独断的映画感想文:ドラゴン・タトゥーの女
日記:2012年7月某日
映画「ドラゴン・タトゥーの女」を見る.
2011年.監督:デヴィッド・フィンチャー.原作:スティーグ・ラーソン.
出演:ダニエル・クレイグ(ミカエル・ブルムクヴィスト),ルーニー・マーラ(リスベット・サランデル),クリストファー・プラマー(ヘンリック・ヴァンゲル),スティーヴン・バーコフ(ディルク・フルーデ),ステラン・スカルスガルド(マルティン・ヴァンゲル),ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン(ニルス・ビュルマン),ベンクトゥ・カールソン(ホルゲル・パルムグレン),ロビン・ライト(エリカ・ベルジェ),ゴラン・ヴィシュニック(ドラガン・アルマンスキー),ジェラルディン・ジェームズ(セシリア),ジョエリー・リチャードソン(アニタ),インガ・ランドグレー(イザベラ・ヴァンゲル),ペル・ミルバーリ(ハラルド・ヴァンゲル).
映画のオープニングタイトルのバックにツェッペリンの「移民の歌」フルコーラスが流れる.まずはこれで映画に引き込まれてしまう.
冒頭,電話する老人二人,今年も送られてきましたと話す.テーブルの上には野草の押し花.
さて,大物実業家の不正行為を暴いた月刊「ミレニアム」の記者ミカエルは,名誉毀損裁判に敗れ資産を失う窮地に陥る.そんな彼に引退した実業家ヘンリックが自分の評伝を書いて欲しいと連絡してきた.
しかしその真の依頼は,40年前に起きた親族の少女ハリエットの失踪事件の真相究明にあった.ハリエットは失踪前から,毎年ヘンリックの誕生日に押し花を送っていた.今でも押し花が送られてくるが,誰がそれを送ってくるのか.
一族の本拠地であり事件の発生現場でもある島のコテージに滞在したミカエルの捜査は,思う様に進まない.そこにヘンリックの弁護士が,情報収集のための助手・リスベットを紹介する.
彼女は過去に事件を起こし保護観察中だったが,天才的ハッカーでフットワークの良いエージェントだった.ミカエルとリスベットの捜査により,40年前の恐るべき真相が徐々に姿を現してくる….
原作は未読.しかし北欧スェーデンを舞台とした暗澹たる事件の解明という緊張感が,映画の画面からひしひしと伝わり,158分の長尺があっという間だ.
ミカエルは離婚し「ミレニアム」の経営者エリカ(ロビン・ライト,好きです)と不倫関係にある.一人娘とは仲が良いが宗教は異にする.
リースベットは過去に起こした事件もあって反社会的行動を取る.理解者であった保護観察人が脳溢血に倒れ,交代した保護観察人は精神病院への収容権をたてに彼女に性的服従を迫る,というピンチを迎える.
ヘンリックの一族は過去にナチズムに傾倒した反ユダヤ主義者もいて,互いに不仲である.
こういう登場人物の複雑な事情が明らかになっていき,謎はより深く暗い様相を呈していく.その謎を切り裂いていくミカエルと少女リスベットとのコンビネーションが新鮮だ.特にリスベットの「地獄の天使」的魅力は何物にも代えがたいこの映画最大のポイント.ラストシーンのリスベットの姿には涙を禁じ得ない.
北欧の冬の映像イメージも物語世界と良く合って印象的だ.物語の面白さ,謎解きのサスペンス,俳優の魅力,テンポ良い画面展開等いずれも素晴らしい,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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