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2012年2月に作成された記事

2012/02/24

独断的映画感想文:ブラック・スワン

日記:2012年2月某日
映画「ブラック・スワン」を見る.8
2010年.監督:ダーレン・アロノフスキー.
出演:ナタリー・ポートマン(ニナ・セイヤーズ),ヴァンサン・カッセル(トーマス・ルロイ),ミラ・クニス(リリー),バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ),ウィノナ・ライダー(ベス・マッキンタイア).
ニューヨークのバレー団で踊るニナは美貌の優等生,しかし監督のトーマスからは「不感症」と渾名されている.
バレー団は折しも永年プリマを務めたベスが引退,「白鳥の湖」で白鳥と黒鳥の2役を務めるプリマを選出する最終段階にあった.
最終候補に残ったニナはトムに直訴し見事プリマを射止めるが,白鳥はともかく黒鳥を踊るレッスンは難しく,その面では奔放な踊りを見せる新人のリリーに気後れを感じるニナだった.
レッスンの重圧と,家に戻れば自身の挫折を娘の成功で取り返そうというモンスター化した母親との葛藤で,ニナの心は次第に壊されていく….6_2
物語のごく始めから,画面のあちこちに微妙な違和感がちりばめられ,それは壁に掛けてある絵の一部が動いたのではないかとか,誰かの声が聞こえたのではないかとかいうものだが,映画の進行に伴ってそれはますます激しくなり,終盤では殆どホラー映画と思わせる様な妄想と悪夢の連続となる.
その中で踊り続けるニナは黒鳥に開眼したのか,それとも自分との戦いに敗れて滅び去ったのか,ラストシーンの解釈さえ何通りにも取れる映画である.
ナタリー・ポートマンは,プリマドンナを演じるに相応しいレッスンと体型の管理で迫真の演技.
ヴァン・サン・カッセル,リリー役のミラ・クニスも魅力的だった.1_2
画面の展開に引きずり込まれ,一気に見る映画.怖かったが面白かった.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:アンノウン

日記:2012年2月某日
映画「アンノウン」をみる.1
2011年.監督:ジャウマ・コレット=セラ.
出演:リーアム・ニーソン(マーティン・ハリス博士),ダイアン・クルーガー(ジーナ),ジャニュアリー・ジョーンズ(エリザベス・ハリス),エイダン・クイン(もう一人のマーティン),ブルーノ・ガンツ(エルンスト・ユルゲン),フランク・ランジェラ(ロドニー・コール).
バイオ学会に出席のため妻と共にベルリンに降り立ったマーティン博士,空港にアタッシュケースを忘れたのに気付き,ホテル玄関で妻と別れ空港に引き返す.
ところがタクシーは思わぬ事故に遭遇して川に転落,運転手ジーナの奮闘でマーティン博士は救助され一命を取り留めるが,記憶の一部を失い病院に搬送される.
ところが妻を案じて退院しホテルに駆けつけたマーティンは,目の前で妻が他の男と連れ立っているのを目撃する.その男は自分がマーティン博士だと名乗り,免許証やパスポートも持っていた上,妻がその男が自分の主人だと言う.3
ホームページで自分の大学のサイトを見ると,その男がマーティン博士として掲載されている.一体何が起こったのか,自分の記憶が誤っていたのか?
マーティンは失意のうちにホテルから病院に戻るが,自分をつけてくる男に気付く.
病院では,その男によって看護師が殺され,自分の点滴に不審な薬剤が注射される事件が発生する.辛くも脱出したマーティンは何らかの陰謀が進行中と確信,看護師に教えてもらった元シュタージの男ユルゲンと運転手ジーナを探しだし,事件解決への協力を依頼する….
この映画のポイントは偶然の事故をきっかけにマーティン博士に対する陰謀が発動した様に見える,その謎は如何に,ということに尽きる.
それが分からないから映画に惹きつけられ最期まで見てしまうが,謎が見えてしまえばなーんだと言うことで,そうなると山程突っ込みたいところが出てしまう.
とにかくこの映画は「未だかって失敗したことのない暗殺者集団」による一大テロ事件の一角なのだが,そのテロリスト達の出来が悪すぎる.
一部ネタばらしすることになるが,彼等は素人の女性タクシー運転手ジーナにこてんぱんにやっつけられる.一体どういうことであるか.0
おまけに最期はハッピーエンドになるが,こんなことはあり得ないことである.
およそスパイサスペンスの基本原則をこれほどあっけらかんと踏みにじる作品も珍しい.
まあ,見終わった後でじわじわ怒りの湧いてくる映画だが,見ている最中はあまりそういうことは考えないで済むのは確か,見た後深く考えなければ問題はないのかも.
★★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:新橋演舞場2月大歌舞伎

日記:2012年2月某日
新橋演舞場2月大歌舞伎夜の部をみる.Shinbashi201202b
「一、御存 鈴ヶ森(すずがもり)」.
出演:幡随院長兵衛(吉右衛門),東海の勘蔵(彌十郎),北海の熊六(錦之助),飛脚早助(家橘),白井権八(勘三郎).
名台詞の応酬で有名な鈴ヶ森だが,僕には今ひとつこの芝居の良さが判らない.
白井権八がばったばったと雲助をなぎ倒すのが良いのか(雲助の切られ方には創意工夫がある様だが,そんなもの今の世の中ではギャグにもならない),幡随院長兵衛との出会いが素晴らしいのか(別にどきどきしませんでした),白井権八そのものが格好良いのか.
もう少し勉強しなくては.
吉右衛門の台詞回しは,さすがに格好良い.
「二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)」.
勘太郎改め勘九郎,幹部俳優出演.
口上はいつも面白いものだが,左団次が担当していた全体の調子を狂わす曝露話の役を,弥十郎が引き継いでいた様である.といっても弥十郎が勘三郎より年下だということが判った程度.
それより傑作だったのは,仁左衛門が中村小さん三の名前をど忘れして絶句したことで,隣の東蔵に聞いて何とか窮地を脱したが,後はしどろもどろで散々な出来.客席は大受けであった.
勘九郎の決意は聞いてて気持ちが良い.この俳優の応援をしなければという気分になった.
「三、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」.
小姓弥生後に獅子の精(勘太郎改め勘九郎),胡蝶の精(玉太郎),同(宜生),用人関口十太夫(亀蔵),家老渋井五左衛門(家橘).
僕には踊りの世界のことは全く判らないが,この1時間続く舞踊は,いったいどうやって創作され,ビデオもない時代をどのように今日まで受け継がれてきたのか,そこが僕にとっての謎である.
勘九郎の小姓弥生は,長身な上男顔の勘九郎にもかかわらず,高い緊張感で美しい娘踊りとして最期まで堪能した.
獅子に変身してからは,りりしいその姿にうっとり.勘九郎の気迫に圧倒された思い.
「四、ぢいさんばあさん」.
美濃部伊織(三津五郎),宮重久右衛門(扇雀),宮重久弥(巳之助),妻きく(新悟),戸谷主税(桂三),石井民之進(男女蔵),山田恵助(亀蔵),柳原小兵衛(秀調),下嶋甚右衛門(橋之助),伊織妻るん(福助).
この芝居は好きである.年をとってきてますます好きになった.
今回は三津五郎のじいさんが素晴らしい.
若いときも悪くなかったが,じいさんになってからの雰囲気が実に良い.これは好き嫌いだと思うが,こういうじいさんになりたいものである.
ばあさんの福助には,武士の妻で大名家の奥女中の筆頭取締りまでした女性の奥ゆかしさが,もう少し欲しかった.
満足して終演.

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2012/02/11

独断的映画感想文:BIUTIFUL ビューティフル

日記:2012年2月某日
映画「BIUTIFUL ビューティフル」を見る.Biutiful2
2010年.監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ.
出演:ハビエル・バルデム(ウスバル),マリセル・アルバレス(マランブラ),エドゥアルド・フェルナンデス(ティト),ディアリァトゥ・ダフ(イヘ),チェン・ツァイシェン(ハイ),アナー・ボウチャイブ(アナ),ギレルモ・エストレヤ(マテオ),ルオ・チン(リウェイ).
ネタバレあります.
冒頭の2シーン,一つは暗い部屋で語られる指輪の物語,かって父から母に贈られた指輪を,今おまえに譲ると,男が娘に話しかけている.娘の手がその指輪を男の小指から抜き,自分の薬指に指す.
次のシーン,男は雪の森にいる.りりしい青年が現れ,男にたばこを勧める.静寂の森でたばこを吹かし微笑みを交わす二人.やがて二人は歩き始める….Biutiful4
バルセロナで不法移民の仕事を斡旋するウスバル,霊能者でもある彼は,死者から死の状況を聞きあの世に迷いなく旅立てる様助言するという仕事もしている.
父は彼が生まれる前にファシストに反対してメキシコに亡命し,客死した.母は彼が幼い頃亡くなった.
妻は精神を病み子どもを虐待するので今は別居し,2人の子どもは彼が育てている.
ところがそのウスバルに癌が見つかった.癌は進行し既に余命は2ヶ月という.
2人の子の行く末を案じた彼は妻と同居,少しでも稼ごうと仕事に奔走するが….
ウスバルは基本的に良い奴である.情報量が多くかつ味わい深い映像から,彼が家族を愛し,子供と強い絆で結ばれていることが伺える.Biutiful5
移民達に対しても彼はそれなりの誠意を持って対応し,彼等が無事に稼げる様に意を尽くすのだが,それは決してうまくいかない.
それどころかウスバルも移民達も度重なるトラブルに見舞われる.
一旦は同居した妻ともうまくいかず,彼が心中の苦悩を話せるのは霊能者仲間と思える老婦人只一人である.その婦人から与えられた2つの黒い石ころが,彼が子供達に残す唯一の贈り物となる….
人生の辛さ厳しさ,生と死,この世に自分が何を残せるのかということを考えさせる映画.
たんたんと描かれるウスバルと子供達の最期の日々は心に残る.
ウスバルの苦闘の日々が終わりに近づくとき,観客も彼が子供達に何が残せるのかを納得して見ることになる.
映画の最後のシーン,物語は始まったところで終わるのだ.Biutiful3
見て損のない映画,ハビエル・バルデムは期待を裏切らない好演.
ウスバルが霊能者であるということはいささか蛇足の様にも思えるが,映画に別の角度の緊張感を与えているのは間違いない.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン

日記:2012年2月某日
映画「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」を見る.2
2011年.監督:マイケル・ベイ.
出演: シャイア・ラブーフ(サム・ウィトウィッキー),ジョシュ・デュアメル(ウィリアム・レノックス),ジョン・タートゥーロ(シーモア・シモンズ),タイリース・ギブソン(ロバート・エップス),ロージー・ハンティントン=ホワイトリー(カーリー・スペンサー),パトリック・デンプシー(ディラン・グールド),ケヴィン・ダン(ロン・ウィトウィッキー),ジュリー・ホワイト(ジュディ・ウィトウィッキー),ジョン・マルコヴィッチ(ブルース・ブラゾス),フランシス・マクドーマンド(シャーロット・メアリング).
トランスフォーマーのシリーズは初めて見る.
トランスフォーマーの星「サイバートロン」で繰り広げられた善玉オートボットと悪玉ディセプティコンの闘いは後者の勝利に終わり,オートボットは今地球に永住して人類と共存している.
オートボットの盟友サムは,FBIに追及された前歴がたたり,就職できずに恋人カーリーのアパートに居候している.
一方1960年代に月にサイバートロンの宇宙船が不時着,それを知った米ソ両国は月への人類の到達を試みたが,発見された宇宙船の情報はすべて闇に葬られていた.1
今その不時着宇宙船に眠るオートボットの英雄・センティネルと物体転位装置であるスペースブリッジを巡り,オートボットとディセプティコンの暗闘が始まる….
2時間を遙かに超える長尺で物語も複雑を極め,しかもオートボットとディセプティコンの区別が見た目殆どつかないと言う悪条件下,結構面白く見られたのは結局単純な海兵隊式アタックの物語に収斂していったためだろうか.
ヒーローとヒロインの位置づけも,後半の戦闘場面ではヒロインの分は悪かったものの,まず妥当なものだったし,娯楽映画として充分面白い映画.
オートボットのそれぞれの個性は殆ど区別がつかないが,これは僕がAKB48の面々の区別がつかないのと同じことかも知れない.若い観客にはそれぞれお気に入りのオートボットがいたりするのだろうか?
本当は映画館で3Dで見るべき映画,音響も轟き渡る迫力で聞くべきであろう(この年度のもっとも喧しい映画のベストに選ばれた作品らしい).3
素直に圧倒的映像と音響を楽しめる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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