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2013/05/04

独断的映画感想文:別離

日記:2013年5月某日
映画「別離」を見る.1
2011年.監督:アスガー・ファルハディ.
出演:レイラ・ハタミ(妻・シミン),ペイマン・モアディ(夫・ナデル),シャハブ・ホセイニ(ホッジャト),サレー・バヤト(ラジエー),サリナ・ファルハディ(娘・テルメー),ババク・カリミ(判事),メリッラ・ザレイ(ギャーライ先生).
映画の冒頭は離婚調停の場.
夫で銀行員(?)のナデルと妻で英語教師のシミンがそれぞれ主張することに依ると,イランの教育環境が悪いので娘を海外で教育しようと1年かけてようやく海外移住の許可を取った,ところが夫はアルツハイマーの父親の介護があるので海外には行けないと言う,そこで妻は夫と離婚するという話.
両者は離婚そのものには同意しているが,娘テルメーの養育権を互いに譲らず,その件はテルメーの意志次第ということになる.
とりあえずシミンは実家に帰り,ナデルは父親の介護の為に義姉の紹介でラジエーを雇う.
彼女は敬虔なイスラム教徒で,幼い娘を連れて仕事に通うことになる.初日から父親は粗相をし,ラジエーは宗教指導者に男性の肌に触れて良いかどうかを聞く羽目になり,動揺する.
数日後ナデルが帰宅すると家は留守で,父親は手をベッドにくくりつけられたまま床に倒れ気を失っていた.まもなく帰ってきたラジエーをナデルは激しく詰り,クビを申し渡してドアから押し出す.
翌日ラジエーが流産し,ナデルは胎児の殺人で告訴される….2
一部ネタバレの部分があります.
イランの映画であるが,その内容は極めて現代的・普遍的な内容と思えた.
登場人物には悪人はいない.只,皆少しずつ嘘をついている.
例えばラジエーは失業中の夫をはばかって,自分がナデルのもとで働いていることを伝えていなかった.ナデルはラジエーが妊娠していることを知らなかったと主張し,テルメーも父親の主張に同調するが,これは虚偽であることが明らかになる.
映画はラジエーの流産の原因は何かという点で一種のミステリー的展開となるが,その結果よりはむしろ,ナデルやラジエーの家族が遂に崩壊してしまうのか,それは何故防げないのかという映画の問題提起が,観客の胸に深く残るだろう.3
意外に欧米的なイランの市民生活も印象的だ.
様々なしがらみにより家族が崩壊せざるを得ない哀しみが,娘テルメーがぽろぽろと流す涙に象徴的だ.
映画の構成もしっかりしていて映画らしい映画.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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