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2013年8月に作成された記事

2013/08/30

独断的映画感想文:J・エドガー

日記:2013年8月某日
映画「J・エドガー」を見る.1
2011年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:レオナルド・ディカプリオ(J・エドガー・フーバー),ナオミ・ワッツ(ヘレン・ギャンディ),アーミー・ハマー(クライド・トルソン),ジョシュ・ルーカス(チャールズ・リンドバーグ),ジュディ・デンチ(アニー・フーバー).
FBI長官を第2次大戦をはさんで45年間勤めたフーバーの半生を描く映画.
フーバーは学生時代に勤務した国会図書館で編み出したファイリング技術や,科学的捜査法の導入で実績を上げ,特に指紋を重視して指紋の全米登録を実行した.4
FBIの長官に就任してからは不適格な捜査員を追い出す一方優秀な捜査官を採用し,FBIの陣容を一新した.
一方自らはマザコンでありゲイであり,有力者への不法な盗聴を通じて秘密ファイルを蓄積し,自らの権勢とFBIの拡大を図った.
映画は老境にいたって回顧録を口述するフーバーを,その若き日の姿をはさみながら綴っていく.
フーバーは,自分を共産主義勢力・敵国勢力と戦う闘士と自認しつつ,品性下劣な俗物であった.人種主義者でFBIに黒人職員を殆ど登用しなかったのに,自宅のメイドは黒人女性であった.3
映画はこの様に矛盾に満ちた存在であるフーバーを淡々と描いていく.その描き方は,フーバーに共感するのではないが,しかし突き放すのでもない.老醜のフーバーに向けられる視点は労りさえあるかのようだ.
監督も老成し観客である僕も年を取っている.こういう映画の視点があっても良い,という印象を持った.
「J・エドガー」はフーバー自身が自分の個人サインとして使っていた名称.題名を「フーバー」とせず,「J・エドガー」とした理由をいろいろ考えるのも一興であろう.2
見応えある映画.★★★★(★5個が満点)
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2013/08/29

独断的映画感想文:ストロベリーナイト

日記:2013年8月某日
映画「ストロベリーナイト」を見る.5
2013監督:佐藤祐市.
出演:竹内結子(姫川玲子),西島秀俊(菊田和男),大沢たかお(牧田勲),小出恵介(葉山則之),宇梶剛士(石倉保),丸山隆平(湯田康平),田中要次,津川雅彦(國奥定之介),渡辺いっけい(橋爪俊介),遠藤憲一(日下守),高嶋政宏(今泉春男),生瀬勝久(井岡博満),武田鉄矢(勝俣健作),染谷将太(柳井健斗),金子ノブアキ(小林充),伊吹吾郎,今井雅之(宮崎真一郎),柴俊夫(片山正文),金子賢(川上義則),鶴見辰吾(藤元英也),石橋蓮司(龍崎神矢),田中哲司(長岡征治),三浦友和(和田徹((友情出演)).2
誉田哲也の小説「インビジブル・レイン」を原作とする映画.
警視庁捜査一課で班を率いる敏腕警部補・姫川玲子.対立するヤクザのチンピラ数名の連続殺人が発生,捜査本部の構成は暴力団対応の四課と捜査一課の合同チーム,四課はヤクザ同士の抗争の見立てで突っ走る.
玲子は偶然「今回の殺しの犯人は柳井健斗」とのたれ込み電話を受けるが,上部からは「柳井健斗の名前は出してはならない」との厳命が下る.
疑問を感じた玲子は柳井健斗の捜査を単独で開始,その過程で不動産業者牧田を知るが,牧田は実は暴力団幹部だった.一方,柳井健斗の過去には警視庁幹部の絡んだ重大な証拠隠滅事件が隠されていた….1
誉田哲也の名作「インビジブル・レイン」を原作として映画化した作品.この物語の真髄は,警視庁官僚の保身に対する現場捜査官の対抗策と,それに関連する玲子の心の葛藤にある.
玲子には高校生の時にレイプされ刺傷を受けた過去がある.その犯人に対する玲子の憎しみは,親を死に追い込んだ暴力団員への復讐で服役し,今は自ら暴力団幹部となった牧田に見抜かれ,牧田と玲子を結びつける要因となる.4
原作の切れ味の映画化にほぼ成功した,緊張感ある作品.竹内結子が玲子像を充分に把握して演じていることに好感を持った.大沢たかおも多くの側面を持つヤクザ牧田を演じて好演.
一方原作にあった軽妙なユーモアが,映画では見られなかったことは残念.
★★★☆(★5個が満点)
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2013/08/27

独断的映画感想文:裏切りのサーカス

日記:2013年8月某日
映画「裏切りのサーカス」を見る.1
2011年.監督:トーマス・アルフレッドソン.
出演:ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー),コリン・ファース(ビル・ヘイドン),トム・ハーディ(リッキー・ター),トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン),マーク・ストロング(ジム・プリドー), ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム), キアラン・ハインズ( ロイ・ブランド), キャシー・バーク( コニー・サックス), デヴィッド・デンシック(トビー・エスタヘイス),スティーヴン・グレアム(ジェリー・ウェスタービー),ジョン・ハート(コントロール),サイモン・マクバーニー(オリヴァー・レイコン),スヴェトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ).2
東西が熾烈な冷戦下にあった時代,英国諜報部(サーカス)はブタペストにおける諜報活動に失敗し諜報員を失う.この不祥事の責任を取って,トップの「コントロール」は右腕のスマイリーと共に職を辞す.その直後「コントロール」は病死する.
サーカスを指導することになった4名のトップはヘイドン,アレリン,ブランド,エスタヘイスの4名,ところがこの中に2重スパイがいるとの情報が入り,レイコン次官は自らがクビにしたスマイリーにその極秘調査を命じる.
一方アレリン達は寝返ったソ連スパイを利用した「ウィッチクラフト」作戦を展開し,得た情報を米国に送って英米の協力関係を強化しようと画策する….3
ジョン・ル・カレの原作を映画化したスパイものだが,この物語は実際に起きた事件に基づいていると言う(映画のblog) .
さまざまなキャリアを持ち一筋縄ではいかない人物が集まった諜報部,そこに潜む二重スパイの摘発が緊張感を持って描かれる.この映画は親切な映画ではない.登場人物はそれほど多くないがそれぞれはファミリーネーム,ファーストネーム,暗号名,偽名で呼ばれる上,各々の人間関係も複雑だ.彼等の一部はゲイであるらしいが,こういう関係も日本人には馴染みが薄いだろう.しかし,一昔前は諜報部は一丸となって敵と戦ってきたのに(それはたびたび挿入される,諜報部のパーティーのシーンで示される),今は誰が敵かも分からないというスタッフの嘆きは,現代にも通じるようで印象深い.俳優はすっかり貫禄の出たゲイリー・オールドマンを初め,個性的な面々がそれぞれ存在感があって見応えがある.地味な展開ではあるが最後まで目の離せない映画.見て損はなし.★★★★(★5個が満点)4
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2013/08/21

独断的映画感想文:風立ちぬ

日記:2013年8月某日
映画「風立ちぬ」を見る.0
2013年.監督:宮崎駿.
声の出演:庵野秀明(堀越二郎),瀧本美織(里見菜穂子),西島秀俊(本庄季郎),西村雅彦(黒川),スティーブン・アルパート(カストルプ),風間杜夫(里見),竹下景子(二郎の母),志田未来(堀越加代),國村隼(服部),大竹しのぶ(黒川夫人),野村萬斎(カプローニ).
映画の冒頭は堀越二郎少年の夢.
自宅の大屋根の天辺に取り付けた自作の飛行機に乗り込み大空へ飛翔するも,街を襲う敵の航空隊との空中戦になるや眼鏡が吹っ飛び敢え無く墜落,二郎少年は近眼なのである.4_2
この頃イタリアの高名な航空機設計家カプローニ伯爵と夢で出会った二郎は,設計家として生きる決意をする.以降二郎は,事あるごとにカプローニ伯爵と夢で話し合うことになる.
大学に進んだ二郎は,帰省先から下宿に戻る途中の列車で,飛ばされた帽子を拾ってくれた少女菜穂子と知り合うが,直後に起こった関東大震災の中,菜穂子を自宅まで送り届ける.
やがて三菱に就職した二郎は,設計家としての人生を歩み始める….5_2
この映画は二郎・菜穂子の純愛と,少年の夢についての物語である.
二郎と菜穂子の生きた日本は未だ貧しく,科学技術の後進性に悩まされていた.空を飛びたい,素晴らしい飛行機を作りたいという二郎の夢は,その時代,戦前の日本では,軍用航空機を作ることに直接結びついていた.
少年の夢をそのままに大人になった天才技術者は,優れた戦闘機を懸命に作り,その結果故国の破滅に向かっての進行を図らずも後押しすることになる.6
物語は,二人の純愛の結末と二郎の新型戦闘機のテスト飛行が成功したことを述べて終了するが,それに続くエピローグ・カプローニ伯爵と二郎との最後の夢は,哀切極まりない.苦い印象を後に残す,しかし感動的な映画.
それにしても,全編を貫く航空機の飛翔シーンの美しさは例えようがない.エピローグで画面一杯に現れる失われた飛行機達の幻には,涙を禁じ得なかった.
なお,二郎は実在の航空技術者で零戦の生みの親である堀越二郎氏をモデルに創作された人物,里見菜穂子も架空の人物である.
★★★★☆(★5個が満点)8
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番外:独断的歌舞伎感想文:八月納涼歌舞伎 第三部 狐狸狐狸ばなし/棒しばり

日記:2013年8月某日
歌舞伎座で「八月納涼歌舞伎 第三部」を見る.2013082
「一、江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)」.
出演:伊之助(扇雀),おきわ(七之助),おそめ(亀蔵),おうた(歌江),福造(巳之助),又市(勘九郎),重善(橋之助).
北条秀司作の新歌舞伎.
元上方女形の伊之助は今は手拭いの染め屋.女房のおきわは女郎上がりで,伊之助が惚れている弱みにつけ込み,住職の重善と密通している.
重善が大店の娘おそめとの養子縁組話に傾いているのに苛立つおきわは,重善から亭主を殺して見ろと挑発され,弟子の又市が買ってきた染め薬をふぐ鍋に盛って,伊之助を毒殺する.
無事葬式が終わり伊之助を荼毘に付した翌朝,伊之助が普段通りに立ち働いているのでおきわは吃驚…,というブラックコメディ.
扇雀が如何にも元上方女形という役柄を,コメディアンて体を張って演じているのが印象的.この人は本当に何でも出来るんですね.
露見すれば死罪という「密通」を居直ってやってのけているという緊張感がもう少しあっても良いかと思えたが,全体としてはテンポの良い抱腹絶倒の楽しい一幕であった.
「二、棒しばり(ぼうしばり)」.
出演:次郎冠者(三津五郎),太郎冠者(勘九郎),曽根松兵衛(彌十郎).
八月歌舞伎の筆頭と言って良い素晴らしい舞台.狂言の「棒しばり」にもとづくもので,筋は皆様ご存知と思う.
三津五郎の踊りはまさに絶品.棒のさばきを見せる序盤から,縛りの形となって以降の踊りまで,誠に楽しく間断するところがない.踊りのことなど何も判らない小生が,ああ楽しい,面白いと時の経つのを忘れて見惚れてしまう三津五郎の藝の力は,勘三郎亡き後のこの人の執念を感じさせて,誠に印象的であった.
これを受けて立つ勘九郎,彌十郎の踊りも文句のつけようもなく,最後まで楽しく見た.
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独断的映画感想文:鍵泥棒のメソッド

日記:2013年8月某日
映画「鍵泥棒のメソッド」を見る.1
2012年.監督:内田けんじ.
出演:堺雅人(桜井武史),香川照之(コンドウ/山崎信一郎),広末涼子(水嶋香苗),荒川良々(工藤純一),森口瑤子(井上綾子),小山田サユリ(香苗の姉),木野花(香苗の母),小野武彦(香苗の父).
水島香苗は大手出版社で雑誌の編集長をしている34才の女性,この年末には結婚すると予定を決め相手探しに乗り出す.
夜の公園脇で高級車で待機している山崎信一郎,団地から出てきた初老の男を一撃で刺し殺すと死体をトランクに押し込み,手際よく後処理をして車で去って行く.
桜井武史は30代の売れない俳優,今首つりに失敗し(紐が切れた),アパートの自室で呆然としている.やがて桜井は気を取り直して風呂屋へ行くことにする.4
山崎も一部浴びてしまった血を洗い流そうと同じ風呂屋に入る.分厚い財布をロッカーに入れる山崎,ところが山崎が石けんで滑って倒れたのを見た桜井が,ロッカーの鍵をすり替える.
桜井はそのまま車で逃亡し山崎の豪華マンションに入ることに成功,一方山崎は失神したまま救急車で病院に運ばれるが,記憶喪失で入院,その後病院で知り合った水島の助けで,桜井としてぼろアパートに帰宅する.
一方桜井の持つ山崎の携帯には殺しの依頼をした工藤から連絡が入り,桜井は山崎として新たな殺しを受ける羽目になる.5
片や山崎は桜井として前向きに俳優の仕事に取り組むが,演技理論を素直に猛勉強して受け入れる一方,リアルな殺し屋像を演じて評価され,俳優に前向きに取り組むことになり,香苗もそんな山崎を助けるのだが….
という訳で山崎の記憶喪失状態で仕込まれた伏線が,ひょんなことで山崎の記憶が甦ると同時に急転直下動き出す,この仕掛けがまず面白い.
更に,駄目人間桜井,超真面目お嬢様香苗,殺し屋山崎がそれぞれに持ち味を発揮して苦境を乗り越える物語の展開が絶妙で(予告編にはこれから先は出てきません),要するにこの映画はラブコメでハッピーエンドなのだ.
主役3人がそれぞれに魅力的,特に広末涼子演ずる水島香苗ははまり役と言えよう.
映画の冒頭ではこれがハッピーエンドにまとまることは至難と思われたが,よくできたプロットである.視聴覚芸術としての映画の魅力と欠陥を遺憾なく発揮した楽しい好編,見て損はなし.2
★★★★(★5個が満点)
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2013/08/16

独断的映画感想文:世界にひとつのプレイブック

日記:2013年8月某日
映画「世界にひとつのプレイブック」を見る.3
原題:SILVER LININGS PLAYBOOK.
2012年.監督:デヴィッド・O・ラッセル.
出演:ブラッドリー・クーパー(パット),ジェニファー・ローレンス(ティファニー),ロバート・デ・ニーロ(パット・シニア),ジャッキー・ウィーヴァー(ドロレス),クリス・タッカー(ダニー),アヌパム・カー(パテル),ジョン・オーティス(ロニー),シェー・ウィガム(ジェイク),ジュリア・スタイルズ(ヴェロニカ),ポール・ハーマン(ランディ),ダッシュ・ミホク(キーオ),ブレア・ビー(ニッキ).
パットは愛妻ニッキが自宅で同僚と浮気していた現場に遭遇,その男を殴って以来精神の変調をきたし仕事も失って入院中.6
母親が奔走して退院できるが,妻との結婚のビデオを捜して夜中に大騒ぎを演じたりと精神は本調子でなく,おまけに妻への接近禁止令が裁判所から出ている.
隣人のディナーに招かれたパットはその家の奥さんの妹・ティファニーと出会うが,彼女も最近夫を事故で亡くし,同僚全てと寝るなど精神が不安定な状態だった.
ティファニーはパットと付き合おうとするが,ニッキに執心するパットは歯牙にもかけない.するとティファニーはニッキにパットの手紙を渡す代わりに,2人でダンスコンテストに挑戦しようと持ちかけ,パットはそれを受け入れて練習に励むことになる….5
パットの家は父親はアメフトのファン,試合に賭けて一攫千金を狙っている.パットが横で見ていると賭に勝つというジンクスがあって父親は一緒にTV観戦をしようと懇願するが,パットはなかなか受け入れない.
この父親もちょっと普通とは違うと思えるが,とにかく映画冒頭のパットとティファニーのとんがり方は見ていて痛々しい.
周囲の人間の協力もあってダンスの練習に没頭するようになって,二人の様子は次第に落ち着いていくのだが,今度は父親が賭けに失敗して全財産を失う危機に直面する.最後の賭とダンスコンテストが映画のクライマックスとなるのだが….
全てを失ったと見える男女の,再生のラブストーリー.
隣人同僚を中心とする登場人物達は,何を生業としているのか不明な人たちばかりだが,彼等相互のつきあいの濃さは半端ではない.
母親の無償の愛,父親との関係の再構築を含め,この濃い関係がパットを次第に立ち直らせていく.
自分のニッキへの愛情が只の執着だと気付く一方,ティファニーとの関係が見えてくるパット.スクエアではないが暖かい物語は観客を魅了するだろう(そう言えば映画の中でかかっていたジャズはデイブ・ブルーベックの「アンスクエア・ダンス」だった).
この間好調の主演2人が素晴らしい.1
父親・母親の両名も見応えあり(父親デ・ニーロがパットに詫びるシーンには泣かされる.母親ジャッキー・ウィーヴァーは「アニマル・キングダム」とは打って変わったキャラクターでの名演).
原題のSILVER LININGSは「銀の裏地」という意味,EVERY CLOUD HAS A SILVER LINING. と言えば『すべての雲には銀の裏地がある。』→『どんな困難な状況でも必ず希望の光はある。』という意味だそうな(ブログ『大好き海外ドラマ&恋して外国映画』).PLAYBOOKには脚本(集)の意味の他,アメフトのフォーメーションブックの意味もある.本作にふさわしい題名と言えよう.後味良く見て損のない映画.
★★★★(★5個が満点)
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2013/08/13

番外:独断的歌舞伎感想文:八月納涼歌舞伎 第二部 髪結新三/かさね

日記:2013年8月某日
歌舞伎座で「八月納涼歌舞伎 第二部」を見る.Kabukiza_0802a
「一、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう) 髪結新三」.
配役:髪結新三(三津五郎),弥太五郎源七(橋之助),下剃勝奴(勘九郎),白子屋娘お熊(児太郎),家主女房おかく(亀蔵),車力善八(秀調),加賀屋藤兵衛(家橘),白子屋後家お常(萬次郎),家主長兵衛(彌十郎),手代忠七(扇雀).
以前は菊五郎,幸四郎で見た髪結い新三.その時の家主はそれぞれ左団次,彌十郎であった.今回の三津五郎は若々しく気っぷが良く,家主にへこまされてもさばさばと受け流す小気味の良い新三である.橋之助の源七もうってつけでよろしい.
亀蔵の家主女房が意外とはまっていた.下女お菊の柴のぶが相変わらずきれい.
「二、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね」.
配役:かさね(福助),与右衛門(橋之助).Kabukiza_201308ff
前回は時蔵と染五郎で見た怪談舞踊の名作であるが,僕は踊りは苦手,特に前半は長く感じた.
後半かさねの顔が崩れて以降は迫力があったが,福助がびっこを引きずるのにがに股になったり,悲鳴に色気が感じられないのが気になる.
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2013/08/08

独断的映画感想文:襤褸の旗

日記:2013年8月某日
映画「襤褸の旗」を見る.1
1974年.監督:吉村公三郎.
配役:三國連太郎(田中正造),荒木道子(田中正造の妻カツ),田村亮(佐竹和三郎),西田敏行(多々良治平),原泉(ヨネ),辻萬長(一ノ瀬宗八),浜村純(宗六),佳那晃子(タキ),草野大悟(南佐十),中村敦夫(幸徳秋水),菅野忠彦(木下尚江),和泉敬子(杉本[火華]子),信欣三(斎藤巡査),志村喬(古河市兵衛).
1900年2月13日未明,諸処の寺の鐘が乱打され農民が続々と雲龍寺に集結する.夜明けに彼等は徒党を組んで東京めがけて押し出す.足尾鉱毒反対闘争の第4回押し出し,世に言う川又事件の発生である.
この日国会では田中正造の質問演説があり,押し出しはそれに合わせて決行されたが,利根川の川俣で警官隊と衝突,農民はちりぢりとなり,(映画では)東京の田中事務所に到達したのは多々良治平1名であった.
その時田中正造は,議会で足尾鉱毒事件と官憲の弾圧に対し,火の出るような演説を行ったが,首相山県有朋は質問の意味不明として答えることすらしなかった.
その後田中は無政府主義者・幸徳秋水の起草した直訴状を持って天皇直訴を行う等,孤軍奮闘の戦いを続けるが,政府は鉱毒反対運動の拠点谷中村を,鉱毒沈殿のための遊水池設置を名目として廃村とするという弾圧を仕掛けてくる….3_2
三國連太郎入魂の演技で綴る,田中正造伝・足尾鉱毒事件顛末の物語である.
映画全編にわたる強い緊張感は,この映画が製作された時代の三里塚空港反対闘争を強く意識した結果もあるだろうが,今この映画を見る我々の,3/11福島原子力災害を経験した意識に依るのかも知れない.
誠に今の政府は110年前の明治政府と何ら変わるところはなく,企業利益を擁護し官憲は私利私欲に汲々とし人民に対しては情け容赦がない.そのことを心底から思い起こさせる映画である.
俳優は懐かしい面々がそれぞれに好演・熱演,個人的には田中正造を尾行し続ける斎藤巡査役の信欣三がお気に入り.
映画の構成としては直訴が前半の一つの山場であるべきところ,さほどではないシーンだったのがやや期待はずれだった(まあ描き方は難しいでしょうが).2_2
しかし終局の谷中村強制代執行のシーンは強く印象に残った.一見の価値ある映画.★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:アウトロー

日記:2013年8月某日
映画「アウトロー」を見る.5
2012年.監督:クリストファー・マッカリー.
出演:トム・クルーズ(ジャック・リーチャー),ロザムンド・パイク(ヘレン),リチャード・ジェンキンス(ロディン),デヴィッド・オイェロウォ(エマーソン),ヴェルナー・ヘルツォーク(ゼック),ジェイ・コートニー(チャーリー),ジョセフ・シコラ(ジェームズ・バー),ロバート・デュヴァル(キャッシュ).
映画の冒頭,バンで人気のない工事中の駐車場に乗り付けた男.ライフルを取り出しセッティングすると,川をはさんだ対岸の公園を狙う.2
銃声が響き5人の犠牲者が出る事件となる.
警察は現場に残ったコインから指紋を割り出し,元イラク戦線の狙撃兵,バーを逮捕する.しかしバーは黙秘し只「ジャック・リーチャーを呼べ」とメモに書き残す.
その後バー逮捕のニュースを見たジャック自身が警察に現れる.イラク戦線でバーを知っていたジャックは軍の秘密捜査官を務めた男.ジャックはバーの弁護士ヘレンの調査員ということになって事件の捜査に乗り出すが….4
観客は最初から狙撃犯がバーとは別人であることを知っている.
ジャックは驚異的な推理力で真犯人に繋がる線を追い続ける一方,彼に襲いかかる真犯人一味の手先を恐るべき強さで叩きのめす.相変わらずのスーパーヒーロー・トムちんを安心して楽しめる作品.
ストーリー的には平凡だし,ルール違反のところもあって(ネタバレになるから言いませんが),あまり感心できない.
トム・クルーズも肉体的にはだいぶくたびれてきた感じもあり.3
という訳で,ミッション:インポッシブルのような目も眩むスピード感は望むべくもないが,ロザムンド・パイクやロバート・デュヴァルという素敵な脇役陣が楽しめる.気楽に見れる映画.
ただし邦題は意味不明.何故こういうことになるのかしら.現題はそのまま「ジャック・リーチャー」.
★★★(★5つが満点)
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2013/08/07

独断的映画感想文:グッモーエビアン!

日記:2013年7月某日
映画「グッモーエビアン!」を見る.2
2012年.監督:山本透.
出演:麻生久美子(アキ),大泉洋(ヤグ),三吉彩花(ハツキ),能年玲奈(トモちゃん),竹村哲(ベースの茂樹),MAH(ドラムのヒロシ),塚地武雅(学年主任・カニ),小池栄子(小川先生),土屋アンナ(フリーマーケットの店番).
ハツキは元パンクバンドのギタリストで今はOLの母アキと暮らす,しっかり者の中学生.家計を預かり母のため夕飯を作る.1
実の父ではない母のパートナーでバンドのボーカリスト・ヤグが同居していたが,2年前に世界ツアーに行くと言って餞別をかき集め出奔してしまった.
そのヤグがある日突然帰ってくる.
ハツキ達のアパートに転げ込んだヤグはすっかり居着いてアキは上機嫌だが,進路決定を巡る三者面談が迫るハツキは違和感を覚え,親友トモちゃんとの間もぎくしゃくしてしまう….
17才でハツキを生もうというアキに15才で求婚したヤグ,という物語のスタートが映画の途中で明かされ,三者の関係が明らかになる.3
天真爛漫な天使系のヤグと,姉御肌だが考え方はパンクロッカーの母アキ.真面目なまま思春期を迎えたハツキはこの両親のもとどういう将来を選ぶか.
アキ,ヤグ,ハツキ,トモちゃんの配役が大成功で最後まで目の離せない映画となった.
トモちゃんに酷いことを言ってしまったと涙にくれるハツキ,ちゃらんぽらんに見えて芯のあるヤグ,頼りがいのあるアキ,これまた天使系のトモちゃん,それぞれの魅力が堪能できる映画である.
最後のライブシーンには涙を禁じ得ない.4
見た後は爽快,役者は若手含め見応え充分.友情出演の土屋アンナも良かった.是非ご覧あれ.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:キューティ・ブロンド

日記:2013年7月某日
映画「キューティ・ブロンド」を見る.Legallyblonde200118c
2001年.監督:ロバート・ルケティック.
出演:リース・ウィザースプーン(エル・ウッズ),ルーク・ウィルソン(エメット),セルマ・ブレア(ヴィヴィアン),マシュー・デイヴィス(ワーナー),ヴィクター・ガーバー(キャラハン教授),ジェニファー・クーリッジ(ポーレット),アリ・ラーター(ブルック・テイラー・ウィンダム),ホーランド・テイラー(ストロムウェル教授),ラクエル・ウェルチ(ウィンダム・ヴァンダーマーク夫人).
ブロンドの個性派美人エルは,女子学友会の会長を務めファッション販売を専攻する大学の人気者.
ところが政治家志望の恋人ワーナーから別れ話を持ち出される.理由は政治家の妻にはブロンドはふさわしくないとのこと.Legallyblonde200118a
ワーナーがハーバードのロー・スクールに進学すると知ったエルは,持ち前の集中力を発揮して難関を突破,ワーナーの同級生になることに成功するが….
およそロースクールには不似合いなブロンド美人エルが,真面目にロースクールの教育課程に取り組み,彼女特有の能力を発揮して大成功を収めるというちょっと変わったラブコメディ.Legallyblonde200118e
この映画のポイントは主役の魅力に尽きる.彼女は典型的な美人とは言えないが,その明るさと積極性は何ものに代えがたい.ファッションと恋愛にうつつを抜かしているようで,初めはロースクールの学生にはいじめられるが,彼等にはない発想で「実習」の裁判に勝訴してしまう等の大活躍.
しかしこの大活躍が只のラッキーではなく,エルの努力に依るところがしっかり描かれている.ネイル・サロンのおばさん等誰とでも仲良くなってしまうエルの性質も可愛らしい.こういうエルをリース・ウィザースプーンが過不足なく演じている.Legallyblonde200118b
脇役陣もそれぞれに魅力を発揮,見て損はない映画.
★★★☆(★5個は満点)
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