番外:独断的歌舞伎感想文:ヤマトタケル-新猿之助襲名-
日記:2012年6月某日
新橋演舞場で歌舞伎「スーパー歌舞伎 三代猿之助 四十八撰の内 ヤマトタケル」を見る.
出演:小碓命後にヤマトタケル/大碓命(亀治郎改め猿之助),帝(中車),タケヒコ(右近),ワカタケル(初舞台 團子),兄橘姫/みやず姫(笑也),弟橘姫(春猿),老大臣(寿猿),ヘタルベ(弘太郎),帝の使者(月乃助),倭姫(笑三郎),熊襲弟タケル/ヤイラム(猿弥),尾張の国造(竹三郎),皇后/姥神(門之助),熊襲兄タケル/山神(彌十郎).
幕が開くと劇中の衣装のまま猿之助と中車が平伏している.
二人だけの口上であるが,通常の挨拶に加えて二人はこもごも歌舞伎というもの,襲名というものについての自分の考えを語るのである.
二人の熱情が印象的だった.
一旦幕が下りるが,その幕(写真)は口上の中で猿之助が言及した福山雅治の幕である.
中央は猿之助3代の隈取りを重ね合わせたものだそうだ.誰も見たことのないこの隈取りは,代々続く襲名のようだと,口上で新猿之助が言っていた.
.「ヤマトタケル」は2008年3月に市川右近で見たことがある.
その時と同じ感動を得たのは,やはりヤマトタケルの物語が完成度高く胸を打つものだからであろう.
クマソ征伐の胸のすく様な立ち回りも良いが,ヤマトに恋いこがれてタケヒコの腕の中で落命するタケルの哀しさには,涙を誘われる.
今回はとりわけヤマトタケルのテーマの一つである父と子の葛藤が,中車と猿翁の経緯に重ね合わされて観客の感銘にも繋がるのだろう.
新・猿之助は立ち回りよく口跡良く,またヤマトタケルの少年の様な心映えを演ずるに相応しい若々しさを示して,感動的だった.
右近のタケヒコも落ち着きある演技でヤマトタケルと良いコンビネーション.
2階の西の席にいたため,最後の宙乗りは猿之助が目の前を天がけていく.素敵な3時間半だった.
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