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2012年11月に作成された記事

2012/11/18

独断的映画感想文:ALWAYS 三丁目の夕日'64

日記:2012年11月某日
映画「ALWAYS 三丁目の夕日'64」を見る.Always641
2011年.監督:山崎貴.
出演:吉岡秀隆(茶川竜之介),堤真一(鈴木則文),小雪(茶川ヒロミ),堀北真希(星野六子),もたいまさこ(大田キン),三浦友和(宅間史郎(特別出演)),薬師丸ひろ子(鈴木トモエ),須賀健太(古行淳之介),小清水一揮(鈴木一平),染谷将太(ケンジ),マギー(精肉店・丸山),温水洋一(自転車屋・吉田),神戸浩(電報局員),飯田基祐(中島巡査),ピエール瀧(氷屋),蛭子能収(電気屋),正司照枝(産婆),森山未來(菊池孝太郎),大森南朋(富岡),高畑淳子(奈津子).米倉斉加年(茶川林太郎).
おなじみシリーズの3作目.Always643
鈴木オートの六ちゃんこと星野六子は病院の医師菊池に心を寄せ,毎朝道での出会いを楽しみにしている.しかしたばこ屋の太田キンの聞き込みに寄れば,病院をいくつもクビになった素行の悪い医師らしい.
一方小説家茶川は小説が不調で,唯一の連載が新進小説家の猛追で継続危うしの状況下,息子の淳之介には東大に進学し安定した道を歩めと発破をかける毎日である.ところが遂に連載は打ち切られるが,相手の新進小説家は意外な人物であることが判る….Always645_2
好調シリーズは,東京オリンピックを背景に三丁目の新たな展開を描くが,今回のテーマは出会いと別れを巡る葛藤である.
家と家族が未だ機能していたこの年代ならではの家族間の葛藤は,70年代に至って新たな展開を遂げるその直前の,言わば懐かしい葛藤である.
前回は未だ子役だった須賀健太に泣かされたが,今回は六ちゃんのロマンスに泣かされ,吉岡秀隆と須賀健太の親子の応酬に泣かされた.
映画の「幸せとは何か」という問いの答は未だに僕らの問いであり続ける.Always644
映画の最後で東京タワーから見通す東京湾までに高層ビルは一つもないが,今超高層ビルの林立する東京は,64年の幸せには遙かに及ばない混迷の中にいるだろう.
一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:キツツキと雨

日記:2012年11月某日
映画「キツツキと雨」を見る.4
監督:沖田修一.
出演:役所広司(岸克彦),小栗旬(田辺幸一),高良健吾(岸浩一),臼田あさ美(麻生珠恵),古舘寛治(鳥居),黒田大輔(柴田),森下能幸(吉岡),高橋努(野宮),嶋田久作(篠田),平田満(ゴマ満春),伊武雅刀(石丸),山崎努(羽場敬二郎).
岸克彦は山仕事が生業である.
今日も山でチェーンソウを使っていると,映画の撮影があるのでちょっと止めてくれと依頼される.数日後,その助監督らしい男・鳥居と田舎道で出会った克彦は,依頼されるままにロケハンに付き合い,挙げ句の果てに自らゾンビとなって映画に出演する羽目になる.
助監督の後ろでもそもそしている若者が実は監督田辺で,自分の脚本を初めて監督するチャンスに恵まれたものの,スタッフ・役者に強いことが言えず現場は混乱の度を深めていく.
人の良い克彦は,定職に就かずふらふらしている息子・浩一との経緯もあって田辺に肩入れし,村人をエキストラに声をかけ動員するなど次第に深入りしていくのだが….2
何とも心温まるのんびりドラマである.
克彦,浩一,田辺等はいずれも極めて無口で会話もスムースに進まないが,その会話の間が何とも言えずユーモラスで良い.あまり説明もなく事実の積み重ねで展開していく物語も,全体の雰囲気やテンポと良く合って,だれることなく進んでいく.
監督田辺の苦悩や,克彦と浩一の葛藤,山間の人々の人情味ある生活が,次第に見えてくると映画も佳境である.
田辺が監督として自立していく過程,ゾンビ映画のクライマックスで田辺が示す決断が事態を切り開いていく展開など,胸が熱くなるシーンがあって印象的.3_2
映画が好きな人には心地よい映画である.
役所広司と小栗旬が素敵.山崎努が短いシーンながらさすがの貫禄で,おいしい役どころを怪演.見て損は無し.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:パーフェクト ワールド

日記:2012年11月某日
映画「パーフェクト ワールド」を見る.6
1993年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:ケヴィン・コスナー(ブッチ・ヘインズ),クリント・イーストウッド(レッド・ガーネット),T・J・ローサー(フィリップ・ペリー),ローラ・ダーン(サリー・ガーバー),キース・ザラバッカ,レオ・バーメスター,ブラッドリー・ウィットフォード,ジェニファー・グリフィン.
映画の冒頭,明るい日の射す草原に横たわる男,ドル紙幣が幾枚か傍らを吹き飛ばされていく.頭上にはヘリコプターが旋回している.
画面は切り替わって,刑務所からの脱走のシーン.同房のブッチとテリーは刑務所をハロウィーンの夜脱出,車を奪って近くの村まで来る.
ここでテリーが住宅に侵入,女性を襲ったことから騒ぎとなり,二人はこの家の息子,フィリップを人質にとって逃亡する.
途中少年を襲おうとしたテリーをブッチが射殺,ブッチはフィリップを連れアラスカを目指す旅に出る.一方,警察署長レッドと知事の特命を受けたプロファイラー・サリーは,FBIの男(名前は失念)と共に知事の特別仕様車で追跡を開始する….
殺人者と人質のロードムービー.
ブッチは残忍な男という予断が観客に与えられるが,実はそれほどの悪人ではないことが次第に見えてくる.ただ,ブッチには少年時代に父親に暴力を振るわれたトラウマがあって,テリーを射殺したのもそこに原因がある.
一方フィリップは父親不在で,母親は「エホバの証人」の教義を厳格に守る人物,フィリップはクリスマスもハロウィーンも参加できず,遊園地に連れて行ってもらったこともない.
二人は次第に打ち解けて,その逃避行をむしろ楽しんでいる様に見えてくる.3
追う立場のレッドは実はかって少年時代のブッチの裁判で証言した人物,ブッチの人となりを知っている.
映画は追われるものと追うもののこういう状況を紹介しながら,とぼけたユーモアを交えゆったりしたテンポで進行して行く.クリント・ イーストウッドは脇役として力を抜いた演技だが,ケヴィン・コスナーの持ち味を十分に生かした佳作.
一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2012/11/04

独断的映画感想文:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

日記:2012年11月某日
映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見る.1
2011年.監督:フィリダ・ロイド.
出演:メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー),ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー),オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー),ロジャー・アラム(ゴードン・リース),スーザン・ブラウン(ジューン),ニック・ダニング(ジム・プライアー),ニコラス・ファレル(エアリー・ニーブ),イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ),リチャード・E・グラント(マイケル・ヘーゼルタイン),アンソニー・ヘッド(ジェフリー・ハウ),ハリー・ロイド(若き日のデニス),アレクサンドラ・ローチ(若き日のマーガレット).
映画の冒頭,年老いた夫人がコンビニ店で牛乳を買っている.
如何にも覚束ない足取りで帰宅するその夫人,マーガレット・サッチャー.パンをトーストし卵をゆでる.夫と共に朝の食卓に向かうが,その人は今は亡きデニスだ.
夫人はしばしばデニスと語らうが,その幻覚を忌々しく思う時もある.2
この映画は認知症が進んでいるマーガレット・サッチャーの,政治家としての一生を回想しつつ,現在の状況を描くものである.
普通これだけの政治家の一生を描けば,肯定的であれ否定的であれ一貫した物語で主人公を描くだろう.観客はその主人公にもっと何らかの共感を持つことになる筈だ.
しかしこの映画はそういう映画ではない.映画は過去の政治家としての充実した日々,非難され罵倒される中で歩み続けついに保守党党首となった時,フォークランド紛争時にアメリカ国務長官の恫喝を拒絶して開戦を命じた時を描く一方,子どもを振り捨てて入閣を決意した時,君臨して傲慢な首相となったサッチャーも描く.
しかもその描写は断片的で,すぐに現在の覚束ない日々に帰ってくるのだ.
そうすると,映画が本当に描こうとしているのは,栄光のサッチャーではなく現在の惨めなサッチャーではないか,と思えてくる.4
映画は見応えはあった(メリル・ストリープの演技はやはり一見の価値有り.それとアカデミー賞のメイクアップ賞を獲得したのは納得がいく)が,共感することを拒否された映画という印象が残った.希有なことではあるな.
★★★☆(★5個が満点)
しかし日本でこういう映画が撮れるだろうか?とは,先に「クィーン」を見たときにも思ったことだ.(若松監督亡き今)日本で今上天皇や石原慎太郎のこういう映画が製作されることって,あるのだろうか?
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