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2012年9月に作成された記事

2012/09/30

独断的映画感想文:預言者

日記:2012年9月某日
映画「預言者」を見る.4
2009年.監督:ジャック・オーディアール.
出演:タハール・ラヒム(マリク),ニエル・アレストリュプ(セザール),アデル・バンシェリフ(リヤド),ヒシャーム・ヤクビ(レイェブ).
警官を襲った罪で6年の刑期で収監された19才のマリク.施設で育った孤児で,アラブ語・フランス語の両方が話せるが字は知らない.
刑務所内はコルシカマフィアが多数派で,そのボス・セザールは,マリクに同じ棟の独居房にいる囚人の殺人を強要する.マリクは苦しんだあげく殺人を引き受け,その房を訪ねる.
標的はマリクに好意を持っていて,刑務所の中でも識字教室のあることを教え,自分の蔵書も貸すと言う.
その標的をカミソリ1枚で殺すマリク,以降マリクはアラブ人ながらコルシカグループに属し,彼等の走り使いをしてその庇護を受ける.2
マリクは識字教室に通い,そこでアラブ人グループとも誼を通じる様になる.いつしかコルシカ語まで聞き覚えたマリクは,セザールに重用され,外出の権利を得た後は,セザールの使いとしてマフィアとの人脈もできる一方,先に出獄したアラブ人グループと連携して自分なりの麻薬密輸ルートを開拓し,徐々に力を蓄えていくのだった….
150分の長尺で,途中いささかだれたところもあったが,地味な刑務所内の描写が続く割りには緊張感ある映画となった.
マフィアの映画ではあるが,一方でこの映画はマリクという青年の大人への成長の記録でもある.
その成長を促す大きな力の一つは,彼が殺した標的の亡霊である.彼は時折現れマリクの相談にも乗るが,時に彼に悪夢を見せる.5
表題の「預言者」は,亡霊が見せた夢がマリクにあるとき予言をさせる結果になったことによる.
映画の最後は,マリクが出獄してアラブ人の世界で生きていくことを暗示して終わるが,天涯孤独のマリクにとって刑務所は,結局自分のアイデンティティを獲得する場所であったということになる.見応えのある映画.
★★★☆(★5個が満点)
ところでセザールを演じたニエル・アレストリュプは,つい数日前に見た映画「戦火の馬」でエミリーの祖父役で出ていた人である.こういうことは時々あって,その偶然が面白い.
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2012/09/28

独断的映画感想文:戦火の馬

日記:2012年9月某日
映画「戦火の馬」を見る.2
2011年.監督・制作:スティーブン・スピルバーグ.
出演:ジェレミー・アーヴァイン(アルバート・ナラコット),エミリー・ワトソン(ローズ・ナラコット),デヴィッド・シューリス(ライオンズ),ピーター・ミュラン(テッド・ナラコット),ニエル・アレストリュプ(エミリーの祖父),トム・ヒドルストン(ニコルズ大尉),パトリック・ケネディ(ウェイバリー中尉),デヴィッド・クロス(ギュンター).
イギリスの農村で生まれたサラブレッドの子馬.子馬は馬好きの貧しい小作農ナラコットに買われ,その息子アルバートにジョーイと名付けられ愛情深く育てられる.
小作農ナラコットのために鋤を引く重労働もこなすジョーイだったが,ナラコットの経済的苦境のため,折しも勃発した第1次大戦の軍用馬として売却される.3
イギリス騎兵隊のニコルズ大尉の乗馬として戦争に臨んだジョーイは,しかしドイツ軍の反撃を受けニコルズは戦死,ドイツ軍の軍用馬となる.その後戦場で数奇な運命をたどるジョーイ,ついには大砲を引く軍用馬として使われ,その重労働の為死を目前にする….
この映画を見て,欧米のかって良い子だった大人達は,アンナ・シュウェルの「黒馬物語」を思い出すのではないだろうか.
幸せな子馬時代を送った主人公の馬が,持ち主の変遷に伴って辛酸をなめるこのイギリスの物語は,僕も少年時代に印象深く読んだ.
これを読んで僕が一番はっきりと持った印象は,世の中には馬に優しい人と,馬に情け容赦のない人の2種類がいるということだ.
本作の舞台は第1次大戦である.戦争の凄惨な描写が続くこの映画の中で,ほっとするものがあるとすれば,戦場の何処にでも,馬を理解し馬に優しい人間が必ずいたということだろうか.
塹壕の中間地帯で鉄条網に引っかかり動けなくなったジョーイを助けるため,命がけで白旗を掲げ救出に向かう英兵,それに応じてカッターを持って塹壕から出てくる独兵.両者が協力してジョーイを助ける一幕は,ファンタジーの様だ.4
ジョーイの所有権を巡る決着は,独兵の投げたコイントスで付けられる.では戦争もそうやって決着を付ける訳にはいかないのか?
スピルバーグはこの映画で勇気を描いたと言っている.その勇気は,戦争をしないことに向けられたら一番良かったのではないか?
映画はカメラも美しく,音楽も水準以上,しっかりした作りで,安心して少年と馬の命をかけた物語を楽しめる.
★★★★(★5個が満点)
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2012/09/23

独断的映画感想文:ブリッツ

日記:2012年9月某日
映画「ブリッツ」を見る.3
2011年.監督:エリオット・レスター.
出演:ジェイソン・ステイサム(ブラント),パディ・コンシダイン(ナッシュ),エイダン・ギレン(ワイス(ブリッツ)),ゾウイ・アシュトン(フォールズ),デヴィッド・モリッシー(ダンロップ),マーク・ライランス(ロバーツ).
アウトローの刑事ブラントとゲイの刑事ナッシュのコンビが,警官連続殺人犯「ブリッツ」と闘う姿を描くハードボイルド映画.2
ブリッツの素性は早めに知れるが,逮捕したブリッツに対する物証がなく,釈放期限の48時間が迫ってくる….
ブラントとナッシュのコンビはそれなりに面白い.ふたりのつかず離れずの,しかし芯のところでお互いをわかり合っている関係が,共感できる.
しかし犯人ブリッツの犯罪実行の状況で,行き当たりばったりの様で計算し尽くされたものだとか,逮捕したが実は物証は何もないということだとか,映画が主張することに説得性がどうも感じられない.
更に事件に絡んで登場する女性警察官フォールズの扱いが何とも中途半端に感じられる.
という訳で,見終わった後あまりすっきりしない映画.もう少し押さえるべきところは押さえてよ,という印象が残る.5
★★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 新橋演舞場 秀山祭九月大歌舞伎

日記:2012年9月某日
新橋演舞場で「秀山祭九月大歌舞伎」を見る.Shinbashi201209b
「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ) 饗応 本能寺馬盥 愛宕山連歌」
配役:武智光秀(吉右衛門),小田春永(歌六 染五郎の代役),桔梗(芝雀),山口玄蕃(錦之助),矢代條介(松江),浅山多惣(由次郎),長尾弥太郎(桂三),丹羽五郎(廣太郎),三村次郎(隼人),住職日和上人(錦吾),森力丸(種之助),森蘭丸(歌昇),園生の局(高麗蔵),安田作兵衛(又五郎),皐月(魁春),四王天但馬守(梅玉).
吉右衛門の底力を堪能できる台詞のうまさであった.
染五郎の春永を見たかった気はするが,全体的には緊張感高い舞台.桔梗の芝雀,皐月の魁春がはまり役だった.
「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ) 鐘供養より押戻しまで」
配役:白拍子花子(福助),所化(松江),同 (亀寿),同 (宗之助), 後見(児太郎),大館左馬五郎(松緑).
こちらも福助が愛嬌たっぷりに舞って長い踊りを退屈させない.
途中2回の衣装の引き抜きも見事で華麗.
個人的には途中の手拭い投げを見事キャッチできたのと,最後に出た松緑の快演に大満足.
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2012/09/17

独断的映画感想文:あなたへ

日記:2012年9月某日
映画「あなたへ」を見る.4
2012年.監督:降旗康男.
出演:高倉健(倉島英二),田中裕子(倉島洋子),佐藤浩市(南原慎一),草なぎ剛(田宮裕司),余貴美子(濱崎多恵子),大滝秀治(大浦吾郎),長塚京三(塚本和夫),原田美枝子(塚本久美子),浅野忠信(警察官),ビートたけし(杉野輝夫),綾瀬はるか(濱崎奈緒子),三浦貴大(大浦拓也).
富山刑務所の刑務官・倉島英二は,妻を悪性リンパ腫で亡くしたばかりだというのに,もう職場に出勤する.
そこにNPO法人の女性が訪れ,預かっていたという妻の遺言状を渡される.但し遺言状は2通あって,1通には故郷の平戸市の海に散骨をして欲しいと書いてあり,もう1通は平戸の郵便局留めにする様指示があったという.
局留めの期間は10日間,英二は途惑いながらも平戸目指して車で出発する.その車は,退任したら妻と旅に出るため,手作りで改装したワゴン車だった….
このようにして始まるロードムービー.3
途上で英二は様々な人と巡り会いエピソードを重ねていく一方で,亡き妻,洋子との思い出も折にふれ語られていく.
童謡歌手だった洋子は,慰問に来た刑務所で英二と知り合った.
日本各地を転勤で巡りながら,いつか海の近くに終の棲家を構えようと語り合っていたふたりだった….
この10日間の旅で,英二が妻の遺言の意味するところを納得するために,もう1通は局留めにされたのかも知れない.
この映画は高倉健渾身の演技を味わう映画,殆どのシーンに高倉健は出ずっぱりである.
脇を固める俳優達もほんの少しの役を嬉しそうに演じているのが面白い.
そのなかでも大滝秀治,余貴美子,三浦貴大の演技が印象的.
またカメラも見事で,特に洋子との思い出の地・和田山町竹田城址の引きのショット,散骨をした平戸の海の夕景のショットが,夢の様に美しい.1
洋子が歌う宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」が素晴らしかった.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2012/09/11

独断的映画感想文:リアル・スティール

日記:2012年9月某日
映画「リアル・スティール」を見る.1_2
2011年.監督:ショーン・レヴィ.
出演: ヒュー・ジャックマン(チャーリー・ケントン),ダコタ・ゴヨ(マックス・ケントン),エヴァンジェリン・リリー(ベイリー),アンソニー・マッキー(フィン),ケヴィン・デュランド(リッキー),カール・ユーン(タク・マシド),オルガ・フォンダ(ファラ・レンコヴァ),ホープ・デイヴィス(デブラ).
チャーリーはロボット・ボクシングのプレイヤー.自分のロボットを操縦してロボット・ボクシングの試合に出場する.
自身元ボクサーであるチャーリーは,試合のセンスは良いが,いい加減な性格から結果を出せない.
牛相手の闘牛に出場した時も,2万ドルの賭けを興行主とした挙げ句,試合中に観客席の美女に気を取られ惨敗.直ちに逃げ出して2万ドルは踏み倒したが,ロボットは廃品と化した.2_2
そこに知らせが届き,離婚した妻が死に,残された息子マックスの養育権は叔母のデブラが希望しているという.後継ロボットの購入費用の工面に焦っていたチャーリーは,養育権を5万ドルで叩き売る.
但しマックスはデブラ夫妻が旅行する1ヶ月間はチャーリーと暮らすことになった.早速チャーリーは後継ロボットを購入,マックスを連れて試合場に乗り込む.
しかしゲーム機で鍛えたマックスの忠告にも拘わらず,ろくに操縦法も頭に入れないまま興行師に乗せられチャンピオンと戦うことになり惨敗,ロボットはまたもや廃品となる.
諦めきれず廃品ロボットの集積場に侵入したチャーリー,マックスはそこで土砂に埋もれた旧型のロボットATOMと巡り会う….3
ここまで粗筋を書いただけで目頭が熱くなる.
ロボットものであり父子ものであり格闘技挑戦ものである本作,ロボットの名前がATOMと来ては感動しない訳にいくものか.
とにかく冒頭の一連の話でしっかりチャーリーの駄目親父加減を溜めた上で,ATOMの登場からは格闘技挑戦もの・父子鷹ものの王道を歩み,最後には劇的な最高チャンピオンとの5ラウンドマッチ.
映画の中の観客の熱狂に巻き込まれ,こちらのテンションも上がること上がること.
物語の設定がうまく,駄目親父が起死回生のヒーローとなりうる仕掛けも納得のいくもので,見終わった後味も非常によろしい.女子にはともかく男子には実にはまる快作.4_2
映画ってこうでなくっちゃ!
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:スプライス

日記:2012年9月某日
映画「スプライス」を見る.1
2008年.監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ.
出演: エイドリアン・ブロディ(クライヴ),サラ・ポーリー(エルサ),デルフィーヌ・シャネアック(ドレン),ブランドン・マクギボン,シモーナ・メカネスキュ,デヴィッド・ヒューレット.
この映画の冒頭のタイトル表示は何とも不気味,かつ凝りすぎで肝心の俳優名や映画の題名は殆ど解読不能.まずこれで引いてしまいました.
クライブとエルサは同じ生命科学研究所に勤める研究者.人類以外の動物のDNAを掛け合わせ,有用なタンパク質を生産する新しい生命体ジンジャーとフレッドの開発に成功する.
エルサは更にこの生命体を人間のDNAと結合させ,より人類に有用なタンパク質生産体を生み出そうと考える.
研究所の禁止命令にも拘わらずエルサは人間の卵子へのこのDNAの受精を密かに強行,やがて新しい生命体が誕生する.
この生命体は当初鳥の雛の様な形態で生まれたが,急速に成長して変態を繰り返し,やがて美しい女性の形態を取る.2
研究所に隠しきれなくなったクライブとエルサは,ドレンと名付けた生命体をエルサの亡き母の農場に匿うことにする….
ドレンという生命体はそれなりに魅力あるモンスター,尻尾があり(その先端には毒針がある)足がダチョウであることを除けば美しい女性である.
しかしあらゆる遺伝子が結合しているので水中でも呼吸が出来,いざとなると羽が出現し空を飛び,かつ実は肉食獣である.
一方あらゆる倫理規定と科学者の良心を踏みにじってドレンを誕生させたクライブとエルサの方は,マッドサイエンティストというよりは愚かなオタクコンビ,ドレンを生み出したエルサの真意は,科学的好奇心というよりは自分の死んだ母親との心理的葛藤によるものらしい.
あの可愛らしかったサラ・ポーリーが,眼の据わったキャシー・ベイツの様な演技でエルサを演じるのも興醒め(キャシー・ベイツさんごめんなさい,他意はありません).4
全体としては悪い意味でのB級映画感が強く,楽しめなかった.
関与する人間が愚かすぎて,悲劇性も恐ろしさも迫ってこない,無駄な2時間であります.
★☆(★5個が満点)
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2012/09/02

独断的映画感想文:最強のふたり

日記:2012年9月某日
映画「最強のふたり」を見る.1
2011年.監督:エリック・トレダノ.
出演:フランソワ・クリュゼ(フィリップ),オマール・シー(ドリス),アンヌ・ル・ニ,オドレイ・フルーロ,クロティルド・モレ,アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ,トマ・ソリヴェレ,シリル・マンディ,ドロテ・ブリエール・メリット.
パラグライダーの事故による頸椎損傷で,首から下は動かない大富豪のフィリップ.
介護人を募集した中に混じっていた黒人青年ドリスは,傍若無人な人物.介護経験も無く,失業保険取得のため不採用の署名を取りに来たのだった.
その歯に衣着せぬ言動に興味を持ったフィリップは,彼を採用する.障害者にも遠慮は無用と本音で接してくるドリスは,最初こそ様々な混乱をもたらしたが,やがてフィリップとの間にかけがえのない結びつきを築く様になる….2
事実に基ずく映画.
スラムに暮らし,大勢の兄弟との間に複雑な関係を持つドリスだが,人間に対する天性の洞察力と底抜けの明るさで,フィリップのなくてはならない存在となっていく.
一方,知性と教養,財力に恵まれたフィリップが,自分の障害を文通相手には隠すということが物語の転回点となって,最終局面ではその結果を観客は目の当たりにするだろう.
映画は終始コメディ仕立てで,場内からは絶えず笑い声が起こっていたが,人間の精神の自由さとは何かという映画の主題は,しっかりと観客の得るところとなる.3
見終わって心が開かれ,気分の明るくなる映画,見て損はなし.
★★★★☆(★5個が満点)
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2012/09/01

独断的映画感想文:ヒューゴの不思議な発明

日記:2012年9月某日
映画「ヒューゴの不思議な発明(DVD)」を見る.2
2011年.監督:マーティン・スコセッシ.製作にはジョニー・デップも参加.
出演:ベン・キングズレー(パパ・ジョルジュ),ジュード・ロウ(ヒューゴのお父さん),エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カプレ),クロエ・グレース・モレッツ(イザベル),レイ・ウィンストン(クロードおじさん),エミリー・モーティマー(リゼット),ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ),クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス),マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール),フランシス・デ・ラ・トゥーア(マダム・エミール),リチャード・グリフィス(ムッシュ・フリック),サシャ・バロン・コーエン(鉄道公安官).
映画の冒頭,幾重にも重なり合った歯車の美しい回転,それがパリの夜景に溶け込んでいって,エッフェル塔を見晴らすパリ全景となる.
更にカメラはパリの鉄道駅へズームし,人混みを抜けて駅舎のとある時計をクローズアップ,数字の窓の向こうから覗いているのが本編の主人公ヒューゴである.この現代映画ならではの掴みはなかなかのもの.
ヒューゴは父と二人暮らし,父は精密機械職人で,ある日博物館に放置されていた機械人形を家に持ち帰る.二人で,その自動で字を書くと言われる機械人形の修理に没頭する毎日.
ところが父は博物館の火事で不慮の死を遂げる.4_2
ヒューゴは飲んだくれの叔父クロードに引き取られ,クロードが職場とするパリの鉄道駅の時計管理を仕込まれる.クロードが姿を消してからは,ヒューゴは一人で駅のすべての時計管理をこなしながら,たった一つ残された形見・機械人形の修理に取り組む.
駅構内のおもちゃ屋からその部品を盗もうとしたヒューゴは,店を営むジョルジュに捕まり,父の残した手帳も取り上げられるが,その養女イザベルと友達になる.
イザベルの協力で機械人形は再生し,二人の見守る中人形が書き上げた書類は思いもかけぬものであった….
駅舎の裏に張り巡らせられた通路を自在に使って,人に気付かれず時計を管理できるヒューゴ.そのヒューゴがイザベルの協力を得て機械人形を再生させる.
題名からはそれが主題の映画かと思いきや,後半の展開は全く異なったもので,映画の黎明期に活躍した先人へのオマージュにあふれた心温まるエピソードが披露される.5
機械人形が描き出した書類が提示された以降は,あれよあれよと映画が展開するのが痛快である.
映画好きにはたまらない映画,二人の子役(といってももう経験豊富なミドルティーンだが)が個性含めて手応えあり.
最後のハッピーエンドで,結局この映画の主題は,親のない少年少女の再生の物語なのだと確認できたのが嬉しい.見終わって幸せになれる素敵な映画.
蛇足:この映画の日本名は嘘です.この映画の中でヒューゴは不思議も何も発明など一切しません.観客をミスリードする最悪の題名.原題は只「ヒューゴ」8
★★★★(★5個が満点)
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