独断的映画感想文:ツリー・オブ・ライフ
日記:2012年4月某日
映画「ツリー・オブ・ライフ」を見る.
2011年.監督:テレンス・マリック.
出演:ブラッド・ピット(オブライエン),ショーン・ペン(ジャック),ジェシカ・チャステイン(オブライエン夫人),フィオナ・ショウ(祖母),ハンター・マクラケン(若きジャック(長男)),ララミー・エップラー(R.L.(次男)),タイ・シェリダン(スティーヴ(三男)).
映画の冒頭聖書の「ヨブ記」の引用.この「ヨブ」記は中盤の教会のシーンでも解説される.
次いでオブライエン夫人の少女時代とおぼしき映像と共に,修道女から聞いた「人生には世俗的な道と恩寵と共に歩む道がある」という言葉が語られる.
不思議な光の揺らめく映像の後,オブライエン夫人が息子の死の報せを受け取るシーン,オブライエン氏がそれを聞く電話ボックスのシーン,葬儀のシーンが続き,やがて映画は宇宙の始まりから惑星の誕生,生命の始まりから恐竜の時代までを総括する長大な叙事詩に至る.
続いて現代のジャックが登場,彼は19才で失った弟のことが未だ頭から離れない.
彼の回想として始まる1950年代の彼等3兄弟の誕生へと映画は進む.
信仰深く深い愛情を持って子供達を育てるオブライエン夫人,一方オブライエンは息子達を愛しながらも,まさに世俗的な道を生きる人として,息子達に自分への絶対服従を強いながら強く生きることを求める.
思春期にいたり,ジャックは父を憎みながらも自分も弟に絶対服従を求め,その自分を持て余し苦しむ日々を送る….
一筋縄ではいかない映画である.
ふんだんにちりばめられる宇宙,波,樹々の緑の映像と回想するジャック自身のイメージ,回想される両親と子供達の映像も,あるいは時を溯りあるいは特定のエピソードを差しはさむ.
この映画は物語がテーマを解決していくのではなく,映像の連なりがジャックの精神的浄化を暗示していく映画の様である.
観客は母親の愛情深い生き方も,父親の一方的な愛情表現が子供達には全く受け容れられない状況も,そのまま受け止めることになるだろう.
その蓄積の中でジャックが苦しんでいく過程は痛々しい.ブラッド・ピットに生き写しの次男役:ララミー・エップラーが愛らしい.
この監督独特の表現がユニークな映画,一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
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