独断的映画感想文:アルゴ
日記:2013年4月某日
映画「アルゴ」を見る.
2012年.監督:ベン・アフレック.
出演:ベン・アフレック(トニー・メンデス),ブライアン・クランストン(ジャック・オドネル),アラン・アーキン(レスター・シーゲル),ジョン・グッドマン(ジョン・チェンバース),ヴィクター・ガーバー(ケン・テイラー),テイト・ドノヴァン(ボブ・アンダース),クレア・デュヴァル(コーラ・ライジェク),スクート・マクネイリー(ジョー・スタッフォード),ケリー・ビシェ(キャシー・スタッフォード),クリストファー・デナム(マーク・ライジェク),カイル・チャンドラー(ハミルトン・ジョーダン),クリス・メッシーナ(マリノフ),タイタス・ウェリヴァー(ジョン・ベイツ),シェイラ・ヴァンド(サハル),マイケル・パークス(ジャック・カービー),ロリー・コクレイン(リー・シャッツ),テイラー・シリング(クリスティーン・メンデス).
1979年,イラン革命のさなか,パーレビ元国王の入国を受け入れたアメリカに対しイラン民衆の抗議が殺到,在イランアメリカ大使館は占拠され大使館員52名が人質となった.
一方その間に6人の職員が裏口から脱出,カナダ大使私邸にかくまわれた.
当初彼等の存在はイラン革命防衛軍も知らなかったが,逃亡者の存在が明らかになるのは時間の問題で,6人の救出は焦眉の課題となっていた.
CIAの人質奪還の専門家トニー・メンデスは,彼等をカナダ人の映画ロケハン隊と偽装して脱出させるという奇想天外な計画をたてる.計画は採用され,トニーは単身イランに乗り込むが….
映画の出来は水準以上で,緊張感あるサスペンスフルなもの.
しかし僕はこの映画に全く魅力を感じない.何が良くってこの映画はアカデミー賞を獲得できたのか,全く理解できない.
そもそも1979年にアメリカがイランで何を企んでいたかは,全世界が知っている.大使館員と言ってもその過半数はイラン革命転覆に奔走するCIA他の要員や海兵隊員だったのは明かで,このカナダ大使館に逃げ込んだ6人が何の罪もない外交官だという前提は到底成り立たない.少なくともイラン側から見れば,そうなるであろう.
6人は潜伏生活の恐怖を語りながらも,ワインを傾け優雅な生活を送っている.彼等をもてなしているカナダ大使こそ良い迷惑であろう.
という訳で,この6名に対しても乗り込んだトニーに対しても全く共感することは出来ないし,彼等が成功裏に脱出できたことに対しても感銘を持つことが出来ない.その意味で2時間は無駄であった.
この映画がアカデミー賞を取ったヒントは,エンドロールに出てくるカーター大統領の演説にある様に思う.
イラン大使館の人質全員が解放された時点で行われたこの演説で,カーター大統領は武力を用いずに問題が解決されたことを高く評価すると言っているのだ.
その後の共和党政権でアメリカは同盟国首脳と世界を欺き,CIAの偽情報に基づいてイラクに対する戦争を開始し,今その結果世界は泥沼の中にある.
するとこの映画は,「不当な」イランの対応に対し,武力を用いずにその鼻を明かしたCIAの活躍を,今の泥沼状態に比べて評価するという文脈にあることになる.
アカデミー賞というものはかくも内向きな政治的なものなのだろうか?
★★★(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント