独断的映画感想文:ルート・アイリッシュ
日記:2013年6月某日
映画「ルート・アイリッシュ」を見る.
2010年.監督:ケン・ローチ.
出演:マーク・ウォーマック(ファーガス),アンドレア・ロウ(レイチェル),ジョン・ビショップ(フランキー),トレヴァー・ウィリアムズ(ネルソン),ジェフ・ベル(ウォーカー),タリブ・ラスール(ハリム),クレイグ・ランドバーグ(クレイグ),ジャック・フォーチュン(へインズ),ナイワ・ニムリ(マリソル).
映画の冒頭,川面を進むフェリー,船上にはファーガスがいる.直情径行の元軍人,今は目の不自由なもと戦友クレイグと暮らしている.
クレイグが酒場で侮辱されて殴り合いになり,今警察から出てきたところらしい.携帯にはフランキーからの伝言が溜まっている.
そのフランキーが死んで,遺体が帰ってきた.ファーガスはイラクの民間兵,兄弟同様に育ったフランキーも誘ってイラクで稼いでいたが一足先に帰国していた.
フランキーから彼宛に送られてきた携帯には,同僚の民間兵がイラクの民間人が乗ったタクシーを銃撃し,少年を含む死者が出た模様が記録されている.フランキーの死はこのイラクで起こった事件と関係があるのか?ファーガスは独自の調査を開始する….
民間兵を雇用する企業は,要人警護で更に事業規模を拡大しようとしており,民間人殺傷事件は公に出来ない不祥事だった.フランキーと彼が持つ携帯は企業にとって不利な材料となるが,ではフランキーは誰が殺したのか?
そこにイラクでフランキーと折り合いの悪かった同僚・ネルソンが帰国し,ファーガスの協力者を痛めつけ証拠のデータを奪取する.ファーガスは行動を起こす….
物語はこのようにサスペンス仕立てだが,映画は企業幹部の悪意ある画策とともにファーガスの危険性も描く.
ファーガスは温情ある正義漢だが,感情のコントロールが出来ず,かつ兵士として拷問や殺人を躊躇しない.ファーガスがライフルを手に自室から街行く人々に照準を合わせてみるシーンは,象徴的である.
最終的にファーガスはフランキーの復讐を遂げるのだが,その過程で致命的なミスを犯してしまう.映画は冒頭と同じ川面を進むフェリー上での悲しい出来事で幕を閉じる.
ファーガスの数少ない理解者・レイチェルとの関係も哀切である.
なお「ルート・アイリッシュ」は,フランキーが死んだ,バクダッド空港に至る極めて危険な道路の名称.心に残る映画である.
★★★★(★5個が満点)
P.S.この映画が描くイラクでの民間人殺傷事件が,2007年に民間軍事会社ブラックウォーター社が起こした事件に基づくことが,映画のブログに詳説されているので,参照されたい.
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