番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 五月大歌舞伎 昼の部
日記:2012年5月某日
平成中村座で歌舞伎を見る.
「平成中村座 五月大歌舞伎」昼の部.
「一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 十種香(じゅっしゅこう)」
出演:八重垣姫(中村七之助),腰元濡衣(中村勘九郎),原小文治(片岡亀蔵),白須賀六郎(坂東橘太郎),長尾謙信(坂東彌十郎),武田勝頼(中村 扇雀).
本日も席は桜席.
開演前は舞台に焚かれたお香が桜席にはひとしお強烈である.
この幕の内側の2階席からは,普段見えないものが見える反面,普通見えて当然のものが見えない不都合もある.この十種香では,肝心の八重垣姫が前半殆ど見えず残念.
しかしこの八重垣姫はお姫様なのに大変な発展家,謙信が出てこなければ腰の引けている勝頼を濡衣の協力の下寝所に連れ込もうとしていた訳で,この狂言全体をじっくり見てみたいものである.
橘太郎が口跡良く元気な芝居で印象的.
「三社祭七百年記念 二、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)」
出演:武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精(市川染五郎),神功皇后/善玉/通人/獅子の精(中村勘九郎).
本日の白眉と言うべき踊り,勘九郎・染五郎の踊りだが,4通りの扮装を早変わりで披露し,二人とも殆ど休みなく共に踊りっぱなしという体力勝負.
最後の獅子の精は浅葱幕の裏で全身の扮装と隈取りを変えるのが桜席からは丸見え,勘九郎の堂々たる体格が瞥見できる(染五郎は着ぶくれるための詰め物を着たまま).汗だくのご両人,高麗屋はうちわで,中村屋は扇風機で風を送っているのが何だかおかしい.
獅子の精の毛振りは誠に迫力有り.
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ) め組の喧嘩(めぐみのけんか)」
出演:め組辰五郎(中村勘三郎),辰五郎女房お仲(中村扇雀),四ツ車大八(中村橋之助),露月町亀右衛門(中村錦之助),柴井町藤松(中村勘九郎),おもちゃの文次(中村萬太郎),島崎抱おさき(坂東新悟),ととまじりの栄次(中村虎之介),喜三郎女房おいの(中村歌女之丞),宇田川町長次郎(市川男女蔵),九竜山浪右衛門(片岡亀蔵),尾花屋女房おくら(市村萬次郎),江戸座喜太郎(坂東彦三郎),焚出し喜三郎(中村梅玉).
僕の嫌いな演し物である.嫌いなのは,喧嘩を止める正論があたかも「非国民」の様に嘲られ罵倒されて,声の大きいより喧嘩っ早い者の言いなりに集団が雪崩を打っていくところなのである.
粋でいなせで「火事と喧嘩は江戸の花」を体現している様な若い衆の芝居としては当然の展開であるが,こういう芝居で胸がすっとしないのが,我ながらやっかいな性分と言える.
とは言え,役者は皆生き生きとし,テンポよく良い芝居.特に錦之助が素敵だった.
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