独断的映画感想文:J・エドガー
日記:2013年8月某日
映画「J・エドガー」を見る.
2011年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:レオナルド・ディカプリオ(J・エドガー・フーバー),ナオミ・ワッツ(ヘレン・ギャンディ),アーミー・ハマー(クライド・トルソン),ジョシュ・ルーカス(チャールズ・リンドバーグ),ジュディ・デンチ(アニー・フーバー).
FBI長官を第2次大戦をはさんで45年間勤めたフーバーの半生を描く映画.
フーバーは学生時代に勤務した国会図書館で編み出したファイリング技術や,科学的捜査法の導入で実績を上げ,特に指紋を重視して指紋の全米登録を実行した.
FBIの長官に就任してからは不適格な捜査員を追い出す一方優秀な捜査官を採用し,FBIの陣容を一新した.
一方自らはマザコンでありゲイであり,有力者への不法な盗聴を通じて秘密ファイルを蓄積し,自らの権勢とFBIの拡大を図った.
映画は老境にいたって回顧録を口述するフーバーを,その若き日の姿をはさみながら綴っていく.
フーバーは,自分を共産主義勢力・敵国勢力と戦う闘士と自認しつつ,品性下劣な俗物であった.人種主義者でFBIに黒人職員を殆ど登用しなかったのに,自宅のメイドは黒人女性であった.
映画はこの様に矛盾に満ちた存在であるフーバーを淡々と描いていく.その描き方は,フーバーに共感するのではないが,しかし突き放すのでもない.老醜のフーバーに向けられる視点は労りさえあるかのようだ.
監督も老成し観客である僕も年を取っている.こういう映画の視点があっても良い,という印象を持った.
「J・エドガー」はフーバー自身が自分の個人サインとして使っていた名称.題名を「フーバー」とせず,「J・エドガー」とした理由をいろいろ考えるのも一興であろう.
見応えある映画.★★★★(★5個が満点)
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