独断的映画感想文:少年と自転車
日記:2012年11月某日
映画「少年と自転車」を見る.
2011年.監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ.
出演:セシル・ドゥ・フランス(サマンサ),トマス・ドレ(シリル),ジェレミー・レニエ(シリルの父),ファブリツィオ・ロンジョーネ(書店の店主),エゴン・ディ・マテオ(ウェス),オリヴィエ・グルメ(居酒屋の主人).
映画の冒頭,必死になって電話をかける少年.電話が通じないと見るや,周囲の大人の手を振り切って屋外に飛び出し,金網を乗り越えて脱出しようとする.
少年は母親に死別したシリル,父親の希望で施設に預けられたが,シリルの知らない間に父親は引っ越しをしてしまい,シリルの自転車まで売り払ってしまったらしい.
そのことをどうしても信じられず自宅に電話をかけるシリル.施設職員の手配で空き家になったアパートに行ってみる.空っぽの部屋を呆然と見る少年.
偶然シリルと知り合った美容師のサマンサは,父親が売り払った自転車を見つけ買い戻してくれた.シリルはサマンサに頼み込んで父の居場所を共に捜す.
ようやく父の居場所を見つけるが,父親はシリルにもう来るなと告げるのだった….
父に捨てられ全てのものに不信感を持つシリル.未だ12才の彼は,しかし不屈の闘志を持つ真っ直ぐな少年でもある.
サマンサは週末だけの里親としてシリルを土日だけ自宅に引き取ってくれることになった.しかしシリルに街のチンピラも目をつける.
何ものにも油断しまいというシリルも,自分も施設で育ったというそのチンピラには心を開いてしまう.シリルの運命や如何に,という物語.
シリルのイガイガに尖った心情が痛々しい.にこりともせず泣きもせず,しかし時には突然の自傷行為に走るシリルに胸を打たれる.
一方そのシリルの親という立場を引き受けるサマンサは,一人前の大人とはどういうものかをシリルに見せつける点で,印象的.
映画中盤の,脇目も振らずに一心に自転車をこぎ続けるシリルの長回しのシーンが心に残る.
時折挿入されるベートーベンのピアノ交響曲「皇帝」の第2楽章の断章が効果的だった.
そういえば,以前見たダルデンヌ兄弟の映画では,音楽は使われていなかったのではないか?
★★★★(★5個が満点)
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