運命も印象に残る.
映画は,宇宙から俯瞰した地球,更にその地中海南岸のアレクサンドリアの映像をしばしば挿入し,天文学に没頭するヒュパティアと併せて,宗教を巡って古都アレクサンドリアで殺し合う人間達と対比させている.今に繋がる人間の愚かさとして無常感を感じざるを得ない.
もっと若い時に見たら別な感想を持ったかも知れないが,今見るこの映画には.むなしさを痛感する次第.
★★★☆(★5個が満点)
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