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2013年1月に作成された記事

2013/01/27

独断的映画感想文:わが母の記

日記:2013年1月某日
映画「わが母の記」を見る.2
2011年.監督:原田眞人.
出演:役所広司(伊上洪作),樹木希林(八重),宮崎あおい(琴子),南果歩(桑子),キムラ緑子(志賀子),ミムラ(郁子),赤間麻里子(赤津),菊池亜希子(紀子),三浦貴大(瀬川),真野恵里菜(貞代),三國連太郎(隼人).
題名からはいわゆる母ものを想起されるが,この映画は作家井上靖(映画では伊上洪作)の一族の15年にわたる家族の相克の記録であり,井上靖と母親との確執の物語でもある.
映画は1959年,伊豆湯ヶ島に父の危篤を見舞う井上靖のシーンから始まる.ここで井上の母八重,2人の妹が紹介され,帰郷した井上の家で妻と3人の娘が紹介される.
この時点で井上は既に流行作家であり,家族はその作家を支えて多忙であった.この頃から調子が次第におかしくなった母に,井上一家は振り回されることになる….3_2
井上には母八重に捨てられたという恨みがある.井上は5才から13才までを,母と離れて伊豆湯ヶ島の本家で祖母ぬいに預けられて過ごした.このことは成人した今となっても井上の胸に確執となって残っている.
そのことを巡る謎,母の老化,家族の成長を映画は同時並行に語っていく….
脚本の確かさ,映像の美しさ,俳優達の好演等,良い映画の条件を全てクリアした映画である.特に樹木希林の演技は入魂,鬼気迫るものがある.役所広司,宮崎あおいは期待通りだ.
音楽は挿入曲・バッハのバイオリン協奏曲始めなかなかに素敵.
僕は子供の頃,井上靖の少年時代を描いた「しろばんば」という小説を読んだことがある.この小説はベストセラーとなり子供向けのTVドラマにもなった.4
ここで描かれた洪作少年とおぬいばあちゃの物語は,長い年月を経てこの映画にたどり着いたと言える.僕にとっては「しろばんば」で始まった井上靖の生涯は,この映画で完結したという印象を持った.
誠に遠大な一つの物語の結実である.感動しないではいられない.また,大人になった僕の目から見て,人生の終盤でのこの親子の物語は心を動かされずにいられない.
そのことを素直に表現した映画として,お勧めしたい.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ダーク・シャドウ

日記:2013年1月某日
映画「ダーク・シャドウ」を見る.3
2012年.監督:ティム・バートン.
出演:ジョニー・デップ(バーナバス・コリンズ),ミシェル・ファイファー(エリザベス・コリンズ・ストッダード),ヘレナ・ボナム=カーター(ジュリア・ホフマン博士),エヴァ・グリーン(アンジェリーク・ブシャール),ジャッキー・アール・ヘイリー(ウィリー・ルーミス),ジョニー・リー・ミラー(ロジャー・コリンズ),クロエ・グレース・モレッツ(キャロリン・ストッダード),ベラ・ヒースコート(ビクトリア・ウィンターズ/ジョゼット),ガリー・マクグラス(デヴィッド・コリンズ),イヴァン・ケイ(ジョシュア),スザンナ・カッペラーロ,クリストファー・リー(クラーニー),アリス・クーパー,ウィリアム・ホープ(保安官).
リバプールから新大陸に向かったコリンズ一家は,彼の地で水産加工業に成功し財をなす.
ところが,息子バーナバスと通じた使用人のアンジェリークが魔女だったためその呪いを受け,両親は殺害され,恋人ジョゼットは投身自殺し,バーナバス自身はヴァンパイアに変えられた上,棺に閉じ込められ地中深く埋められる.5
200年後,工事がきっかけで地中から甦ったバーナバスは,アンジェリークが不死身のまま財をなし,コリンズ家は剥落している現実に直面する….
バートン=デップのコンビによる映画で,僕はこのコンビは苦手である.
この映画はもとがTV連続ドラマだそうで,その為か,細かいところのつじつまが省略されている様で納得できない部分が多い.話がスムースに頭に入らず,途中寝込んでしまった.
ジョニー・デップやエヴァ・グリーンはその小ネタも含め面白く見応えがあるが,ストーリーそのものが受け容れ難く,要するにつまらない映画である.6
白塗りすれば良いってもんじゃないよ,ジョニー君.
★☆(★5個が満点)
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2013/01/14

独断的映画感想文:アニマル・キングダム

日記:2013年1月某日
映画「アニマル・キングダム」を見る.1
2010年.監督:デヴィッド・ミショッド.
出演:ジェームズ・フレッシュヴィル(ジョシュア・“ジェイ”・コディ),ベン・メンデルソーン(アンドリュー・“ポープ”・コディ),ジョエル・エドガートン(バリー・“バズ”・ブラウン),ガイ・ピアース(ネイサン・レッキー),ルーク・フォード(ダレン・コディ),ジャッキー・ウィーヴァー(ジャニーン・“スマーフ”・コディ),サリヴァン・ステイプルトン(クレイグ・コディ).
母親がヘロインの多量摂取で急死したジョシュアは,祖母のジャニーンに助けを求め,彼女の家に引き取られる.
ところがジャニーンの3人の息子はいずれもが犯罪で生計を立てる凶悪犯,一家と親しいバリーと共に強盗や薬の密売に励み,ジャニーンはそれを仕切る立場にあった.高校に通い始め,ガールフレンドもできたジョシュアだったが,警察と一家の抗争に次第に巻き込まれていく….
実話に基づく映画.
最初はぶっきらぼうな登場人物達の会話が退屈で眠りかけたが,警察と一家の争闘が激しくなって次第に引き込まれていく.2
メルボルン警察と名指しされている警察の対応も滅茶苦茶で,一家の司令塔バリーはある日,スーパーの駐車場で近寄った特捜班の刑事に突然射殺される.
報復としてパトロール警官2名を射殺するアンドリュー等,警察は逃走した次兄ダレンを問答無用で射殺と,事態はエスカレートする一方.
特捜班のレッキーはジョシュアの口を割らせて情報を得ようと彼を保護するが,ジャニーンはジョシュアの口をふさごうと汚職警官に依頼してジョシュアを襲わせ,ジョシュアは警察からも逃げ出す羽目になる.
という訳でストーリー的にはどう転ぶのか判らない面白さがあるが,凶悪で殺人をいとわない人々のやりきれない抗争の映画.3
後味も宜しくない.お勧めではありません.
★★☆(★5個が満点)
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2013/01/09

独断的映画感想文:RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ

日記:2013年1月某日
映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」を見る.Railways2
2011年.監督:蔵方政俊.
出演: 三浦友和(滝島徹),余貴美子(滝島佐和子),小池栄子(片山麻衣),中尾明慶(小田友彦),吉行和子(井上信子),塚本高史(片山光太),岩松了(島村洋二),徳井優(河野啓司),中川家礼二(楠木雅也),仁科亜季子(深山朋香),清水ミチコ(沢田良子),立川志の輔(出前のオヤジ),米倉斉加年(吉原満),西村雅彦(冴木俊也).
滝島徹は富山電鉄の運転士一筋35年無事故無違反,近く定年を迎える.
苦労をかけた妻と海外旅行を等と考えているが,妻は在宅ケアの就職をしたいと言い出す.徹が承知しないのを見定めた妻は,家を出て行ってしまった.
出産間近い娘に自分のことしか考えていないとなじられるが,徹はなかなか釈然としない.一時帰宅した妻は,離婚届と結婚指輪をおいて再び出て行った….
まあそれなりのキャストと評判を取った前作のシリーズものという位置づけながら,あまり印象に残らなかった作品.Railways3
ありがちなストーリーと登場人物達のそこそこの確執,あまり突き詰めないままの起承転結という感じ.
鉄道ファンにはこの地方鉄道の沿線風景は手応えあるものかも知れないが,小生にはそういう楽しみも縁がない.
音楽の使い方も類型的で感心しなかった.
平均点はとれるかも知れないが,感動を呼ぶところまではどうかしら.
★★☆(★5個が満点)
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2013/01/05

独断的映画感想文:レ・ミゼラブル

日記:2013年1月某日
映画「レ・ミゼラブル」を見る.5
2012年.監督:トム・フーパー.
出演:ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン), ラッセル・クロウ(ジャベール),アン・ハサウェイ(ファンテーヌ),アマンダ・セイフライド(コゼット),エディ・レッドメイン(マリウス),ヘレナ・ボナム=カーター(マダム・テナルディエ),サシャ・バロン・コーエン( テナルディエ),サマンサ・バークス(エポニーヌ),アーロン・トヴェイト(アンジョルラス),イザベル・アレン(コゼット(少女時代)).
映画の冒頭,大荒れの海に漂う傾いた難破船を,ロープでドックに引き寄せる囚人の群れが描かれる.その囚人の一人,ジャン・バルジャンの物語.6
時は18世紀初めのフランスである.妹の子のために,1きれのパンを盗んで5年の懲役刑に服したジャン・バルジャンは,脱走を繰り返したため19年間獄につながれる.仮放免された後も仕事にありつけず,死に瀕していたときミュリエル司教に救われる.その夜ジャン・バルジャンはその司教の銀食器を盗み逃走する.ところが司教は逮捕され連行されてきたジャン・バルジャンに対し,その銀器は譲ったものだと言い,更に銀の燭台をも与えるのだった….1
この後ジャンは改心しマドレーヌと名前を変え市長にまで上り詰めるが,受刑時代を知る警視ジャベールに正体を見破られ自ら罪を告白する.しかし女工ファンテーヌの死に責任を感じその子コゼットを養育するために逃亡,月日は流れ,物語は1832年6月のパリ暴動でクライマックスを迎える….
レ・ミゼラブルはミュージカルとして最高峰の作品の一つであることは疑いを得ない.その舞台をほぼ忠実に映画化したと言われる本作品は,その物語と歌と音楽の力で,観客の胸ぐらを掴んで離さない,力業の感動作と言えよう.3
158分の長尺を意識する暇もなく,この映画の世界に引き込まれ翻弄された.映画がこれほどのことができるのかという一つの象徴ともなるべき作品である.
このミュージカルの特徴の一つとして,唄の数々は交響曲のモチーフの様に様々な場面で繰り返されることにより,重層的な奥行きのある意味を与えられ,感動を深めている.その感動は,クライマックスのバリケードのシーンで最高潮に達し幕切れとなるが,そのバリケードの俯瞰は観客の目に永く焼き付くであろう.
個々の配役では,ファンテーヌとエポニーヌの絶唱の哀れさが際立つ一方,コゼットの透明な美声が印象的.群像劇での5重唱,6重唱が圧倒的な感動を呼ぶ.
必見の映画.★★★★☆(★5個が満点)2
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番外:独断的歌舞伎感想文:夢市男達競(ゆめのいちおとこだてくらべ)

日記:2013年1月某日
歌舞伎「西行が猫 頼豪が鼠 夢市男達競(ゆめのいちおとこだてくらべ) 六幕十場」を見る.Yumenoitiotokodatekurabehonchiraomo
序幕:第一場 鶴ヶ岡八幡宮の場,第二場 御輿ケ嶽の場.二幕目:第一場 鎌倉御所門前の場,第二場 花水橋広小路の場.三幕目:雪の下市郎兵衛内の場.四幕目所作事 旭鞆絵夢浮宝船.五幕目:第一場 大磯京町三浦屋格子先の場,第二場 同 薄雲部屋の場,第三場 同 台所の場.大詰:鎌倉御所の場.
出演:尾上菊五郎,中村時蔵,尾上松緑,尾上菊之助,坂東亀三郎,坂東亀寿,中村梅枝,中村萬太郎,尾上右近,藤間大河,片岡亀蔵,河原崎権十郎,市村萬次郎,市川團蔵,坂東彦三郎,市川左團次,澤村田之助.
国立劇場の新春は没後120年の河竹黙阿弥作の復活狂言を菊五郎一座が演じる.
時は鎌倉,木曾義仲の亡霊が頼豪法師の妖術を会得し,鼠を使って悪事をなす.これを取り鎮めるには西行法師が頼朝から与えられた銀の猫像が必要なのだが,その行方が判らない.
その詮議の主導権を争って,執権北条家と大江家がお抱え相撲取りに奉納相撲を取らせて雌雄を決しようという状況から,芝居は始まる….
歌舞伎の要素を様々に取り込んだ,お正月らしい派手なお芝居.
菊之助が相撲取りと猫と花魁という珍しい三役を演じれば,松緑は義仲と相撲取りと大江広元という三役で活躍.亀蔵が例によって体を張ったギャグを演じ楽しい舞台となった.
終了4時過ぎ.場内には山川静夫氏,音羽屋の受付には富司純子さんが見受けられ,太神楽や獅子舞が披露される等お正月らしい賑わいであった.
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2013/01/04

独断的映画感想文:ダークナイト ライジング

日記:2013年1月某日
映画「ダークナイト ライジング」を見る.6
2012年.監督:クリストファー・ノーラン.
出演:クリスチャン・ベイル(ブルース・ウェイン/ダークナイト=バットマン),マイケル・ケイン(アルフレッド),ゲイリー・オールドマン(ジェームズ・ゴードン市警本部長),アン・ハサウェイ(セリーナ・カイル),トム・ハーディ(ベイン),マリオン・コティヤール(ミランダ・テイト),ジョセフ・ゴードン=レヴィット(ジョン・ブレイク),モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス),マシュー・モディーン(フォーリー市警副本部長),アロン・モニ・アブトゥブール(パヴェル博士),ベン・メンデルソーン(ダゲット),バーン・ゴーマン(ストライバー),ジョシュ・スチュワート(ジュノー・テンプル),ジョン・ノーラン(フレデリクス),ネスター・カーボネル(ゴッサム市長),キリアン・マーフィ(ジョナサン・クレイン/スケアクロウ),リーアム・ニーソン(ヘンリー・デュカード/ラーズ・アル・グール).
前作でゴッサム市の平和のため検事デントの悪行をバットマンの所行としてひっかぶり,自らの活動を封印したブルース・ウェイン.それから8年,街は平和を享受していたが,影の同盟の弟子であるベインはゴッサムシティを遅う準備を進めていた.4
セリーナを使ってブルースの指紋を盗み出したベインは,それを使ってブルースをいかさま取引に巻き込み破産させ,更にウエィン産業が密かに開発していた核融合炉,戦闘車両に魔手を伸ばす.
ベインとの直接対決で完膚無きまでに敗れ去ったウェインは,脱出不能の地下牢に幽閉される.
ベインはゴッサムシティに乗り込み,警官隊を地下トンネルに誘い込んで生き埋めにし,核融合炉を中性子爆弾に改造して街を恐怖支配するのだが….
あらすじをこう書いてくるとどう見ても悪いのはブルース・ウェインですね.
一体,街の地下に自分の企業の資金を密かに転用して核融合炉を設置し,戦闘車両を隠し持っている男が,如何に自分は市民のために命を捧げると言っても信頼できるだろうか?
ベインがしたことはブルースを罠にかけ,その核融合炉と戦闘車両を奪っただけのことである.ベインは更に貧民革命を主張して街を直接の支配下に置いた.共産主義で言うプロレタリア独裁である.そのどこが悪いのか.
腐敗した市長・市警とどちらがマシなのか.7
まあこれは屁理屈ですが,そういう疑問は当然起こってくる疑問であり,現実が映画を越えて凶悪になってきた現在(現にこの映画の試写会で発生した銃乱射事件がある),善と悪を巡る物語の立ち位置は難しくなっている.
しかしそれにもかかわらずこの映画の重厚な作り,3部作の掉尾を飾るにふさわしいドラマには,引き込まれざるを得ない.
大胆なアクションを描いて行く映像の魅力も充分だ.5
俳優ではゲイリー・オールドマン,アン・ハサウェイ,マリオン・コティヤール,ジョセフ・ゴードン=レヴィットが魅力的.
苦渋に満ちたダークナイト3部作だが,エンタテインメントとしてのバットマンシリーズは,まだまだやるぞというやる気を示してのエピローグが印象的だった.
★★★★(★5個が満点)
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