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2013年6月に作成された記事

2013/06/28

独断的映画感想文:北のカナリアたち

日記:2013年6月某日
映画「北のカナリアたち」を見る.
2012年.監督:阪本順治.3
出演:吉永小百合(川島はる),柴田恭兵(川島行夫),仲村トオル(阿部英輔),森山未來(鈴木信人),満島ひかり(戸田真奈美),勝地涼(生島直樹),宮崎あおい(安藤結花),小池栄子(藤本七重),松田龍平(松田勇),里見浩太朗(堀田久).
ネタバレあります.
川島はるは脳腫瘍の夫の療養を兼ね,父が助役をする故郷の北海道の離島に分校の教員として赴任する.
6人の生徒は家庭環境もさまざまだったが,はるの指導で合唱に取り組み,その才能を開花させて札幌の大会に招かれる実績を上げる.しかしある日生徒を招いてバーベキューをしていたとき,悲劇が起きた.
この事件をきっかけにはるは夫を失い,自身は追われるように島を離れ都会の図書館司書として20年を過ごした.定年退職の直後,家を刑事が訪れ,鈴木信人という男を知らないかと尋ねる.
分校の生徒だった信人は,殺人事件の重要参考人として行方を追われていた.はるは分校の生徒達を訪ねる決意をする….4
映画は20年前に何が起きたのかという謎を巡るミステリであり,信人がどうなるかを追う物語でもある.しかし映画の一つの軸が「二十四の瞳」を思い起こさせる分校の先生と生徒の物語であることは疑いを得ない.
はると生徒らが春の野を歌いながら歩いて行く美しいショットは,観客に強い印象を与えるだろう.
はるが訪れる6人の20年後が,それぞれに人生の辛酸をなめたものであることも,「二十四の瞳」と共通している.
しかし一方でこの映画はミステリでもある.
ミステリの謎の根源は20年前のはるの不倫である.この点に照らして,吉永小百合というキャスティングはどうか.
このキャスティングは,観客に対し物語の展開をミスリードするものであるという危惧を持つ.吉永小百合が演じる限り,観客にとってはると阿部英輔の関係は清純なものとしか思えないではないか?真相はどうであっても良いのだが,吉永小百合というキャスティングは両者の関係から肉体的なものを前提として排除してしまうという意味で,間違いだと言わざるを得ない.2
この映画の見どころは6人の若者達とその子役達の演技に尽きる.
特に宮崎あおい,満島ひかり,松田龍平は実力通り.森山未來の演技には涙を禁じ得ない.仲村トオルの殆ど台詞の無い,しかし思い詰めた演技も胸に迫った.石橋蓮次の刑事は儲け役だが,うまい.
映像は美しく,音楽は良く吟味されている.日本映画の優れた部分を遺憾なく発揮した良作.
★★★★(★5個が満点)
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2013/06/24

独断的映画感想文:スリープレス・ナイト

日記:2013年6月某日
映画「スリープレス・ナイト」を見る.1_2
2011年.監督:フレデリック・ジャルダン.
出演:トメル・シスレー(ヴァンサン),ジョーイ・スタール(フェイデック),ジュリアン・ボワッスリエ(ラコンブ),ロラン・ストーケル(マニュエル),セルジュ・リアブキン(ジョゼ・マルシアノ),リジー・ブロシュレ(ヴィグナル),サミ・セギール(トマ).
ヤクを強奪して転売しようとマフィアを襲った刑事ヴァンサンとマニュエル,ところがヴァンサンはナイフで切られ負傷,相手を射殺してしまう.おまけに彼の身元はすぐにマフィアにばれ,一人息子のトマが誘拐されてしまう.
トマを人質にヤクを返せと迫るマフィアに対し,ヴァンサンはマニュエルの反対を押し切り,バッグを持ってマフィアの拠点である巨大クラブに単身乗り込む.
マニュエルの背後にいる麻薬捜査官ラコンブは実はこの強奪の黒幕,部下のヴィグナルに命じヴァンサンを尾行させ,ラコンブもクラブにやって来る.マフィアのボス・マルシアノのもとには取引先相手が押しかけ,早くヤクを渡せと要求している.かくして客であふれかえるクラブの中,互いに全く信用していない二組ずつのマフィアと悪徳警官とが,ヤクを巡って死闘を繰り広げることになる….2
ところでこう書くと単純なフィルムノワールだが,実はヴァンサンは潜入捜査官だということが途中で明らかになり,物語の一方の軸はトマとヴァンサンの父子関係だということになる.
実際,離婚した妻からの「トマはどうなっているのか」という問い合わせを必死に言いくるめつつ,絶望的状況にめげずトマ奪還のため戦い続けるずヴァンサンは,なかなかの迫力.3_2
状況が二転三転する中,クラブの厨房で,バーで,レストランで,ビリヤード場で繰り広げられる息もつかせぬアクションシーン,ラコンブの正体がどうあぶり出されるのか,トマの運命は,マフィアの動向は,と最後まで先の読めない展開は見事である.
突っ込みたいところは幾つかあるが,全体の流れに圧倒された.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)4
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番外:独断的歌舞伎感想文:歌舞伎座新開場 杮葺落六月大歌舞伎 第三部「鈴ヶ森/助六」

日記:2013年6月某日
歌舞伎「歌舞伎座新開場 杮葺落六月大歌舞伎 第三部」を見る.130623
「一、御存 鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)」.
出演:幡随院長兵衛(幸四郎),東海の勘蔵(團蔵),飛脚早助(錦吾),北海の熊六(家橘),白井権八(梅玉).
昨年2月には勘三郎で見たこの芝居,梅玉の白井権八が落ち着いて良かった.幸四郎の幡随院長兵衛は,個人的には昨年の吉右衛門の方が好きである.
「二、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」.
出演:花川戸助六(海老蔵),三浦屋揚巻(福助),通人里暁(三津五郎),朝顔仙平(又五郎),福山かつぎ(菊之助),三浦屋白玉(七之助),男伊達山谷弥吉(亀鶴),同 田甫富松(松也),同 竹門虎蔵(歌昇), 同 砂利場石造(萬太郎), 同 石浜浪七(巳之助), 傾城八重衣(壱太郎),同 浮橋(新悟),同 胡蝶(尾上右近),同 愛染(米吉),同 誰ヶ袖(児太郎),茶屋廻り(竹松),同(廣太郎),同(種之助),同(廣松),文使い番新白菊(歌江),奴奈良平(亀蔵),国侍利金太(市蔵),遣手お辰(右之助),三浦屋女房お京(友右衛門),曽我満江(東蔵),髭の意休(左團次),くわんぺら門兵衛(吉右衛門),白酒売新兵衛(菊五郎),口上(幸四郎).
豪華絢爛江戸歌舞伎助六が堪能できる舞台である.
台詞一つ無い端役に至るまでベテランを配したこの舞台,様々な楽しみに満ちあふれる.
冒頭5人出来た傾城の品定め(個人的には美貌では壱太郎,米吉,台詞では新吾,右近というところか),髭の意休の貫禄(左団次が元気で何より),通人里暁の当意即妙なアドリブ(十二世市川團十郎に捧ぐ,と題したこの公演では三津五郎の人柄が何とも印象的)等々それぞれに見応えあり.
福助の揚巻は,その素晴らしい打ち掛けを披露した立ち姿が舞台を支配して美しい.海老蔵は市川宗家の後嗣としてもっと大胆で良かったと思うが,まずまずの出来.
まあ内輪の反省会では皆あれこれと悪口を言い合いましたが,やはり助六という芝居はお祭りとして楽しく素晴らしい.
また次の助六を見るのが楽しみである.
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独断的映画感想文:人生の特等席

日記:2013年6月某日
映画「人生の特等席」を見る.1
2012年.監督:ロバート・ロレンツ.
出演:クリント・イーストウッド(ガス),エイミー・アダムス(ミッキー),ジャスティン・ティンバーレイク(ジョニー),ジョン・グッドマン(ピート・クライン),ロバート・パトリック(ヴィンス),マシュー・リラード(フィリップ・サンダーソン),ジョー・マッシンギル(ボー・ジェントリー).
ガスはベテランのメジャーリーグのスカウト,最近は体が動かず視力が衰えている.親友のマネジャー・ピートは心配し,ガスの一人娘ミッキーにガスのスカウト旅行に付き添って欲しいと依頼する.
ミッキーは弁護士で事務所に務めて7年,昇進のチャンスを目前にしゃかりきで働いていたが,ピートの依頼を受けガスの旅先にやってくる.
母を早くに亡くし父に育てられた娘,しかし父はある時点から娘を手元から遠ざけた.それは何故か.久しぶりに再会した父娘は手探りで互いの絆を探り合っていくが,そこにかってガスがスカウトし,今は現役を引退して他球団のスカウトの卵をやっているジョニーが合流してくる….3
スカウトを巡る野球ゲームと言えば,最近では「マネー・ゲーム」を思い出すが,この映画のガスはそれとは対極にある,昔ながらのスカウトマン.
ガスはコンピュータを駆使しデータ優先で結果を出してくるスタッフに批判され,一方ミッキーは父のために職場を離れた間に,ナンバー2のスタッフにパートナー候補の座を奪われそうになる.それぞれが懸命に自分の結果を出そうと苦闘する過程で,親子の絆が再編され人生の価値観まで変わってくるという,心温まる映画.
クリント・イーストウッド御大は言うに及ばず,ひまわりの様な(ハナが上を向いているという意味です) エイミー・アダムス,その恋人役のジャスティン・ティンバーレイクが健闘.ハッピーエンドまでを楽しめる映画らしい映画となっている.5
重たい映画では無いので,リラックスして楽しめます.
★★★☆(★5個が満点)
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2013/06/16

独断的映画感想文:危険なメソッド

日記:2013年6月1某日
映画「危険なメソッド」を見る.3_2
2011年.監督:デヴィッド・クローネンバーグ.
出演:キーラ・ナイトレイ(ザビーナ・シュピールライン),ヴィゴ・モーテンセン(ジークムント・フロイト),マイケル・ファスベンダー(カール・グスタフ・ユング),サラ・ガドン(エマ・ユング),ヴァンサン・カッセル(オットー・グロス).
フロイトとユング,彼等の弟子でもあったザビーナを巡る物語.
映画は1904年8月17日,統合失調症患者としてユングが勤務する病院にザビーナが入院してくるところから始まる.
ユングは彼女にフロイトの理論であった談話治療(カウンセリング)を初めて適用し,彼女の父親との性的トラウマを探り出し劇的な症状改善に成功する.
その後ザビーナはチューリヒの大学医学部に入学,非凡な才能を発揮するが,ユングには治療の完成として彼女の処女を奪うことを要請し,遂に両者は愛人関係となる.2_2
一方ユングはウィーンに住むフロイトとの親交を重ね,両者を軸に精神分析は隆盛を兆す….
20世紀初頭のウィーンとチューリヒを舞台に展開する,精神分析草分けの二人の交流が興味深い.
フロイトが科学理論での一元的解明を目指すのに対し,ユングは科学のみでは説明できない領域にも配慮しつつ患者との臨床に重きを置く.ザビーナはユングとの関係の一方フロイトの弟子ともなるという複雑な展開があり,またフロイトとザビーナがユダヤ人,ユングはアーリア系という民族問題も絡む.1_2
ユングの妻エマも含め,各俳優の演技が見応えあり.ウィーン,チューリヒの映像も美しい.
映画は1913年7月16日のユング邸でのザビーナとユングの別離で終わるが,エピローグで語られるそれぞれのその後の運命,特にザビーナの悲劇的な最後は印象的である.
見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ルート・アイリッシュ

日記:2013年6月某日
映画「ルート・アイリッシュ」を見る.3
2010年.監督:ケン・ローチ.
出演:マーク・ウォーマック(ファーガス),アンドレア・ロウ(レイチェル),ジョン・ビショップ(フランキー),トレヴァー・ウィリアムズ(ネルソン),ジェフ・ベル(ウォーカー),タリブ・ラスール(ハリム),クレイグ・ランドバーグ(クレイグ),ジャック・フォーチュン(へインズ),ナイワ・ニムリ(マリソル).
映画の冒頭,川面を進むフェリー,船上にはファーガスがいる.直情径行の元軍人,今は目の不自由なもと戦友クレイグと暮らしている.
クレイグが酒場で侮辱されて殴り合いになり,今警察から出てきたところらしい.携帯にはフランキーからの伝言が溜まっている.
そのフランキーが死んで,遺体が帰ってきた.ファーガスはイラクの民間兵,兄弟同様に育ったフランキーも誘ってイラクで稼いでいたが一足先に帰国していた.
フランキーから彼宛に送られてきた携帯には,同僚の民間兵がイラクの民間人が乗ったタクシーを銃撃し,少年を含む死者が出た模様が記録されている.フランキーの死はこのイラクで起こった事件と関係があるのか?ファーガスは独自の調査を開始する….2
民間兵を雇用する企業は,要人警護で更に事業規模を拡大しようとしており,民間人殺傷事件は公に出来ない不祥事だった.フランキーと彼が持つ携帯は企業にとって不利な材料となるが,ではフランキーは誰が殺したのか?
そこにイラクでフランキーと折り合いの悪かった同僚・ネルソンが帰国し,ファーガスの協力者を痛めつけ証拠のデータを奪取する.ファーガスは行動を起こす….
物語はこのようにサスペンス仕立てだが,映画は企業幹部の悪意ある画策とともにファーガスの危険性も描く.
ファーガスは温情ある正義漢だが,感情のコントロールが出来ず,かつ兵士として拷問や殺人を躊躇しない.ファーガスがライフルを手に自室から街行く人々に照準を合わせてみるシーンは,象徴的である.
最終的にファーガスはフランキーの復讐を遂げるのだが,その過程で致命的なミスを犯してしまう.映画は冒頭と同じ川面を進むフェリー上での悲しい出来事で幕を閉じる.1
ファーガスの数少ない理解者・レイチェルとの関係も哀切である.
なお「ルート・アイリッシュ」は,フランキーが死んだ,バクダッド空港に至る極めて危険な道路の名称.心に残る映画である.
★★★★(★5個が満点)
P.S.この映画が描くイラクでの民間人殺傷事件が,2007年に民間軍事会社ブラックウォーター社が起こした事件に基づくことが,映画のブログに詳説されているので,参照されたい.
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2013/06/09

独断的映画感想文:終の信託

日記:2013年6月某日
映画「終の信託」を見る.1_2
2012年.監督:周防正行.
草刈民代(折井綾乃),役所広司(江木秦三),浅野忠信(高井則之),大沢たかお(塚原透),細田よしひこ(杉田正一),中村久美(江木陽子).
折井綾乃は病院呼吸器科の部長を務める女性医師,喘息の重症患者・江木秦三の主治医である.
綾乃は同僚医師の高井と恋愛関係にあったが,高井に裏切られ捨てられた.失意の綾乃は眠剤をアルコールと共に飲むが,一命は取り留める.
江木は綾乃を気遣い,綾乃も江木との間に心の絆を結ぶに至る.
江木は長年の主治医である綾乃を信頼し,自分が重症発作で見込みの無いときは,無駄に延命治療はしないで欲しいと依頼し,綾乃もこれを了承する.
ある日,その江木が重症発作を起こして救急搬送されてくる.綾乃は江木の家族を前に重大決意をするに至ったが….2_2
フジTV系の映画で,内容紹介は頻回に放映されており,粗筋は殆どの人が知っているかも知れない.
綾乃はある時点で家族の了解のもと江木の呼吸パイプを外し,江木を死に至らしめる.3年後綾乃は検事塚原の呼び出しを受け,殺人罪容疑で厳しく追及されるのである.
映画は前半で綾乃と江木の心の交流,綾乃が江木の願いを聞き入れ重大な決断をするに至った経過をつぶさに描く.
一方後半は検事塚原と綾乃の激しい応酬となる.大沢たかお演じる塚原は,如何にも鬼検事らしく手練手管の限りを尽くして綾乃を追い込み,ある時は恫喝しある時は嘲弄し,綾乃に江木が死ぬことを承知で延命処置の解除をしたことを認めさせるのである.
前半で江木と綾乃の心の交流を見ている観客は,ここで塚原の追及に反発し違和感を覚えることになろう.
しかし法の前には,塚原の様な立場もまたあり得ると言わねばならない(例え追及の仕方がいかにあざといものであろうとも).3
エピローグに示されるとおり,綾乃と江木の心の絆がどれだけ強くあっても,それだけで綾乃の行動を正当化することは難しい.命を前にした決断はこのように重いものなのだ.
男性3人の演技がいずれも素晴らしい.
江木が綾乃にアリア「私のお父さん」の話を物語る場面の役所広司のしみじみした演技,綾乃を追及する検事塚原の場面での大沢たかおの緊迫した演技は,いずれも印象的.
綾乃を捨てるシーンでの浅野忠信の憎たらしさも宜しい.
江木の妻陽子のいたいけな応対を演じる中村久美も素敵.
草刈民代は,相手役の役所広司や大沢たかおのうまさに圧倒された感じで,いささか気の毒だが,それぞれの俳優の個性が見応えある好編である.
★★★☆(★5個が満点)
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2013/06/03

独断的映画感想文:ヘルタースケルター

日記:2013年5月某日
映画「ヘルタースケルター」を見る.4
2012年.監督:蜷川実花.
出演:沢尻エリカ(りりこ),大森南朋(麻田誠),寺島しのぶ(羽田美知子),綾野剛(奥村伸一),水原希子(吉川こずえ),新井浩文(沢鍋錦二),鈴木杏(保須田久美(友情出演)),寺島進(塚原慶太),哀川翔(浜口幹男),窪塚洋介(南部貴男(友情出演)),原田美枝子(和智久子),桃井かおり(多田寛子).
人気絶頂のカリスマモデル・俳優のりりこは,全身を美容整形していた.
美容整形の後遺症を抑えるためには免疫抑制剤の服用が欠かせず,服用を怠ると黒いシミが全身に吹き出す.
同じ事務所の後輩こずえが急速に人気を伸ばしてくるし,恋人の貴男はりりこを裏切って実業家の娘との婚約を発表するし,美容整形の違法性を検事が調べ始めるしで,りりこは次第に精神的にも追い詰められていく….
というりりこの破滅を描く映画だが,映画の印象全体は悪くない.2_2
沢尻エリカの表現するりりこの美しさは半端ではない.
その圧倒的な美しさをしゃぶり尽くそうという貴男,久子,寛子等の醜悪さもきっちりと演じられ,その結果りりこの醜さと云うよりは哀れさが際立つ展開となった.
映像全体は監督らしくファッショナブルで美しい.エピローグもこの映画としてふさわしいものだった.1_2
惜しむらくはどうせならビートルズの「へルタースケルター」をエンドテーマとして使ってくれれば良かったのだが.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ふがいない僕は空を見た

日記:2013年6月某日
映画「ふがいない僕は空を見た」を見る.2
2012年.監督:タナダユキ.
出演:永山絢斗(斉藤卓巳),田畑智子(岡本里美(あんず)),窪田正孝(福田良太),小篠恵奈(あくつ純子),田中美晴(松永七菜),三浦貴大(田岡良文),銀粉蝶(岡本マチコ),梶原阿貴(長田光代),吉田羊(妊婦 西村あや),藤原よしこ(野村先生),山中崇(岡本慶一郎),山本浩司(有坂研二),原田美枝子(斉藤寿美子).
冒頭,マンションの一室に入る卓巳,ベッドにはコスプレしたあんずが待っていて二人はコスプレのまま愛し合う.
あんずは人妻,卓巳とは同人誌即売会で知り合い,あんずが誘って関係を持った.
あんずは学生時代から男出入りが多く,今の夫と結婚してからは不妊を姑に責められている.
卓巳の家は父が出奔,母は助産院を経営し,自然分娩を理想とした経営を続けている.
卓巳の親友良太は父が死に母は出奔,認知症の祖母の世話を一人で見ている.朝夕のバイトで稼いでいるがその収入さえ時折戻る母親に盗まれ,飢餓に直面する日々だ.3
ある日,あんずと卓巳の不倫現場を隠しカメラで撮影した画像がネットに流され,二人は窮地に立たされる….
只の恋愛ドラマかと思っていたら,現代に生きること自体をテーマとした結構重い映画.格差社会の非寛容さが,鋭く描かれる.
この映画では上位にある人々の,何の配慮もない品性下劣な悪口雑言的発言と,男性の非力さが印象的に描かれる.
姑のあんずへの攻撃,バイト先店長の良太への攻撃,あるいは提携病院婦長の卓巳の母への誹謗は激烈.これらのヘイトスピーチが示す閉塞感が,やりきれない.1
それでもこれらの醜悪さを通して自分の非力を知った少年達の再生を示唆して,映画は終わる.
俳優では窪田正孝が印象的.田畑智子は男出入りが激しかったという印象を与えるには可憐すぎるのでは?
しかし後味は悪くない映画.
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