独断的映画感想文:預言者
日記:2012年9月某日
映画「預言者」を見る.
2009年.監督:ジャック・オーディアール.
出演:タハール・ラヒム(マリク),ニエル・アレストリュプ(セザール),アデル・バンシェリフ(リヤド),ヒシャーム・ヤクビ(レイェブ).
警官を襲った罪で6年の刑期で収監された19才のマリク.施設で育った孤児で,アラブ語・フランス語の両方が話せるが字は知らない.
刑務所内はコルシカマフィアが多数派で,そのボス・セザールは,マリクに同じ棟の独居房にいる囚人の殺人を強要する.マリクは苦しんだあげく殺人を引き受け,その房を訪ねる.
標的はマリクに好意を持っていて,刑務所の中でも識字教室のあることを教え,自分の蔵書も貸すと言う.
その標的をカミソリ1枚で殺すマリク,以降マリクはアラブ人ながらコルシカグループに属し,彼等の走り使いをしてその庇護を受ける.
マリクは識字教室に通い,そこでアラブ人グループとも誼を通じる様になる.いつしかコルシカ語まで聞き覚えたマリクは,セザールに重用され,外出の権利を得た後は,セザールの使いとしてマフィアとの人脈もできる一方,先に出獄したアラブ人グループと連携して自分なりの麻薬密輸ルートを開拓し,徐々に力を蓄えていくのだった….
150分の長尺で,途中いささかだれたところもあったが,地味な刑務所内の描写が続く割りには緊張感ある映画となった.
マフィアの映画ではあるが,一方でこの映画はマリクという青年の大人への成長の記録でもある.
その成長を促す大きな力の一つは,彼が殺した標的の亡霊である.彼は時折現れマリクの相談にも乗るが,時に彼に悪夢を見せる.
表題の「預言者」は,亡霊が見せた夢がマリクにあるとき予言をさせる結果になったことによる.
映画の最後は,マリクが出獄してアラブ人の世界で生きていくことを暗示して終わるが,天涯孤独のマリクにとって刑務所は,結局自分のアイデンティティを獲得する場所であったということになる.見応えのある映画.
★★★☆(★5個が満点)
ところでセザールを演じたニエル・アレストリュプは,つい数日前に見た映画「戦火の馬」でエミリーの祖父役で出ていた人である.こういうことは時々あって,その偶然が面白い.
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