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2012年5月に作成された記事

2012/05/26

独断的映画感想文:一枚のハガキ

日記:2012年5月某日
映画「一枚のハガキ」を見る.12
2010年.監督:新藤兼人.
出演:豊川悦司(松山啓太),大竹しのぶ(森川友子),六平直政(森川定造),大杉漣(泉屋吉五郎),柄本明(森川勇吉),倍賞美津子(森川チヨ),津川雅彦(松山啓太の伯父・利ヱ門),川上麻衣子(松山美江),絵沢萠子(利ヱ門の女房),大地泰仁(森川三平),渡辺大(下士官),麿赤兒(和尚).
森川定造は小作で妻と両親を養う貧農.
戦争末期に招集され,松山啓太と出会う.
二人のいた部隊は次の任地をくじで決めることになり,100名の内60名はフィリピンへ,30名は潜水艦乗りへ,10名は国内に留まることになる.
定造はフィリピンのくじに当たった.13
その妻友子は定造の死後,義父の指示で定造の弟三平と結婚するが,その三平も招集され戦死する.義父は失意の内に病に倒れ死亡,その葬儀を済ませた後,義母は自殺する.
一方松山啓太は国内に留まるくじに当たり,終戦後無事復員するが,招集中に妻と実父は大阪に駆け落ちしていた.
啓太は暫く無為に時を過ごしていたが,故郷を捨てブラジルに行くつもりで家と船を売り払う.荷物整理のさなか啓太は定造から預かった妻友子からのハガキを見つけ,友子を訪ねることにする….
これが物語の前半,後半は啓太と友子が出会い,どのような結末にいたるか.11
新藤監督の映画作りは誠に自在なもの,前半のややこしい状況の無理のない説明も達者であるが,後半の啓太と友子の物語も実に融通無碍な展開.ユーモア有り,感情の爆発有り,そして感動有り.
観客は,大竹しのぶとトヨエツの芝居を存分に楽しむだろう.
ところでこの映画には如何にもという悪人は出てこない.友子と啓太の物語は,戦争の愚かしさ・酷さを訴えて余りあるが,それではその戦争は誰が起こしたのか.
何時か僕たちは,ああ戦争はこの様にして起きるのか,と愕然と悟る時があるかも知れない.
100歳の監督は,そんなことにならないようにと,せっせと映画を撮り続けているのではあるまいか.
その迫力を感じて★★★★(★5個が満点).
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2012/05/19

独断的映画感想文:阪急電車 片道15分の奇跡

日記:2012年5月某日
映画「阪急電車 片道15分の奇跡」を見る.5
監督:三宅喜重.
出演:中谷美紀(高瀬翔子),戸田恵梨香(森岡ミサ),南果歩(伊藤康江),谷村美月(権田原美帆),有村架純(門田悦子),芦田愛菜(萩原亜美),小柳友(カツヤ),勝地涼(小坂圭一),玉山鉄二(遠山竜太),宮本信子(萩原時江).
関西私鉄の雄・阪急電鉄の支線・今津線は,宝塚から西宮北口を結ぶ片道15分のローカル線.
この線を舞台に繰り広げられる人生模様の群像劇である.
登場するのは,婚約者を「寝取られ」復讐のため花嫁より派手な純白の衣装で披露宴に乗り込んだ翔子,恋人のDVに悩むミサ,傍若無人で厚かましいおばはんグループの誘いを断れない主婦康江,田舎出の関西学院学生美帆,軍事オタクの関西学院学生圭一,関西学院を目指す受験生悦子,孫とこの電車によく乗る老婦人時江,いじめに悩む小学生翔子である.4
それぞれの抱えた悩みを10月の時点で披瀝し,3月の時点でその解決編を描く,それに電車の上り・下りが対応しているというのが映画の構造.
阪急電車と関西学院がえらい好意的に扱われとるやンか,という点を除けば,そこそこ面白い群像劇.
文句をつければ,特に前半は演技派の女優のくさい芝居が鼻につく.
宮本信子は言うに及ばず,中谷美紀,南果歩の芝居も恥ずかしくて見ていられない.後者2名については設定に無理がありすぎる.3
如何に恋人に裏切られたからといって,花嫁以上の派手な純白衣装でしかも阪急電車に乗って更に車内で泣き出すという人がいるでしょうか.その異常な女に声をかけ座らせて話し込み,1駅間で問題を「解決」しちゃうという老婦人も普通いないだろう.
この映画は最初からファンタジーだと割り切っても,このあまりに異常な設定は観客として受け容れがたい.
逆に心温まるのは権田原美帆と小坂圭一のカップルのエピソードで,彼等がクリスマスの夜にどうなったかは是非知りたかった(この生真面目なカップルが部屋に二人きりで手にはコンドームを握り,ぎごちないキスを交わしているというところで画面は暗転).彼等二人の電車内の妄想シーンも実にステキ.
役者では一番うまかったのは言うまでもなく芦田愛菜.玉山鉄二も良かった.
優劣こき混ぜて全体としては★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 五月大歌舞伎 昼の部

日記:2012年5月某日
平成中村座で歌舞伎を見る.Nakamuraza201205b
「平成中村座 五月大歌舞伎」昼の部.
「一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 十種香(じゅっしゅこう)」
出演:八重垣姫(中村七之助),腰元濡衣(中村勘九郎),原小文治(片岡亀蔵),白須賀六郎(坂東橘太郎),長尾謙信(坂東彌十郎),武田勝頼(中村 扇雀).
本日も席は桜席.
開演前は舞台に焚かれたお香が桜席にはひとしお強烈である.
この幕の内側の2階席からは,普段見えないものが見える反面,普通見えて当然のものが見えない不都合もある.この十種香では,肝心の八重垣姫が前半殆ど見えず残念.
しかしこの八重垣姫はお姫様なのに大変な発展家,謙信が出てこなければ腰の引けている勝頼を濡衣の協力の下寝所に連れ込もうとしていた訳で,この狂言全体をじっくり見てみたいものである.
橘太郎が口跡良く元気な芝居で印象的.
「三社祭七百年記念 二、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)」
出演:武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精(市川染五郎),神功皇后/善玉/通人/獅子の精(中村勘九郎).
本日の白眉と言うべき踊り,勘九郎・染五郎の踊りだが,4通りの扮装を早変わりで披露し,二人とも殆ど休みなく共に踊りっぱなしという体力勝負.
最後の獅子の精は浅葱幕の裏で全身の扮装と隈取りを変えるのが桜席からは丸見え,勘九郎の堂々たる体格が瞥見できる(染五郎は着ぶくれるための詰め物を着たまま).汗だくのご両人,高麗屋はうちわで,中村屋は扇風機で風を送っているのが何だかおかしい.
獅子の精の毛振りは誠に迫力有り.
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ) め組の喧嘩(めぐみのけんか)」
出演:め組辰五郎(中村勘三郎),辰五郎女房お仲(中村扇雀),四ツ車大八(中村橋之助),露月町亀右衛門(中村錦之助),柴井町藤松(中村勘九郎),おもちゃの文次(中村萬太郎),島崎抱おさき(坂東新悟),ととまじりの栄次(中村虎之介),喜三郎女房おいの(中村歌女之丞),宇田川町長次郎(市川男女蔵),九竜山浪右衛門(片岡亀蔵),尾花屋女房おくら(市村萬次郎),江戸座喜太郎(坂東彦三郎),焚出し喜三郎(中村梅玉).
僕の嫌いな演し物である.嫌いなのは,喧嘩を止める正論があたかも「非国民」の様に嘲られ罵倒されて,声の大きいより喧嘩っ早い者の言いなりに集団が雪崩を打っていくところなのである.
粋でいなせで「火事と喧嘩は江戸の花」を体現している様な若い衆の芝居としては当然の展開であるが,こういう芝居で胸がすっとしないのが,我ながらやっかいな性分と言える.
とは言え,役者は皆生き生きとし,テンポよく良い芝居.特に錦之助が素敵だった.
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2012/05/18

独断的映画感想文:ステキな金縛り

日記:2012年5月某日
映画「ステキな金縛り」を見る.1
2010年.監督:三谷幸喜.
出演:深津絵里(宝生エミ),西田敏行(更科六兵衛),阿部寛(速水悠),竹内結子(日野風子/矢部鈴子),浅野忠信(木戸健一),草なぎ剛(宝生輝夫),中井貴一(小佐野徹),市村正親(阿倍つくつく),小日向文世(段田譲治),小林隆(管仁),KAN(矢部五郎),木下隆行(工藤万亀夫),山本亘(日村たまる),山本耕史(日野勉),戸田恵子(猪瀬夫人),浅野和之(猪瀬),生瀬勝久(占部薫),佐藤浩市(村田大樹),深田恭子(前田くま),篠原涼子(悲鳴の女).
やる仕事やる仕事うまくいかない崖っぷち弁護士のエミ,引き受けた殺人事件の被告はアリバイがあるというのでその現場,山奥の「しかばね荘」を訪れる.
宿泊したエミは金縛りに遭い,落ち武者の幽霊・六兵衛と出会う.六兵衛が被告を金縛りにしたアリバイの証人なのである.
エミは勇躍,六兵衛を法廷に引っ張り出そうとするが,幽霊は見えない人の方が圧倒的で….
その幽霊を法廷に引っ張り出し,お人好しの裁判官を説き伏せて証人採用させて,法廷シーンと犯人捜しが展開する映画.
きら星のごとき有名俳優が有象無象のちょい役で登場する.笑いあり涙ありの上質のエンタテインメント.
但し僕はこの映画をあまり楽しめなかった.2
これは結局この映画を見た時の僕の気分が,映画の方向と会っていなかったためと思われる.
僕はむしろ中井貴一が愛犬ラブと戯れるあのシーンで涙が溢れてしまって困った.死者達を扱う映画が僕の心を鷲掴みにするのは,「異人達との夏」で証明済みである.
もう少し心に余裕のある,コメディを充分に楽しめる時にもういちど見るのが良いかもしれない.
その時まで点数はお預け.まあ,見て損はない映画.
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2012/05/13

独断的映画感想文:マネーボール

日記:2012年5月某日
映画「マネーボール」を見る.2_2
2011年.監督:ベネット・ミラー.
出演:ブラッド・ピット(ビリー・ビーン),ジョナ・ヒル(ピーター・ブランド),フィリップ・シーモア・ホフマン(アート・ハウ監督),ロビン・ライト(シャロン),クリス・プラット(スコット・ハッテバーグ),ケリス・ドーシー(ケイシー・ビーン),スティーヴン・ビショップ(デヴィッド・ジャスティス).
2001年のシーズン,ヤンキースにプレイオフで惜敗した貧乏球団アスレチックス,おまけにこのシーズンオフに主力の3選手がことごとく他球団に引き抜かれる.
若きゼネラルマネジャー(GM)ビリーは花形高校球児,大学への奨学金も得ながらスカウトされてプロ入りしたものの,鳴かず飛ばずのまま引退した経歴を持つ.
オーナーから金は出せないと宣言されたビリーは,トレード交渉で訪れたインディアンズで働くピーターと出会う.
独自のデータ分析で選手を評価するピーターを,自分のチーム運営になくてはならない逸材と見たビリーは,彼を引き抜き二人で「マネーボール」理論に則った選手獲得を始める….
GMビリー・ビーンの成功物語.4_2
このプロとしての実績もなく,強引で独断的,しかも新理論をチームに適用しようというビリーが成功するには,ひとかたならぬ苦難の道がある.
これは従来の選手評価の視点の変更であり,ビリー自身が蹉跌を味わった直感的主観的スカウト方法の否定だったからだ.
映画では選手・監督の同意が得られず,連敗を重ねるアスレチックスの苦境が描かれる.
しかしビリーは一歩も引かない.
ビリーは選手達に優勝を目指すと宣言,個々の選手に自分の戦略を浸透させていく.一方,ビリーが獲得した選手を使わず,新人王候補の選手に固執する監督に対しては,その新人王候補を敢えて放出して対抗する.
監督との確執はなかなかにスリリングだ.5
ブラッド・ピットがこの個性あふれるGMを好演,時折訪れる愛娘との交流も微笑えましい(ケリス・ドーシーが買ってもらったギターで歌う自作の歌が可愛らしい).
見て損のない映画.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ナイン・ソウルズ

日記:2012年5月某日
映画「ナイン・ソウルズ」を見る.2
2003年.監督:豊田利晃.
出演:原田芳雄(長谷川虎吉),松田龍平(金子未散),千原浩史(車一馬),鬼丸(宍戸ラン),板尾創路(亀井富士夫),KEE(猿渡清),マメ山田(白鳥ひでみ),鈴木卓爾(乾真一),大楽源太(牛山一郎),伊東美咲(ユリナ),京野ことみ(佳子),唯野未歩子(ミサオ),今宿麻美(希新),鈴木杏(ガン子),松たか子(ユキ),藤木悠(定食屋の主人),麿赤兒(駄菓子屋の主人),國村隼(元偽札王 山本),北村一輝(タモリ),瑛太(金子ノボル),井上順(中山).
刑務所で同房の長谷川虎吉ら9名はいずれも懲役10~15年のそうそうたる面々,偶然見つけた抜け穴から脱走する.
首尾良くキャンピングカーを奪取し,一同は仲間の偽札王・山本が金を埋めたという小学校のタイムカプセルを目指す.
結局金は埋まっておらず,彼らは強盗・かっぱらい等を繰り返しながら珍道中を続ける.
やがて自分の女や育った地元等,立ち寄ってはならないそれぞれの場所目指して彼らは個々に動き始めるのだが….3_2
9人の中では「息子殺し」の長谷川,「父親殺し」の金子未散の確執が前半の軸である.
長谷川は,リーダーシップがあるが絶対服従を求めるタイプ,金子はその長谷川をつけ狙う.原田と松田の絡みが印象的.
俳優は異色の面々が豪華にキャスティングされ,なかなかに見応え有り.
伊東美咲のストリップショー(ミュージックは何と浅川マキの「ちっちゃな時から」)も見てのお慰み.
後半ロードムービーの夢は終わり,それぞれが非業の最期を遂げたり捕まったり,人生の決着がついていく.
そのエピソードは悲哀に満ちているが,最後のシーンで観客は癒やされるだろう.
極悪人どもが演じる心温まるファンタジー.1_2
個人的には千原浩史,板尾創路,北村一輝が好き.
★★★☆
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独断的映画感想文:ツレがうつになりまして

日記:2012年5月某日
映画「ツレがうつになりまして」を見る.4
2011年.監督:佐々部清.
出演:宮崎あおい(髙崎晴子(ハルさん)),堺雅人(髙崎幹男(ツレ)),吹越満(杉浦),津田寛治(髙崎和夫),犬塚弘(川路),梅沢富美男(三上隆),田山涼成(加茂),山本浩司(君塚),中野裕太(小畑),田村三郎(津田),大杉漣(栗田保男),余貴美子(栗田里子).
漫画家・細川貂々の原作による映画化.
売れない漫画家ハルさんは唯一の連載を打ち切られ元気ない毎日.
夫のツレはコンピュータ会社の苦情相談係,リストラで人員不足のなか偏執的な苦情を指名されて受け続け,ついに鬱になる.1
ツレは会社を辞めハルは看病に心を砕きつつ,自分が漫画で稼がねばと決意を打ち固める….
鬱病のドキュメント映画という訳ではないから,紆余曲折は経つつもツレの鬱の症状は比較的早めに和らぎ,ハルも漫画家と成功して映画はハッピーエンド.
それよりこの映画は,鬱をきっかけに人生を考え直し,やり直す若い夫婦の物語として印象的である.
この映画の題名は,まさにハルのやり直しのターニングポイントになった言葉と言えよう.
その夫婦に堺雅人と宮崎あおいを配したというキャスティングが,この映画の成功の大きな要因である.両者のそれぞれの演技は,鬱患者と漫画家として,いかにもと納得させるものがある.
そして観客に対しても,自分の人生を振り返らせるものがある.3
見て良かった映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/05/01

独断的映画感想文:ラビット・ホール

日記:2012年4月某日
映画「ラビット・ホール」を見る.1_2
2010年.監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル.
出演:ニコール・キッドマン(ベッカ・コーベット),アーロン・エッカート(ハウイー・コーベット),ダイアン・ウィースト(ナット),タミー・ブランチャード(イジー),マイルズ・テラー(ジェイソン),ジャンカルロ・エスポジート(オーギー),ジョン・テニー(リック),パトリシア・カレンバー(ペグ).ジュリー・ローレン(デビー),サンドラ・オー(ギャビー).
8ヶ月前に4才の一人息子を自動車事故で亡くしたコーベット夫妻.
その痛手から未だ立ち直ることは出来ない.
ベッカの妹が妊娠しそのお祝いをしなければとか,隣人から夕食誘われたりとか,日常の些細な出来事にも心は揺れ動く.2
ベッカとハウィーの夫妻間にも考えの違いがあり,その葛藤に諍いも起こる.
夫妻は共に子供を失った遺族の会にも参加するが,ベッカはその会を「神様ごっこ」と嫌って止めてしまう.止めずに通い続けるハウィーは,その会員の離婚女性ギャビーに安らぎを感じ接近していく.
そんなある日,ベッカは通学バスに加害者の学生・ジェイソンの姿を見つけ,思わずその後を追うが….
題名のラビット・ホールは不思議の国のアリスに出てくる,アリスが突然落ち込んだ不思議な世界に通じるうさぎの穴であり,またジェイソンが平行宇宙の概念に基づいて自作しているコミックの題名でもある.
この映画は,アメリカ映画とは思えない程淡々として静かに夫婦の再生を描いている.3
夫婦それぞれその悲しみは痛切であるにもかかわらず,一方は思い出に生き,一方は思い出を消し去ろうとする.
その両者の行く末を,映画は穏やかに提示していく.
ニコール・キッドマンが美しすぎることはある点でマイナスかも知れないが,共感を感じる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ヌードの夜

日記:2012年4月某日
映画「ヌードの夜」を見る.1
1993年.監督:石井隆.
出演:竹中直人,余貴美子,根津甚八,椎名桔平,清水美子,岩松了,小林宏史,田口トモロヲ,室田日出男.
映画の冒頭,ホストクラブの支配人行方に金を届ける名美,そのまま行方の部下仙道の見る前で体を開く.
名美は行方に長年強請られており,広瀬との婚約を機に行方との仲を清算しようとしていた.
何でも代行屋の紅次郎(村木)にホテルの部屋を取らせた後,その部屋に行方を呼び出し遂には殺害してしまう.
翌日,名美の呼び出しに応じてホテルの部屋を訪れた村木は行方の死体を発見,しかし名美に一目惚れしていた村木は行方の死体をトランクに詰め,ホテルから持ち出す.
仙道は行方の後を追い村木にたどり着く.村木と名美への仙道の暴力的追及が始まるが….
石井隆監督の独特の雰囲気が貫徹されている映画.
但しあらすじを紹介した前半は,描写も雑で展開も荒削り.
村木がやたらと仙道やら街のやくざやらに暴行される(竹中直人をぶちのめしたいという石井監督の欲求は理解できる(?)が)のはちょいとやり過ぎ.
しかし終盤,村木と名美が追い詰められ,名美が車ごと海へ突っ込むシーンの辺りからにわかに緊張感が高まってくる.
そして題名の「ヌードの夜」である,最終場面の男女の別れの場の哀切さは,筆舌に尽くしがたい.
余貴美子がささやく様に歌うエンディングテーマ,「I’m a fool to want you」は観客の心に長く残るであろう.
この映画の真骨頂はまさにこの,ラスト30分にあると言える.
それ以外は正直言ってどうでも宜しい.
なお,この名美が車で海に突っ込むシーンでは,車と共に水没したのは余貴美子自身であり,また海中に幾度も潜って遂に名美を救い出す村木の長回しのシーンも竹中直人と余貴美子の吹き替え無しの演技である.
この撮影のために両名はスキューバダイビングの訓練を受けたそうな.
僕は竹中直人がだいっ嫌いなので,この映画の村木役はミスキャストだと確信するが,竹中直人のこの根性は評価します.恐れ入りました.
★★★★(★5個が満点)
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