独断的映画感想文:汚れた心
日記:2013年2月某日
映画「汚れた心」を見る.
2011年.監督:ヴィセンテ・アモリン.
出演:伊原剛志(タカハシ),常盤貴子(ミユキ),菅田俊(ササキ),余貴美子(ナオミ),大島葉子(アケミ),エドゥアルド・モスコヴィス(保安官),奥田瑛二(ワタナベ・ノボル).
第2次大戦直後のブラジル,日系移民社会は大戦に日本が勝ったと信じる「勝ち組」と日本の敗戦を知る「負け組」とに別れ,確執を深めていた.
他民族の民族主義を抑圧するブラジル政府の政策で弾圧された勝ち組は,それを契機に少数派の負け組への「粛正」を開始しする.
妻ミユキと幸せに暮らしていた写真館主タカハシは,心酔するもと帝国陸軍大佐で農場主のワタナベの指示により負け組を殺害するが,心中では日本の敗戦を察知していた….
この映画で示される「勝ち組」の論理は,事実には一切基づかないものだ.
ただただ,大和魂を持つ日本人が負けるはずがない,清い心を持つものはそれを信じる筈で,信じないのは汚れた心の国賊だ,という原理主義的精神論に過ぎない.
その一方で,勝ち組負け組騒動に乗じた土地の詐取,円買い詐欺等が横行し,映画ではワタナベが実はその様な行為に手を染めていることが示される.にもかかわらずそのワタナベに指示され「負け組」を殲滅していく「勝ち組」とは何だろうか.
僕自身,この「勝ち組」のような原理主義的精神論に反論できず圧倒された経験があり,何故我々はこの様な論理を生み出してしまうのか,ということに強いショックを受けた次第である.
「勝ち組」の愚行は決してよそ事ではない.今現在の日本にも,同様な傾向が進行しているのではないか.映画は強い緊張感に満ち,俳優の好演もあって最後まで一気に見た.
★★★☆(★5個が満点)
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